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第二章 異世界というものは

No.6

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パッと目の前の景色は一瞬で変わった。転移というのは、自分でしても人にやってもらっても慣れないものだよね。
だって、いきなり目の前が変わるから。
強いて言うなら……飛行機の中に座っていたかと思ったら、目を瞑った一瞬に地面にいた?
そんな感覚?って、そんなことをしたことないんですけどねー。
そして、だ。
目の前には散らかった部屋があります。

「汚い……。」
「臭い……。」
「すまん。」

ということは、やはりロドの部屋らしい。

「これでもかなり片付け……た。」
「もう!おろちて。我慢できにゃいの。」
「う……は、はい。すまん。」

自分のテリトリーの中のせいか、私を素直に下ろす。感じからするとバリア……結界を張ったらしい。ロドリヌスの気で包まれてる気がする…あ、これが魔力ってモノか!
とりあえずですよ。
ガーっと洗濯物らしきものに、浄化をかけていきます。
もちろん匂いはローズの香りで!でないと……加齢臭なるものがしそうだしね。……そんなお年ですよねえ?
でそれを端から一気にたたむ!
魔法の凄いのは畳みながらアイロンをかけていけるって感じにできるんだよね。ふふふ、この力が日本であったらよかった。
あ、でもね、畳んだあとにオイルヒーターの上に少し乗せるとちょっとだけなるんだ。正しい使い方じゃないから、下手に真似しちゃだめだよ?
うちは、狭いアパートのへやだったから、オイルヒーターで結構暖かくなりました。喉にはいいのと火傷しにくいから、それで暖をとりました。あ、もちろん『おこた』はありましたよ?

あ、そうそう話をもどしますね。
たたみ終えてから仕舞う場所を聞いたら、端っこにある長持ちみたいなのがあってそこに服は入れているらしいのです。なので奏歌に入れてもらいました。だって、私では開けられなかったから。
なんでもその箱は、マジックバックみたいになったもなんだって。魔法を付加してる魔石がついてるんだとか。その辺はそのうち詳しくお聞きしたいな。
ある程度は、ロドリヌスも自分の空間収納マジックボックスに入れているらしいのですけどね。
さすが、元とはいえ勇者様ですねえ。空間収納マジックボックス能力をお持ちでしたよ。
一通り片したところで、部屋を魔法で掃除した。
いや、本当は全てを水拭きしたいが……。そんなことをしていたらこの部屋の広さだと日が暮れてしまうというか、いつまでもいる気はないのですよ。それに、私たちは掃除にきたわけはじゃないのです。
……あとねえ、魔法はたくさん使えますけども体力がねえ……ないんですもんねえ。ズルをしましたよ。だって、寝ちゃったらマズイでしょ?いろんな意味で。
さて、部屋が綺麗になりました。もちろん匂いだってかえましたよ。桜イメージの香りの芳香剤っぽくしてみました。春ですしね。といっても私ではないの。
奏歌が桜のアロマの香りをふわりと漂わせただけです。たぶん、春は私がサクラのイメージで作られた芳香剤シリーズを買うからかも。
うむ、なかなか器用なやつですね、我が娘ながら。
そしてお茶を入れるポットとカップを取り出す。
一応、勇者のは部屋に何個かあったので浄化して一つを勇者の前に。私たちのはマイカップをつかいます。
私が持っているカップは奏歌とラナンと私の分しかない。
たぶん、癖みたいなもので自分で入れるお茶を客用カップに入れるっていう頭がなかったのよね。入れた後で気がついたの。
ほら、掃除やなんだと自分でお茶を入れたことで、招かれ感がなくなってしまっわけですよ。私の責任じゃないと思います。
でもねえ……。
三人のはお揃いだからって、ロドリヌスよ……ジト目ではやめてくれないかな?まあでも、気にしなませんけどね?
お茶を入れたらロドが空間収納マジックボックからお菓子を出してくれた。
なんでも、ワザワザ買い出しに行ったらしいんだよ。
まあ、転移も使えるからすぐに買って帰れるから困らないかな?
もしもヒッキーの子が転移使えたら、自力で生活できそうだよね。買ったらすぐ部屋だもの。

用意もできたし、いざお茶を飲もうとしたところで扉が激しく叩かれた。
ま、片付けていた時間かわありましたからねえ。

「ちっ、もう来たか。」

いや、くるでしょう。どこにいったからわかってるし。
同じ城の中なんだから。

「ええ、来たわよ。」

と、目の前にミリが立っていた。
あれ?扉、閉まってるよ?
もしかしてミリオンも?

「遅かったな?ミリオン。」
「仕方ないじゃない、あんたの結界の隙間を見つけるの容易じゃないんだから!それをぬっての転移なのよ?」
「はは、まあ、合格だ。座れ。」

やっぱり、ミリオンも転移できるんだね。魔力強いっていってたまもんね。
と、
そんな会話をしている間も扉はガタガタと叩かれているが、開かないし、ロドリヌスもミリオンも奏歌、ラナンすらまったく気にしていない。……いいんですかね?
え?もしかして一番小心モノは私だったりしますか?
私が入れたお茶を飲んでうまいと、皆さま賞賛しているけどさあ、どこにでもあるやすい茶葉だよ?すんごく安いの。でもね、緑茶に似てるんですよ。
やっぱり、お高いのは紅茶みたいなお茶でした。

「あの、なんで?ミリが?」

あれ?って奏歌が今気づく。
気づいてなかったのか……。まあ、そーゆーとこありますよねー、我が娘は。

「ん?あれ?いってなかったかい?」
「ラナン?」
「ミリ、ミリオンは勇者候補だよ。というか、継ぎたくないとごねてるがすでに勇者にはなっているのか?」
「……私は認めてないけど、国的にはね?まあ、だから?あのバカが王太子なんだけど?」

……そういや、次期王だとか言ってたか?あの第二王子は。
つまり、第一王子が勇者になるから、王は別なんだ?

「ふーん。だから、てんいできるのかあ。しゅごいね。」
「いいえ?凄いのは貴方達姉妹の方ね?でも、まあ。お茶が美味しいわ。淹れるの上手ね。あ、このお菓子美味しいわよ?ソカ。」
「美味いな。」
「ぎゃー!シャル!」

なぜ、今出てくるんだー!

「誰だ?オメエ。」

おう、ロドからかなりの殺気がでている。すごく怖い気配。
それを受けているに、飄々と受け流すシャル。
ちょっと、もう、なんで出てきたわけ?

「ふふ、現勇者と元勇者がお目見えなので、ご挨拶でもとね?思ったのだ。
あとは、そう……我が主を勇者にも英雄にも渡す気もないゆえな。」

うわーもー、なんか、めんどくさいことになりそうなんですけど!
外はあいも変わらずガッタガッタしてるしー!
はあ、なんで?なんでこうなるの?
あと、母がこんな大変な思いをしてるのに、なんで奏歌はそこでお菓子でまったりしてるの!

「私、あんまり関係ないし?」

私の恨みがましい視線に気づいて言い訳がましく言うが……母が困ってんだから助けてくれたっていいんじゃないかな!

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