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第五章 エルフの谷へ
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しおりを挟む『精霊たちのお導きがあらんことを。』
そんな言葉を森から出る時に言ってくれたの。
ここからは、どんなことが待っているかわからないから。
まずは、森の入り口からほど近い場所で野営の準備よ。
それが終わって、ご飯もみんなに食べさせたわ。
今日は、豚汁と山菜おこわおにぎりにしたわ。
もう、みんなアタシが何を出しても、びっくりせずに『美味しい』って食べてくれるの。
でも、この魔法の不思議は『アタシが作った料理の味』ってことよ。え?そうよー。アタシは、いつでもお婿に行けるくらい、料理も上手なんだから。
お嫁に来る子は何にも出来なくていいの。アタシを体で癒す存在ならね♡なーんて。
「まず、『リンドバーグ』という大きな商業国があるんです。
そこに向かうしかないんですが……。」
目的地を目指すためのルート考える会議で、エリちゃんが嫌そうに言った。
あら、ユーリもしかめっ面。
「リンドバーグ……、出来るならいきたくねーなあ。」
ポツリとユーリが呟く。
「ユーリ?」
なんで?と目をむける。
「何故ですか?あの国は、中立国ですし。王族もいないと聞いています。なんでも、『選挙』というもので選ばれた『代表』が王になるとか。」
ユーリが答える前にアンドリューが自分が聞いた言葉を話す。
しかしユーリは、更に顔をしかめた。
「我が国でも普通に取引している国なのですが……。」
取引先の国か……。
ユーリの顔からすると、人にとっては『良い物』でもそれ以外にはあまり…『良くない物』ってことなのかしら?例えば、奴隷とか。
まあ、商人は良くも悪くも『金次第』なところがあるものね。
「……俺たち人に関しては、それほど悪い国じゃねーが……。」
ユーリがチラリとマシロと何故かしら?アタシも見たわ。
そして、最後にエリちゃんを見たの。
「まずな、獣人にとっては最悪の国だ……奴隷の中でもランク差別されていてな。獣人は最低ランク……使い捨ての道具以下の扱いをされている。
次に人以外は人以下の国だ。攫われたり、殺されても気にされない。が、それらが人を傷つけた時は、人に非があっても殺される……。
で、最後に『見目の麗しい人』も性奴隷として闇取引が行われている。
あいつらの頭には『金』しかない。
だから、聖女だろうが高い金を出す奴がいれば……。」
「世界がどうなろうと、あいつらは気にしないから。」
エリちゃん?
「だから、たぶん。姉様は狙われる。」
「それは、させません。私は王子ですよ?一国の王子の後見があるものです。」
アンドリューが胸を張って、宣言した。
……これだから、何も知らないって、言われちゃうのよ?
少し考えたらわかるのに。
「馬鹿か?聖女さえも平気で奴隷落ちを考える奴らが、たかだか一国の王子を敬うとでも?
殺されるのがオチだろ?死人に口なしだからな。」
はっ、とユーリが馬鹿にしたように鼻で笑う。
ルノベッチラさんとジークンは青ざめていた。
「そんな恐ろしい国があるのですか……。」
「俺は、近くまで行ったことがあるのですが……中に入るのに通行税が高過ぎて入れませんでした。」
「あ、あーー。あそこはなあ、貧乏そうに見える奴には、高く言うんだよ。中で金払いが良さげだと、安いけどな。」
ああ、冷やかしはお断り的な?
「そう。でも、アタシたちは大丈夫よね?護衛がたくさんいるもの。」
「普通に来たなら、そう攫われたりしないが、問題は『金があれば』って話でな。『金があれば、犯罪者もお咎めがない』国なわけだ。」
つまり、犯罪大国ってわけね。
「そこ以外の国から行くのは無理なの?」
「その国を通らないと、迷いの森に行けないんです。迷いの森を抜けないと、谷の入り口が見つからない。
だから……。」
行ったことがなかったわけね。
「あの国が出来てしまってから、エルフは、谷に帰れなくなってしまったそうです。」
「まあ!ひどい。」
ひどいわね!全く。
ホワホワと精霊たちも怒ってるのか、跳ねている。エリちゃんにスリスリしてるのは慰めかしら。
見てると癒されるわ。
最悪の犯罪大国を通らないといけないなら、行きましょう?
アタシがもちろん守るわよ。
まあ、この際?
少しなら『拳ちゃん』に戻ってもいいと思うの。
アタシのことは、ジークンが守ってくれるんですもの。
アタシ以外を守るのはアタシの役目よね。
ふふふ、もちろんジークンを含めてね。
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