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第二章 聖女(仮)編
♡3
しおりを挟むんーと。こっちみたいね?
あたしはテクテク歩いていたの。
でもね、誰にも会わないのよ。不思議でしょう?
あたしがいたのは二階の南側みたい。
マップからすると……これ、城からでてない?
ジークンは外?訓練とか?
なんか、一人みたいなんだけど。
ルノベッチラさんは、なんか赤いの一杯に囲まれてる感じ?
東側かしら。
うーん。やっぱり、ジークンからね。
あったしのジークン♡
今行くわ。
うーん。なんだか本当に人がいないわ。
あたしはただ単に、人がいなくて警備不足ねえ?一応、お城なのに。
なーんて呑気な事を考えていたのだけど、実は警備兵たくさんいたらしいの。
どうも、無意識に魔法が発動していたみたい。
何が発動のきっかけになったかは、あたしにもわからないんだけど。
魔法が発動していたって言うことに気がついたのはジークンのところに無事に着いた時だったの。
「ジークン、みーつけた♡」
「え?ふぇ?」
「あら、変な声。どーしたの?」
「あ、あの、見張りは?」
「え?あたし見張られてた?というか、ジークンはなんでこんな小屋にいるの?」
「え、あの、その。あ、の、そこ鍵がかかって!」
「ん?回したら、ガキってなっちゃったの。壊れてたみたい。って、鍵かかってなんて、ジークン、閉じ込められていたの?」
え?こんな汚いとこに?
「なぜ、鍵が!」
「聖女様が、いなくなったー!」
「さがせー!」
「鍵を壊されてるぞ!」
ガヤガヤといきなり騒がしくなったわ。
ん?いままで、皆さんどちらに?
「おい!……っ!な、なんで、せ、聖女様が?え?うぇ?」
「い、いつのまに?」
「鍵は?っ!こ、壊れてっ!」
なんで、慌てているのかしら?
「あたしはそこの扉から入ってきたわよ?」
「しかし、我々がここに⁉︎」
「サク様。あのこの扉の前に警備兵がいたはずなんですが?」
「えー?嘘。いなかったわよ?」
「……。」
「だから、ドアをかちゃって。ちょっ硬かったから、少し力を入れたら壊れちゃった。ごめんなさいね?」
だって、普通に回しただけなのに壊れるなんて。だから、鍵はかかってなかったんじゃないかしら?ねえ?
きっと、ジークンの気のせいよ。
だって、大事な勇者をこんな汚いとこに閉じ込めるなんて、絶対にないわよね?
でも、確認はしましょ?
「あの、まさかだけど?こーんなところにあたしのジークンを閉じ込めてなんていないわよね?ねーえ?」
「「「!!!!………。」」」
なぜ?慌てて目をそらすのかしらね?
「うふふ。いち早く目をそらしたあなたに聞いても良くて?」
といって、一番最初に入ってきた兵士?騎士?剣をぶら下げた簡易な鎧をつけた男性の肩をたたいて、にっこりと見つめたわ。
「お、お、れ、あ。わ、私ですか!……あ……。」
肩を優しく撫でてあげると、ほかの二人に視線を彷徨わせるの。でも、ほかの二人は頑なに、下を見続けていたわ。
そんなに下が気になるのかしらね?
なんとなーく、後ろに少しずつ下がってるのよね。
逃す気はないわよ?
「ねえ?きちんと話してくださる?あたし、気は長い方なんだけど……三日も騙されていたなんてことあったら……ちょっと……流石に……。」
悲しげに目を伏せると、真っ赤になった兵士(ということにするわ!警備兵って言ってたきもするし!)が、慌てて謝る。
この悲しげな伏せ目がちの仕草は、売り上げが低い時の、あたしの作戦。だいたいのおじ様が引っかかっ……ゲフゲフ、同情して売り上げに貢献してくれるのよ♡
「せ、聖女様!申し訳ありません。ですが、命令で。勇者をここにと。ですから……。」
「そう、どなたの命令なのかしら?」
とさらに追求する。
口ごもり、目を彷徨わせる。
まあ、だいたい検討はつくのだけども。
「サク様。俺は気にしてません。ですから、サク様も気にはならないでください。……王城内にいられるだけマシなのですから。」
「……ねえ?ジークン。ジークンは、あたしを守るって言わなかった?」
「はい!絶対に守ります!」
「じゃあ、聞くわね?離れた場所に隔離されて、あたしをどうやって守るの?」
「あっ!………。」
そうよ?気づいた?
こんなに離れてしまったら、あたしはジークンを守れない。
そうでしょ?
だから、ジークンの言葉を借りてさとすわ。
だって、ジークンはあたしを守ると言ったのだもの。
だからもちろん、あたしもジークンを守るの。
「ね?だから、勇者は常に聖女といなきゃいけないでしょう?」
「……はい。 離れたら……いけなかったんですね。」
「そうよ。さて、兵士さんたち?離すように命令されていたんでしょう?あたしたちを捕らえて元の場所に戻す?」
そこにいた兵士は首を横に降る。なんか、ちょっと怯えてるのは気のせいかしら?
特に、肩を優しく掴んでるだけの目の前の兵士は、顔色が真っ青。
ふふふふ、どーしてかしら?
「あなた?大丈夫?」
「は、はいぃぃ!……。」
あら、汗まで?暑くないけど?
でもまあ、いいわ。
「さあ、ジークン。ルノベッチラさんに聞きたいこともあるし、行きましょう。」
「は、はい。」
あたしは兵の肩をはなして、ジークンの手を掴んだ。
うふふ、さりげに恋人繋ぎしちゃったわ。役得♡役得♡
肩を離した兵士はその場にへなへなと膝を崩して、あたしが優しく触れていた肩を手で押さえて、唸ってるんだけど。どーしたのかしらね?
「だ、大丈夫か?」
仲間が声をかけると、「肩が……。」と小さく呻いた。
もう、大袈裟ね。
少しだけ優しく掴んだだけじゃない。
「は、はずれている……。」
部屋から出て行こうとしたら、後ろから微かに兵士の唖然とした声が聞こえた。
あら、やだ。……随分、華奢ねえ。
あれくらいで、肩がはずれちゃうなんて……ちょっと、鍛え方が足りないんじゃないの?
「あの、サク様?どうかしましたか?」
「なんでもないわ♡さあ、急ぎましょう。」
「はい。」
ジークンには聞こえなかったみたい。あたしも微かに聞こえただけだけど。
あたしったら、耳がいいのよねー。
もう少し、鍛えないといけないと思うのよ。
あたしは、ジークンと手を繋いだままで(大人しく繋がれたままのジークン、かわいい♡)、東側に向かう。
そもそもよ?
あたしたちの旅の仲間でしょう?
パーティメンバーでしょう?
なぜ、あたしたちが選んじゃいけないの?
あたしたちを無視して選ぶなんて、おかしいわよね!
だって、仲良くできない人だったらどするのよ!あの肉油のように。
あたし、これでも人見知りするのよ。ほら、すっごく恥ずかしがり屋さんだしぃ、シャイなの。
だれ?今、舌打ちした人!
懇切丁寧に話してやるからそこに正座しな!……やだ、つい、拳ちゃんが顔を出しちゃうじゃない。
あたし……あのクソ親父のせいで……人と関わるのが下手だったの。自分で何も言わなくても、お姉ちゃんたちがやってくれちゃうからよけいね。
お姉ちゃんのスカートの陰に隠れてるような子だったのよ?
ほんとなんだから。
でも、これじゃいけないっておもったの。
だから、武器を手に入れてたの。
そして、笑顔で対応する力をもったの。
でも、いつも心は生まれたばかりの子鹿のように、ぷるぷるって震えているの。
頑張って頑張って、沢山の餌のいらないニャンコたちを背負っただけなのよ(泣)
わかってくれるわよね(にーっこり)
「サク様。俺、もう離れませんね。たしかに、周りの言葉に言われたままにサク様から離れてしまったら、サク様をお守りできませんもんね!
俺、もう離れません!
でも、……サク様。俺の場所がよくわかりましたね?サク様のお部屋からかなり離れていたと思うんです。」
「それはもう!愛の(スマホだけど)力よ!」
「ふふ、サク様はとても優しい方ですね。」
きゃー!ジークンの初めてのスマイルいただいたわ!
もう、かわいいぃ♡
この笑顔のためなら、あ た し ご飯何膳……じゃなかった、いくらでも頑張っちゃう!
ジークンは繋いだ手にそっと力を込めてくれました♡
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