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六話 見つけたものは? 前編

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side?

なんだ、この子は?
血の匂いがするからきてみたが……。子供?
倒れこむ寸前に受け止めたが、まだ幼い子供ではないか。
しかも、熱が高い。かなり発熱している。
熱のある子をこのような薄着一枚で、たった一人の子供を野に放つとは!
人族とはよほど我らが怖いのか?
だが、許せん。
その怖がっている野にこのように幼い子を放つとは……なんと酷いことをするのだ。
子供の手にぎゅっと握られた紙がみえた。
そっと手から抜く。
子供の持っていた手紙は、我ら一族宛らしい。
つまり、この子は我らの生贄ニエということか。
かわいそうに……。
抱き上げるとぼたぼたと出血がひどいではないか!
いったい、なにをされた?
痛みに呻き声が微かにする。
息をするのもつらそうではないか。
出来るだけ揺らさないよう、急ぎ、屋敷に戻った。

『ラファ、ラファエル。どこだ。』
『なんでございます?バルダッサーレ様。』
『すぐに診てやってくれ。どこからかわからんが出血がひどい。この子が歩いたであろう道に血だまりがいくつもあった。』
『まあ。なんとことですの!まだ小さな子供ではありませんか!』

ラファに子供を託す。
いくら子供とはいえ…女の子の診察に男がいてはかわいそうだ。
ラファは癒し魔法を使える。 
メイドたちを呼び、ラファを手伝うように言いつけた。男は行かせん。
何かあれば呼ぶように伝えて、執務室へと向かった。
椅子に座り手紙を開く。
……読み進めるうちに怒りで手紙を破りかけた。なんと胸糞悪い!
程なく知らせに来たミカエレにそれを止められる。

『そんなに、青筋立てて怒ることでも書いてあった?』
『ああ、怒りにまかせ人族を滅ぼしてやりたいほどな!……読んでみるがいい!』

ミカエレに手紙を押し付けた。

ーーバルダッサーレ様及びそれに連なる方へ

古代より、誓いの娘を送る。召喚の手違いがあり幼い娘とはなったが、貫きの儀式におき、生娘であることは証明された。
これよりまた、500年の不可侵を約束されよ!

スフィア王国国王ピッピーノ
スフィア王国大神官ルピナスーー

『……は? おまえが抱いてるのをちらりと見たが、まだ子供だろう?
処女かどうかを確かめたのか?
あの大人でさえ耐えられない、非道な貫きの儀をしたっていうのか?
まさかだろ?いったい、『人』は仲間である同じ『人』にどこまで残虐になれるのだ……?』
『だが、その人族に鬼とも悪魔とも呼ばれるのは、我らなのまがな?そろそろ、ラファの元に行く。』
『ああ、すまん。癒しは終わったらしい。お前をすぐにと言われていたのを忘れていた。あと、手紙はラファには見せるぞ?』
『ああ、そうしてくれ。』

治療に使っているはずの客間に向かう。誰かが泣き叫んでいる声が聞こえる。

「いやあ、帰して!触んないで!嫌、怖い!こないでー!」
『何もしないから、落ち着いてください。』

言葉が通じてないのか?
周りがなだめるが恐怖に怯えて、理解できない言葉で泣きわめく。

『大丈夫だ。』

恐怖に後ずさり、ベッドから落ちかけるその少女を抱き上げる。

「きゃああああ!」

とたん悲鳴が上がる。
腕の中で暴れて暴れて……ついには疲れ果て……小さなすすり泣く声だけが聞こえるようになった。

「……くっ、ひ……くっくぅ……う……。」
『よし、よし……怖かったな?大丈夫だ。今、わかるようにしてやる。
……古より続く誓言に応えよ、クリアヴォイス。』

キィンと少女に魔法がかかる。
額にキスをして魔力を安定させる。
これで聞いて話せる筈だ。

「言葉がわかるか?少女よ。」
「ひっく……ひぅ。んっ……わ、わかるぅ。」
「よかった。大丈夫だ。ここにはお前を傷つけるものはいない。まだ、痛いところはあるか?」

涙に濡れた瞳をあげて、首を横にふる。どうやら痛みはないようだ。
しかし幼いが……とても美しい子だと思う。

「そうか……それは、よかった。私はバルダッサーレ。言いにくいならば、バルでもいいぞ?お前の名を聞いてもいいか?」

コクリと頷く。

「ぅっく……ひぅ。今泉晶いまいずみあきら。」
「イマイズミアキラ?」
「名前だけなら晶っ……ひっ。く。」
「アキラか。詳しい話を聞きたいが……かなり血を流してしまっていたようだ。体もまだ冷たいしな。
傷は治したし、熱も下げたが体力だけは自分で回復するしかないのだ。
温かいものを食べてゆっくり休みなさい。今日は、もう終わりを迎えるじかんだ。明日、回復していたら話が聞きたい。聞かせてくれるかい?」

コクリと頷く。
不安からか……服を掴んだまま離さない。相手は子供だ。なんの心配もないとは思うが……子供とはいえ、女……寝所に男一緒はまずかろう。
だが離す様子はない。
ようやく見つけた親を離すまいとするように……無意識なのだろう。
あれだけ怯えていたのだ……仕方がないか。
しかし、どーするか…。

「バルダッサーレ様。私が付き添いましょう。熱を下げたとはいえ、まだ完全な回復ではありませんから。
アキラ様、私と一緒では不安ですか?」

とラファが聞いたが……下を向いて答えない。
さて、どうしたものか?

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