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第三章 学園で???……まだ始まらないよね?
ナナジュウ
しおりを挟むようやく二時間超の長丁場が終わりました。あとは、兄が学園説明を聞いて戻ってくるのを待つのみなのです。
「……早いが馬車に戻ることにしよう、嫌な予感がするんだよ。」
「同感ですわ。」
「私もそれがよろしいと思いますわ、お父様。」
右に同じ。
「か、帰るのか?」
「うん、兄様が戻ったら。」
「そうか。また、会えるよな?」
「うん、僕はあまりお出かけが出来ないから……マッケンが嫌じゃなかったら、遊びにきて?
いいですよね?父様。」
「もちろんだとも。」
「ふふふ、三人でお茶会しましょう。」
姉がにっこりと笑う。今は春の女神のような微笑みなのです。
あ、マッケンくんが赤くなった。
わかりますよー。姉様の笑顔は最高なのです。
「おや、私は呼んでいただけないのかな?」
まったく、関係ないよね?何気に会話に加わるって……普通ならしないと思うんだ。
だって、仲良く一緒に観てたわけじゃないじゃない?はっきり言って、お邪魔虫的にきたんだよ?
姉とかが迷惑そうにしてるのをスルーできるってすごいよね!
でも、公爵夫妻2組は流石ですよ、まったく顔に出しません。
逆に殿下の警護の騎士達が苦笑いしてるよ。
「殿下はお忙しいでしょうし、ハノエルのお友達をお招きしたいのですわ。」
にっこりと氷の微笑の姉なのに、殿下はまったく気にしない。
「君たちに会うならいくらでも時間はあけるよ?」
「お気遣いなく。」
春から冬の女神化、姉様が年々グレードアップするようですよー。
クスクス……。素敵です!姉様。
「ハルの姉上は、きれいだな!」
マッケンくんは、素直に賛辞。
やっぱり、初めのは好きな子をちょっといじめちゃう系が出ちゃった感じだったんだね。
だって、素直だもの!
「ありがとう。自慢の姉様です。」
「もう、そういうことは聞こえないように言ってちょうだいな。……恥ずかしいわ。」
だって、姉は褒めると顔を赤くして可愛くなるんだもん。マジで可愛いわ!お兄さんは、絶対守るよ!妹だったら、猫っかわいがりしちゃうよ。
現在、完全に殿下を無視している俺ですが、視線を感じるんだよね。
いい加減、嫌がられてるのを自覚してほしい。とおもう。
「楽しそうだね。」
ゾクリするくらい嫌な視線と声。
……本当に父と血がつながってるのかな?と思ってしまうくらい気持ちが悪い。ゾワゾワと嫌な感じ。
前に会った時よりもなお、気持ち悪さと不快感が湧く。
コレは、ハノエルのライブラリーからくる感情じゃない。
俺自身の経験からくる嫌悪だと思う。過去の変態達からの……気色悪さと一緒……否、それ以上だ。
そして、馬車に籠るの失敗だ。
この人がくる前に、馬車に乗り込みたかったのに……これも、すべてしつこいクリストファー殿下のせいです!
「これは、陛下。お久しゅうございます。パーティーには欠席となり大変失礼いたしました。」
何かを感じたのか?マッケンと俺を隠すようにゴールネイ公爵が前に出た。
「いやいや、奥方の具合は良くなったようで何よりだ。」
「ありがとうございます。」
「さて、アルフや、ハノエルくんと食事にでもどうかな?」
「陛下、大変申し訳ありませんが、ハノエルはあまり長時間外では過ごせません。ですので、これで失礼いたします。」
「……そうか、だが、ハノエルくんはどうだろうか?美味しい食事をしないかな?伯父様と。」
「……父様、気持ちが悪いです(そいつが)。馬車に戻りたい。」
ちょっと演技が入ってます!
「それは行けないな。城の方がちかいだろう?すぐに連れて行って治療してやろう。」
そう言って、俺の手を掴んできた。
「イヤーーーーーー!」
「陛下、お離しください!」
もちろん、久々の発作です。
「離せよ!っ、あ、離してあげてください!」
俺を掴む陛下の腕をマッケンが引っ張ったのが見えた。
「無礼者!」
ガンっとマッケンが殴られてしまった。
ごめん、マッケン。
俺は自分の意思でこの発作を止めることができない。
泣き叫ぶ俺をなお離そうとしない王は何を考えているんだ!
この『泣き叫び』は俺じゃなく、俺の身体に刻まれた恐怖から来るものらしくて、俺が冷静であってもコントロールが効かなくなる。
これを治められるのは………
「ハル!」
俺を国王陛下から奪い取り、腕の中に抱き込む。
「ハル、ハル……大丈夫。」
「に……さま。こわ、こわ(かった)……。」
兄の胸にしがみついた瞬間、ようやく俺の意識が身体の恐怖に勝る。
「陛下、戯れが過ぎますぞ。何度も言った筈だ!貴方の息子のせいだと。それを貴方はっ!
二度と私の息子に触れないでくれ!……まだ、ハノエルに近くというなら私にも考えがある。陛下……いや、兄上。
これが弟としての最後の忠告だと思ってくれ。
カレイド、ハルを連れて帰る。」
「はい。」
「行きましょう、母様。」
「ええ。ゴールネイ公爵。御子息への礼と詫びは後ほど改めて。」
「気になさらずに。」
「失礼いたしますわ。」
俺は兄に抱っこされて、早々にそこを立ち去る。
兄越しにマッケンくんの唇が切れて血が出てるのが見えた。
「……陛下、私もこれにはかなり腹を立てております。いくら私でも息子を傷つけられて黙ってはおりませんからな。
では、失礼する。ゆくぞ、立てるか?」
「大丈夫です。」
「参りましょう。」
「はい、母上。」
うっすら聞こえた会話だが、王は黙ったままだった。
……ねえ、王ってこんなだった?
俺、ゲーム内の王様のこと、記憶にないんだよね。
そして、馬車まできて……さらにひと騒動あるなんて思いもしなかったんだ。
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