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第四章 ありえないよね?不憫なのはハノエルだけじゃないのかも・・・
ヒャクニジュウヨン
しおりを挟む今日は清々しい朝だ。
あったらしい朝が来た!って歌ってしまいそうなくらいの清々しい朝だ。
だって、あの嫌な夢を見なかった。
全くもって、片鱗さえ見なかったのだよ、ふふふ。
おかげで体もなんか軽く感じる。
今ならラジオ体操第二飛び越え第四までできそう………すみません、嘘吐きました。出来るわけないよね!
あれは、無理です。体操選手じゃないんだからっ!
「おはよう。ハル。今日は先に起きてしまったんだね。」
と言いながらもキスを降らせてくる兄……いや、神石先輩……純日本人だったよね?
ですよね?まさか、ハーフやクオーターとかは……うん、プロフィールにもなかった!はず。
やはり、照れもなくあれだけの激甘なセリフを数多くこなす声優だけあるのかもしれない。
俺がそこまで上がるには経験値が足りなすぎる。
というか、自分のセリフを生活ないでシラフでなんて言えない。
言えるわけがない。
「さて、ハルの百面相も堪能したし、用意して朝食を食べたら……行こうか?セバスの部屋に。」
「はい!」
「元気なお返事だけど。少し焼けちゃうかな?」
だって……。
兄様も家族も大好きだし、その兄様は特にだけど……。
セバスは別の意味で特別なんだもん。
いつも一緒に居てくれたし。
気がつくと側にいたし。
気がつかなくてもいたし。
忍者かもしれないし。
ある意味ライナスの毛布的な?感じかもしれない。
あれ?兄もだ。
……兄の方がライナスの毛布かもしれない。
兄がいない時の穴を少しだけでも塞げるのは、セバスとリオーラだけなんだけど……。
『はるちゃん、ヴァルもいく、いっていい?』
「え?あ、兄様。ヴァルも一緒に行きたいって。」
「そうだね。ヴァルもセバスに懐いていたものね。いいのじゃないかな?」
『やったー。』
「よかったね。ヴァル。」
『うん。』
うーん。ヴァルはやっぱり人の言葉を理解しているんだね。
俺とは『心話』を使ってるけど。
兄とのは普通に兄が喋ったことを理解しているんだから。
賢い賢いと思っていたけど、やっぱりうちの子は超賢いらしい。
そんな猫ばか的なことを考えつつ、朝の支度をこれまた兄がこなしていく。
……兄がいないと何にもできない子になってしまいそうな自分が怖い。
食事も終わって、兄に抱っこされてセバスの部屋に向かう。
セバスの部屋に行くのはこれが初めてだ。
そもそも、セバスが眠っている姿を想像できない。
ヴァルが後ろから大人しくついてくる。
そして、自室からかなり離れた場所にセバスの部屋があった。
普段は殆ど使わない部屋らしい。
何故なら、普段は侍従部屋と言われる主の部屋の隣の部屋を使うから。
だから、あてがわれている部屋を使うことは、殆ど無いらしい。
それでも服や荷物を置いていたり、休日の日に過ごしたりするための部屋。
そんな部屋にはその人の『色』があるもんなんだけど。
扉の前にはルイくんがいて『どうぞ』と扉を開けてくれた。
部屋の中は……これがセバスの『色』というには殺風景だった。
シングルのシンプルなベッドに、白を基調とした布団でセバスは眠っていた。
昔見た某アニメの『これで死んでるんだぜ?』って言葉が浮かんでしまうくらい『生』を感じない。
一日一回魔法薬で栄養を癒し魔法で、体の不具合を癒す。
それで体は生きている。
そう、体は生きているんだって……。
周りを見ると小さなライティングディスクに数冊の本があるだけだった。
他には何もない部屋。
かろうじて、部屋の端にある洋服かけにセバスの服が数着かかっているくらい。
……全部執事服だけども。
セバス……私服は?
「兄様、おろしてもらっていい?」
「ああ。」
兄におろしてもらうとセバスの側にいく。
「お爺さまには、既に外傷はありません。でも、目覚めないのです。
……ハル様を助けることが出来て、安心されたのかもしれません。」
だから、深く眠り過ぎて目覚めないのでは?
とアズリアが言っていたそうだ。
でも、違うと思う。
きっと。
俺の呼びかけを待っているんだと思う。
――ムカシカラ $€*ğ üöハワタシニシカ ヘンジヲシナイノダカラ
ふっと何かの感情が浮かんだ。
なんだった?
思い出せない。
でも、セバスを起こせるのは自分だけだって……何故かな、確信できる。
「ハル様?」
俺はセバスの手を掴んで願う。
起きて、側にいてと。
「セバス、起きて?ハルは、セバスがいないと嫌だよ。
セバス、起きて。僕と一緒にいるって。」
約束したじゃないか。
……いつ?
でも、約束したよ。
いつかはわからない。
でも、確かにいつも側で……って。
――……様、私はいつまでもあなたのお側に……
そう、言ったよね?
「セバス!起きてטאלב !」
何かの呪文を言った気がする。
でも、意識せずに言った言葉は……なんと言ったかもわからない。
でも。
握った手が光ったから……魔法なんだと思う。
そして……。
セバスの瞳が開いた。
「セバス!」
『じーたん!』
「お爺さま!」
兄が、ヴァルが、ルイくんが、目を見開き呼びかけた。
「………様。」
「うん。セバス。」
セバスが握っていた手を握りしめて言った名前は……確かに俺の名前のはずなのに、なんと呼ばれたか……わからなかった。
でも、セバスが目を開けてくれた。
それだけで……嬉しい。
それだけでいい。
その後、屋敷の皆が大喜びした。
特に喜んだのは母だったのはいうまでもない。
そして、朗報が一つ。
クリスの翼も消えたことで、夜に父も帰宅できたということ。
明日の兄の最後の休み(まあ、毎週ありますが半期休みからのね?)には、家族全員が揃うみたいです(喜喜)。
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読んでいただきましてありがとうございます。
聞き取れない言葉の文字は当て字なので、意味はありません。
言葉自体はそのうち……出てきます。
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