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第三章 え?本当?迷惑少女は突然に?
ナナジュウイチ
しおりを挟むガヤガヤと馬車を止めていた場所が煩い。
何かあったのだろ………かと思うまもなく、キンキン声が響いた。
子供のきーぃー!って高く出す声って、地味に耳が痛いよね。いや。脳が痛い?そんな感じない?
「だから!あたしは、ここの生徒にそのうちなるのよ?」
「……だからなんでしょう。」
それな!
だから、なんだって言うのかねえ?
「だから、入れろっていってんじゃないのさー!」
「ですが、お嬢さん。あなたは、まだ生徒ではありませんし、現在の生徒の家族でもありません。」
「なに?それがどうしたの?あなた、名前は?あたしが、入ったらクビにするわ。あたしはね?そのうち聖女になるの、ヒロインなの!」
いや、聖女じゃないよね?巫女じゃないのかな?このゲームは『聖女』様は出てこない。
んーと、あなた、ゲーム間違ってるとか言わないよね?
それとも、ちょーっと脳味噌が足りない?
……そうです、最悪な『幸』がいたんですよ。
もう!
一難去ってまた一難ってやつ?
誰かヒーローでも助けに来ないかしら?
あら、やだ。
ハノエルのヒーローはここにいたんだった。
「……なんだ、アレは。」
わかりますよー、父様。
だって、あまりもびっくりしすぎて、震えが止まりましたもん。
いまや、冷静すぎのハノエルです。
いや、あーゆー迷惑もたまには役にたつもんですね!
「わかりませんが、揉めてるようですわ。ただ、あの元凶となっているのは……。」
「あの時の娘のようですねえ。」
「それに、この前のパーティーの並びでもいらっしゃいましたわ。」
「まったく、迷惑だな。サッサと馬車に戻りたいのだがね。」
「公爵様、申し訳ありません。」
と学園の先生なのか、それとも警備のひとなのかわかりませんが、頭を下げてきた。
あまり大きな声でもなかったはずなのに……グリンって音がするんじゃないかってくらい、こっちに顔を向けたんだ、あのヒロインが。
怖いよね!さながらエクソ◯ストの悪霊に取り憑かれた少女のようだよ。
「カレイドさまぁ!」
がしっ!
「ちょっとお、離してよ!あたしはカレイド様とお話するんだからっ!」
「はい、こっちにきてねー。」
「なによ!あたしを誰だと思ってるのよ!」
「はーい、誰でもいいかな?君は、ただの犯罪行為を行なってるわがままな子供でしかないんだからねえ。」
「ザッス。」
セシウス様の言葉に自称ヒロインが自分を捕まえた警備兵……否、騎士を振り返る。
「ざっすぅ?あ、ザッスだわ!ねえねえ、あなたもあたしが気になってしょうがなかったのね?いいわ!あなたからにしてあげる。感謝してちょうだい?じゃ、カレイドは、またね♡チュッ。」
投げキッスするヒロイン……ドン引きよー。それに兄、スッと避けたよね。
女の子にだらしないと思われるザクセウスでさえ、顔が青いですぜ、旦那……って誰よ。
「はーい、つーわけで行こうかねえ。最低レディ?」
「まあ、レディだなんて!もう、ザッスったらあ。あたしにメロメロなんだからっ!」
「は…はは…は………。」
うん、あまりにもあまりな自称ヒロインに周りはフリーズ。
ザクセウスも最低と認めた自称ヒロイン。あの自称ヒロインには『最低』の文字が耳をスルーしたのだろうか……。
ふむ。なんでアレにこうもぶち当たる?
はっ!
ま さ か !
の兄狙い?
王道の王子ではなく、難攻する裏の攻略キャラのカレイド狙い?
マジですか?
いや、勘弁してほしい。
譲る気も奪われる気もないが、アレが周りをうろちょろするのは……精神的に勘弁願いたい。
素直に王道してくれませんかね?
クリストファー王子なら、もう、熨斗つけて更にはリボンかけて贈呈しちゃうからさ。
……あ、馬鹿に権力持したらまずいか?
いやいや、アレが権力持ったら……きっとウチはこの国を出て行くだろう。
だって、終わりが見えた国に、痛くないもんねえ。
ま……あの宰相様がいてくれたら当分はまだ大丈夫だろう。
あの王が変な権力を振りかざさなければ。
しかし……ねえ?
ゲームはじまってないよね?
早すぎだよ?
―――――――――――――
そんな波乱な入学式を得て、ハノエルが熱を出さないわけありませんでした。
「兄様、ごめんなさい。」
「なにがだい?」
「だって……//////。」
「ふふふ、赤くなるって言うことは、少しは期待してくれていたのかな?」
口に出すのは恥ずかしくて、でも、本当だからコクリと頷いた。
「可愛いハル。今はその気持ちだけで、私は嬉しいよ。
それに……明日、もし熱がなくて体調が良ければ……ね?」
「////////!」
頭を撫でながらクスクスと兄が笑っていた。
つまり、初エッチは明日に持ち越し?ってこと?
確かに、少しだけ体力が戻ってきたハノエルは、酷い熱じゃなければ1日くらいで下がるようになった。
今回は、多分精神的な疲れから。
比較的元気な熱……熱出して比較的元気ってのもなんだかなあ。
まあ、食欲もあるし一晩寝れば引きそうな熱と思ってください。
アズリアが言うには、解熱剤もいらないかなってくらい。
「座薬がいらないのは、私的には残念だけど……それくらい体力がついたって喜ぶべきことかな。」
「//////。」
赤い顔が戻りません。兄様。
座薬がいらないが残念って、兄様座薬入れるのが好きなんですか?
いや、俺的にはそんなプレイは、嫌です。初心者にはキツいですよ?
「さあ、寝なさい。よく寝ないと大きくなれないよ?」
「……寝ます。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
チュッと軽いキスをくれた。
ニマニマしてしまう。
でも、兄に抱きついた後の記憶がないのでぐっすり眠ってしまったようです。
「ほんとに、ハルはかわいいなあ。……やっぱり似てる……。」
そんな呟きがまた夢うつつで聞こえてきたけど、……誰が誰ににているの?
そう、投げかけることは叶わなかった……。
似てる?誰が?
真っ白なハンカチに墨が一滴落とされたような『不安』が残ってしまったよう……でも、この『不安』が育つとは……思わなかったんだ。
そしてこの夢の中のことは、記憶の奥底に沈んでしまったのだった。
なんか、変な夢見た気がする?
熱のせいかな?
でもぐっすり眠れたみたいです。
おかげさまで、すっかり熱も下がりました。
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