乙女ゲームにこんな設定いらなくない？〜BL（受）の声優は乙女ゲームに転生する（泣）〜改

第一章 幕間の番外編

さんじゅうなな

《7歳です～婚約発表会　その2 》

――コンコン

「ハノエル様、ご準備が整われましたでしょうか？」

扉がノックされ、声をかけられた。

「はい、整っております。」

それに、ルイくんが応えてくれる。

鏡の前に立たされてる俺は、はっきり言って男には見えないです。
いいのでしょうか？
普段から間違えられますけど、今日の衣装はさらに誤解を招くだろうなあ。
ハノエルって、本当に整ってるよねー。
俺でも嫁にしたいかもしれない。
でもね？中身は俺ちゃんなんです。
つまりですよ、恥ずかしい！

俺は無心にならねば！

兄から衣装は兄が選ぶって言われて、兄にお任せ（丸投げ）してしまったのは俺ですけどね？
そのせいもあるんだけど。後から文句言うなんて、男として恥ずかしいでしょ？
だから、我慢の子なんだよ。

だって、わからんもん。

パーティの正装なんて！
俺、正装なんて制服か成人式に着たスーツ以外着たことないですからね？
成人式は義父の頼みで写真だけは撮りましたけど、普通にスーツで一人写真と家族写真だけでした。
妹のはきっと派手にするでしょうがね。俺がいうのもなんですが、黙ってればわりと美少女な妹だからね。

で、俺の衣装ね、兄が選んだの。
お願いしたのは、あまり派手じゃなく、ズボンで！
たしかにズボンですよ？
ハーフサイズの。
で、色も一応地味を意識してくれたのだろうけど、俺には地味に見えません！
いや、派手になってるよね？
下はいい、濃紺のぴったりしたズボンなだけだから。
ただね？上着よー！
まず、フリルの多さに脱帽します。
色はグラデーションで濃紺から薄紫になってて。
形が前から後ろに長くなっていて、後ろから見たらふわりとしたスカートにしかみえないんじゃないだろうか？それがレースやらで重なっていて、まるでウェディングドレスみたいな感じ？のスカート。
あ、何度もいうが、後ろ姿ね。
前からはなんていうか、花びらに包まれてるみたいに見えます。
袖もフリフリ大売り出し中！ってくらいだし。で、白のキラキラしたベストがさらに華奢さを強調してます。
袖やらウエストやらにはキラキラの宝石がついた飾り紐だし。
髪は、長めなので……ハーフアップに飾りがついてるんだ。
ネックレスやイヤリングもついてる。　
こんなに着飾る必要があるかはさておき。
婚約式は耳飾り、イヤリングかピアスをお互いの耳につけるのだとか。

前世で言ったら指輪交換かな？
結婚時は完全にピアスだよ？
神の前で誓って、お互いの魔力で外れないピアスを付け合うんだよ。
あ、これはゲームにあったこと。
でも、婚約でも真似っこします。
もう、婚約破棄がなければピアスでもいいしってことで兄と俺はピアス。
これを無理やり取るには耳を切り落とすしかないんだって。
魔力で外れなくするから。
……怖いけど、俺が兄以外を好きになることはないと思う。
だから、これで兄が俺を離さないなら……嬉しいって思った。
だからつけることをオッケーした。
今回は左耳だけがピアスで同じものを右耳にイヤリングでつけるんだって。魔法具だからイヤリングでも取れにくい。
結婚するとき両耳をピアスにするんだ。
もちろんお互いの魔力を通すことで、ちゃんと外れるよ？
他人や一人では取れないってこと。
乙女ゲームっぽいけどさ、束縛感半端ないよね！
まあ、俺は兄と離れたくないからいいけども。

「さあ、参りましょうか。」
「うん。」

ルイくんに手を取られて、扉から出ると兄カレイドが立っていた。
いやー、もー、惚れ惚れしちゃう！
だって、すんごいカッコいい！
濃紺（お揃いか？）の軍服っぽいんだけどさ。これが正装らしい。
タキシードじゃないんだね！
これ、絶対にさー、制作の人たち趣味に走った感じだよね？
軍服萌えるーとかいってさ。
で、縁がねー、細かく金色で刺繍されてるの。
動きや光によってキラって光って綺麗だよー。
ただでさえ、イケメンなのに……そんなんでエフェクト入ってさらに素敵！
ピューィ！
よっ！イケメン！
思わず心の中で壊れかけましたが、表には出さなかったよ！偉いでしょ？
しかし、これはニマニマしてしまいそうなくらいかっこいいよ。
これが、俺の恋人だよっ！……男だけどっ！
そうだね、やはり、ここはこのセリフだよね？
『好きになった人が、たまたま男だっただけ。彼以外の男なんてごめんこうむるよ。』
俺がしたお仕事のお相手の男側のセリフですけど、何か？
だって、俺がやる役ってどんどん酷くなっていったんだもん。
こんな男前なセリフ言わせてくれないんだもん。
『だめぇ、触っちゃ～。』とか、『ぼくに触らないで！こないで！いやーーー！弘樹―助けて……。』みたいな？襲われる役ばかり。
たまーに、ビッチもあるけど。
もうねー、喘ぎとかリップ音とか得意にナリマシタ……ヨ。
俺、なんでこーゆーイケメンになれなかったのかなー。
はあ、兄じゃなければ呪いたいほどに、かっこいい。
じゃ、ちょっとビッチ風に言ってみようか！
『見てみて、これがぼくのぼくだけの、お・と・こ♡誰にもあ・げ・な・い・んだから♡』
ねー、コレに近いセリフは、何度言ったことか……。

「ハル？どーしたの？疲れちゃった？」
「なんでもないです。」

ナンデモナイデス。
ただ、ちょっと、地平線に沈んでみたかっただけさ。
と馬鹿なことを脳内から消して、兄に笑顔で言いました。

「兄様、素敵です。」
「ふふ、ありがとう。ハルもよく似合って可愛いよ。………………………今すぐにでも食べてしまいたいくらい可愛い。」
「兄様、声が小さくて？」

たまに小さすぎて聞こえない。
なんて言ってるのかな？
知らない方がいいの？そんな気もするけど。怖いことじゃなければいっか。

「コホンッ。カレイド様、皆さまがお待ちですよ？」

セバスが兄をじっとりとした目で見ているから、セバスは聞こえたのかな？兄の小さな呟き。
んー？悪口とかだったのか？
え？もしや、やはり、俺変なんじゃないの？
恥ずかしいとか言っていたらやだなあ。

「兄様、ぼく、実は変？」
「まさか！誰にも見せたくないほど、綺麗で可愛い。あーもう、可愛すぎて隠してしまいたい！」

といきなり抱き上げられた。
そして、キスの嵐です。

「ひゃあっ！」
「ふふ、抱っこでいこうね？」
「でも、恥ずかしい。」

だって、待っているのは家族だけじゃないんだよ？
お客様だってたくさんいるんだよ？

「大丈夫だよ。」
「大丈夫です！」

兄とルイくんが大丈夫だっていうんだけど……セバスを見ると優しく微笑んで頷いてくれた。
抱っこのままでいいようです。

……うん。諦めよう。
どーせ、今日はホスト見せ物側なのだもの。
だって、俺が第二種だって……ほら社交界にある程度広まってしまったらしいからね。視線の種類でセバスが警戒するべき人間を炙り出せますねって、言っていた。……怖い笑顔で。
たぶん、第二種の俺を見に来ているんだろうからね。
さあ！いざ参る！

……腐女子の血走った腐った視線に比べたら……ましだよね？