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第一章 あれ?腐った呪いなの?
さんじゅういち
しおりを挟む俺の笑顔に固まる面々を置いたままで、兄はまたくるりと反転してさっさと父の執務室の扉をノックする。
兄からボソッと、『父上にバレて怒られてしまえっ!』って、聞こえたのはスルーしよう。
しようったらしよう。
俺的には体がちょっと冷えたくらいだ(遠回りしたからでもある)し、発作的なものはないし。
ただ、片言だからか……喋るにも体力をものすごい使うのよ(嘆)。
まあ、だがこれで追い回される事は回避できるだろう!
そもそも明日にはいなくなるし?
――コンコン
「入りなさい。」
「失礼します。」
扉をわざと大きく開く兄は、きっと父の目に殿下をみせるためか?
意外に兄は子供っぽい。
まあ、子供なんですけどね……大きさといい、包容力といい……10歳だとは思えませんよ……。
まあ、だから俺がちょい二十歳的考えで喋っても『しっかりしてる』程度で済むんだろうなあ、この世界。
こんな5歳児いたら、俺普通に嫌だもん。馬鹿にされてしまいそうだ、春樹なら。
あ、父にも殿下が見えたらしい。
盛大なため息をついて、俺を見る。
俺は小さく頷いた。
父はもう一度ため息をついたあと、俺と兄を中へ促し、騎士を睨んでから扉を閉めた。
たぶんセリフがあったなら、『殿下を止めることもできんのか、この無能ども!』って感じかな?
俺が大丈夫だったから、それだけに留めたのだろうなあ。
ふふ、自分で言うのもなんだがハノエルは愛されてますから(照)。
それに甥っ子だしねえ。
まあ、俺が無事ならいいやって感じだよね。
「ほら、カレイド。すぐに暖炉の側にハルを。」
「はい。」
暖炉の前には暖かいファーでできた敷布。その上にこれでもかとクッションが山になって、柔らかくて暖かい毛布やらが積まれていた。
あれ?執務室だよね、ここ。
俺、これと同じ場所見たよ?
兄の部屋やサロンで……。
「ささ、ぼっちゃま。」
ッて、セバス?
どっから現れたの!
まあ、これを用意したのは間違いなくジジばかになってしまったセバスの仕業だろうけども。もうね、寒い場所なんてないよってくらい巣的な場所を作ってくれるんだよ。
忍者疑惑高まる!
「ハル、触っても大丈夫かい?」
優しい父は、俺に必ず断ってから触るんだ。
兄も兄だとはっきりわからないと、ビクッとなってしまうため、いきなり後ろからびっくりさせることはない……というか、離れる時間が限られているので、びっくりすることもほとんどないけども。
でも父に触られるときは、ビクッとなってしまう。
毎回聞いてくれるんだけどね。
「ん、だ、いじょぶ。」
大きな手で優しく、頭を撫でてくれる。
最初の一回だけ体が反射的にびくつくけど、どーしても抑えらんないんだよね。
なんで?
兄に後ろから抱きこまれるように、ラグの上に座る。
父に暖かい毛布をかけられて、手を握られた。
「ああ、こんなに冷たくなって。」
「申し訳ありません。何せ、邪魔者のせいで遠回りになってしまったので。」
「……全く殿下にも困ったものだ。」
あー……殿下を避けるように指を指してくれていたのか……ってことは、俺たちの様子を常にうかがっていたってこと?
…ある意味ストーカーじゃね?
えー、一番目がストーカーで二番目がレイプ魔?……やばくね?
国を担う王族、終わってない?
この国、大丈夫?
本当、まじで心配。
「さて、何か話があるのだったかな?」
「はい、その……あの大馬鹿が、何故か、ハルが第二種と知っていたようで……ハルにそれをあの時に言ったようなのです。」
「なんだと?何故、奴が知っているんだ!家族以外知らないはず……いや……セバス、産婆の行方を探せ。」
「かしこまりました。」
だから、セバスなんでまたいるの?
さっき、扉から出て行ったよね?
「ハノエルぼっちゃま、温かいミルクでございます。カレイド様、よろしくお願いします。」
温かいミルクの入ったカップを俺ではなく、兄にわたすとすぐにまた部屋から出て行った。
足音しないよ!
やっぱり、忍者?
いつか、セバスの忍者疑惑を解き明かす!
「何故知っていたのかは、こちらで調べてそれなりに処置をしよう。
さて、第二種男の話だったね。」
「はい。ハノエルが第二種とは何か?と。ね?」
「う、ん。」
そう、知りたい。
俺が引きこもるか決めるから!
そう、ゆくゆくは自宅警備員になるかならないか。それなのです。
「ふむ。第一種はわかるかい?」
「しら、ない。」
「まず、そうだね。ハルには難しい話になるかもしれない。」
「しり、たい。」
「わかった、話そう。今は完全に理解できなくてもいいのだからね?」
「は、い。」
「では……。」
と父上が話してくれた。
纏めるとこんな感じだ。
この世界には第一種男、女、第二種男がいる。第一種男は文字通り男性だ。
女性を守り、家族を養い守って、性的には子供を作る方。
女も文字通り女性だ。
家庭を守り、子を宿す者。
まあ、ここまでは普通だと思う。
女性だって家族を守るのよ、って現代の女性たちは言うかもしれないが、この世界では申し訳ないが女性が働く場所は一握りだ。
とは言っても、一般庶民の女性とだけ言っておこう。
詳しくはまた。
で、話を戻す。
第二種男というのは、希少で、ぶっちゃけ言うと男の性をもちながら子供を宿すことができる。
はい、きました!
ハノエルの腐った不憫設定!
まず、第二種と言う男性が見つかった理由なんですが、そもそもが最低だな!って理由です。
昔はなんて言うか……騎士団とかって、女性いないのね?
魔導士はいるけども、騎士にはいない。
魔導士になれる女性は少ないし、身分が高いものが多い。
はい、ここで問題です!
じゃあ、男ばかりのむさ苦しい集団。ましてや血気盛んな奴らです。
ナニでナニして発散するか、わかる人!
チ、チ、チ、チ、チ………。
はい!
はい、ハルくん。
男同士でナニするー、BLチックにー。
はい、ハルくん正解!
そう、男で発散するわけですよ。
で、そこに見目麗しい華奢な男がいたらどーなると思う?
ビッチな子ならともかく、まあ、大抵が集団レイプの後に性奴隷的なとか。
可愛い男の子を従者にして毎日犯す的な?
をしていたそうです。
父は言葉を濁しましたがね。
ぶっちゃけそーゆーことを遠回しに……。
そうしたら、お腹が膨らみ始めて病気かと思いきや妊娠と。
何故か、第二種は魔力が高いためか女性より短い期間(半年だとか)で出産。
ただ、妊娠だとわかることがすくないんだとか?
意味わからん。
確率的に男10000人に1人の割合で第二種だそう。
中でも、完全に初めから胎があるものはその中でも半数。
初めから胎のある第二種は、確実に魔力が高くスペックが高い子を成すんだとか。だから、ほとんどが嫁に行かされるみたいです。
胎のないものは、成長期に作られるらしいんだけど未熟で子供は運次第なんだってさ。
でね、この第二種最大の弱みが『愛され体質』ってこと。
なんだか、男を悪い意味で、魅了しちゃうみたい。それも残虐性っていうか簡単に言えば『サド』的な性格の奴を。
だから、そういう奴らからしたら性奴隷にするには最高で……昔からおもちゃにされていたらしい。
なんでもスペックの高い子ができるのがわかったのもわりとまだ最近なんだとか。
そして、医学(魔法医学らしいです)が発展してわかったのが、なんと第二種は別の血となるらしいんだ。
さらに意味わからん。
よくわからないんだけど、遺伝で親子とか兄弟ってわかるじゃない?
な、の、に!
母親側からの劣性遺伝子だけで、よくわからない構築?
されてるとか……なんか、分子だなんだと……わからん。
マジで意味わからん。
だから、親、兄弟の血族的な繋がりがあまりないとかなんとか。
まあ、結論でいうと父親だろうが兄や弟だろうが結婚して子供を作れちゃうよってことなんだって!
でもそれは『胎』をもつ第二種だけ。
だから、子供ができにくい方はかなり虐げられて、隠匿されて父と兄弟の玩具にされていることが多かったそうだ。すげーひどいよね?
まあ、なんか血が見えないから父親的には実の子じゃないと思っていたみたい。まあ、言うなれば不義の子?ってね。ただ、一応父親の遺伝がほんのちびっとあるのがわかって、不思議な遺伝でできる男子になったみたい。
今はもちろん国で性的虐待は禁止している。
だが、それも上部だけ。
底辺の暮らしの中で生まれた第二種は闇で売られる子は多いみたいだし、貴族によっては出生届も出されていないとかね……。
これが世間常識らしい。
もっと詳しいことは、もう少し大きくなったらアズリアから聞きなさいとのこと。
でね?第二種って、生まれた時に『印』があるんだって。
俺は自分の見たことないんだけどね?
なんか、体が熱くなると背中に羽のような痣が浮かび上がるみたい。
運動したりお風呂に入ったり。
なんか893さんの愛人さんとかがしていたオシロイボリって言うやつに似てるね。
だから、生まれたての時にはわかっちゃうわけよ。
で、さらにエッチの時は体温上昇するじゃない?
天使を抱いてるって、倒錯もあるんだって。たしかに、天使って男でも女でもあり、男でも女でもないって言われてるもんね!
俺が第二種だって、知られてるのはそーゆーことなんだってさ。
だから、俺が攫われないようにしてるし、俺が第二種だというのは父と兄と母とアズリアしか知らないそうなんだ。アズリアは、まあ診察してもらうし、そもそも主治医なんだってさ。だから、知ってる。
んー、よく昔やらされたオメガバース世界のBLに似てるけど、発情期はないらしいんだ。
で、ハノエルは稀も稀でさ。
胎を持って生まれた第二種なんだって………だから、王族にだけは知られたくなかったらしい。
確実にスペックの高い跡取りが生まれますからね!って言うか、そのね……抱くのが最高らしいですよ。
好きものには特に最高な存在なんだとか。
……おっぱい好きになりなよ。
ねえ?男のちっぱいなんて、無視しろっ!
そして、さらに父から爆弾発言です!
「だが、安心しなさい。もう、お前には婚約者がいるからね。」
わー、5歳なのに婚約者だって。
あ。姉様は生まれた時から王子の許婚だったー。
えー、俺おっぱいすきだから可愛い将来有望な女の子がいいな…………。
無理かな?無理だろうな……。
だって、そのなんたらの可哀想な第二種なんだもの。
そもそも不憫な腐った設定のハノエルには絶対に無理だよね?
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