163 / 422
第11話:未開惑星の謎
#00
しおりを挟むオウ・ルミル宙域国ノーザ恒星群、惑星グバングの夜空には、四葉のクローバーを思わせる見事な星団が輝いていた………
その輝きの下、オルダニカ上のバルコニーでは、NNL(ニューロネットライン)のメール画面をホログラムにして眼前に立ち上げ、手摺に寄りかかりながら憂いた表情を見せる、ナギ・マーサス=アーザイルの姿がある。
“ナギ、ごめんね。しばらくメールをお休みします。必ずまた連絡するから。今は何も言えないの、本当にごめんなさい”
それは二週間ほど前に、フェアン・イチ=ウォーダから届いた超空間メールだった。
同じメールを何度読み返した事だろう―――
どこか具合が悪いのだろうか?…
何か心配事が起きたのだろうか?…
ウォーダ家のご当主から禁じられたのだろうか?…
それとも………嫌われてしまったのだろうか?………
…いや、そんなはずはない………だけど………
理由の書かれていない文面に、想いだけが堂々巡りを繰り返す。もう幾度ついたかも知れないため息が口から零れ落ち、夜風が銀色の長い髪を揺らした。
将来を嘱望される星大名アーザイル家の嫡男とは言え、ナギとて十五歳の少年である事に変わりはない。なぜなんだろうという疑念と、自分には理由を知る資格が与えられてないんだという焦燥と、フェアンの本心を知りたいという渇望が、若者の胸を締め付ける。
もう一度メールを送ろう…そんな衝動に駆られて新規メール画面を立ち上げるが、それが原因で二度と返信が来なくなったらという恐怖、フェアンの言葉を信じて次のメールを待つべきだという自制心が、ホログラムキーボードを打とうとする指を止めさせた。
そこに家臣から「ナギ様、こちらでしたか」と声がかかったのは、苦しい葛藤をかかえた今のナギにとって、むしろ救いだったかも知れない。
振り向いたナギの視線の先には、一番の忠臣を公言して憚らないトゥケーズ=エイン・ドゥが歩み寄って来ていた。その真剣な表情から、世間話に来たのではないと知れる。ナギもまた表情を引き締め、星大名一族の顔でトゥケーズに向き直った。
「何事か?」
「は。ロッガ家が和平条約の締結を求めて参りました。御当主クェルマス様がお呼びです」
「ロッガ家が?…皇都キヨウ周辺で、いよいよ動きがありそうだという事か…わかった。すぐに行く」
▶#01につづく
0
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる