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第5話:逆転! 海賊討伐(後編)
#00
しおりを挟む下り坂を下りきり、高級カジノ街に向かう通りを疾駆する馬車の上―――座席の背もたれに足をとられ、バランスを崩した陸戦隊員の隙を逃さず、マーディンは素早くアッパーカットを繰り出した。
のけ反ったその男は勢い止まらず、もんどりうって頭から車外に転げ落ちていく。後方を走っていた反重力車が、事故防止用の緊急停車システムを作動させ、意思を持って驚いたように前方につんのめって停止した。しかもそれは波のようなうねりを起こし、さらに後ろを走っていた車を、次々と急停車させていく。
すると次の瞬間、マーディンは背後に殺気を感じ、反射的に身を翻した。脇腹スレスレを、突き出された麻痺警棒が通り過ぎる。座席の間に落ちていた警棒を拾い上げた、もう一人の陸戦隊員の攻撃だ。
マーディンの咄嗟の反応に半ば驚きながらも、陸戦隊の男は警棒を横に振り抜いて、高圧電流を浴びせようとする。その腕を片手で握り押さえ、マーディンは相手を引きずり寄せて、顔面に肘打ちを放とうとした。
しかし相手もさるもので、マーディンの肘打ちに自らも肘を突き出してガードし、引きずり寄せられるに任せて、逆に組み付いて来る。もみ合いになったマーディンと陸戦隊員は、伸ばした腕先の麻痺警棒を奪い合う形で、馬車前方の御者席に向けて倒れ込んだ。
とその時、麻痺警棒の先端が、馬車を曳く二頭のロボット馬の制御パネルを砕き割る。高圧電流を受けたパネルに爆発が起こり、マーディンの上にのしかかっていた陸戦隊員の顔面に、粉々になったパネル表面の透明樹脂が、無数に突き刺さった。
絶叫し、両手で顔を覆う陸戦隊員。それを突き飛ばして起き上がったマーディンだが、運悪く両脚が体を支えきる直前、高圧電流を注がれた上に制御パネルの爆発によって、暴走を始めたロボット馬が大きく飛び跳ねたため、反動で陸戦隊員共々、馬車から放り出される。
“しまった!!イチ姫様!…”
路面へ落下するまでの空中から見る、スローモーションのように時間がゆっくりと流れる景色の中、マーディンは一人だけ馬車に取り残されたフェアン・イチ=ウォーダの、自分の名を呼ぶ悲愴な表情が目に入り、胸が張り裂けそうなほどの悔恨の念を抱いた………
▶#01につづく
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