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第3話:宗家の陰謀
#02
しおりを挟む追跡する海賊船のビームが、再びシールドに命中すると、それまでの命中弾の負荷と合わさり、シールド崩壊が近い事を示すアラーム音が、鳴り始める。
「ヤーグマー!機関出力をシールドに回して、強化しろ!」
コントロールパネルを殴るようにして、アラームを切ったササーラが、機関士席のヤーグマーに指示する。
しかし船を操るマーディンが、それを撤回した。
「いや!エンジン出力の維持優先だ。このまま、星の内部へ突入する!」
そう言った先には、準惑星アコリスの表面に無数に開いた、穴の一つがある。遠くから見た時は、スポンジの穴のように小さかったが、接近すると平均的なサイズでも、直径が三百メートル程はありそうだ。
「分かった。スキャンはすでに開始している!」
ササーラが応えた直後、彼等の船は目指した穴の中へ飛び込む。それと同時に、真っ暗闇のはずの準惑星アコリスの内部が、操縦室の窓に明るく描き出された。探知士席にいるササーラが、先んじてスキャンした内部の状態を、疑似映像で窓に映し出したのだ。
アコリス内部はほぼ全て空洞であった。だがまるっきりのがらんどうではなく、直径10~60メートル程度の岩の柱や桁が、何キロメートルもの長さで、格子状というか、網目状というか、複雑に繋がり合って、穴だらけの表層を支えている。
「こいつはヤバいって!!」
窓に映るその疑似映像を見たヤーグマーは、座席に座ったまま跳び上がった。幾つもの岩の支柱が、視界の上下左右を目にも留まらぬ速さで通過し始めたのだ。まともにぶつかれば、一巻の終わり間違いない。思わず、この旅について来るようにノヴァルナに命じられた時、ラッキー!と喜んだ自分を呪いたくなった。
すると彼等を追う宇宙魚雷と海賊船も、続いてアコリスの内部へ突入して来る。だが、機械仕掛けの宇宙魚雷はともかく、人が操縦する海賊船の方は、急に追跡速度が落ちた。内部の複雑な状態を見て動揺したのだろうか。
その間にマーディンは、神経を集中して、岩の柱の狭間をくぐり抜けて行く。バンク、スクロール、バンク、ダイブ、スクロールと転舵は息つく暇もなく、船が直線で飛ぶ時間は、ほとんど存在しない。
窓に映る疑似映像では、衝突の確率が非常に高い岩の柱や桁が、前方で常に複数本、赤い警告色で表示されている。それらが紙一重で通り過ぎる様子は、見る者から生きた心地を奪うのに充分だ。
もちろん賞賛されるべきは、船を巧みに操る、トゥ・シェイ=マーディンの技能である。ただその賞賛を受けるためには、生きてこの空洞準惑星の中から、離脱しなければならない。
「右下後方。宇宙魚雷接近!」
ササーラが警告する。船より小型で機動性のある魚雷は、この切迫した状況下で着実に近付いて来た。
「モリン!前方周囲の岩を撃て」
マーディンが、火器管制をしているモリンに命じる。それに対してモリンは、照準モニターをキョロキョロ見回しながら尋ねた。
「えっ!?ど…どの岩ッスか!?」
「いいから撃ちまくれ!」
マーディンの意図を理解したササーラが、代わりに声を張り上げる。そう言われてモリンも得心したらしい。
「うぃッス!!」
と返事したモリンは、ニ基あるビーム砲塔を、本当に撃ちまくり始めた。
船の前方で爆発が連続して円を描き、マーディンはその中に船を突っ込ませる。艇長席に座るマリーナ・ハウンディア=ウォーダは、それを真っ直ぐ見据えたまま、コクリと喉を鳴らした。
爆発で砕けた岩の柱が、別の岩の柱をへし折り、大きな破片がさらに細い桁状の岩を砕いてゆく。
破片がシールドを叩くガン、ガンガンという軽い震動に続き、ガガン!とひときわ大きな震動が船を襲った。フェアンの「きゃあっ!」という怯えた悲鳴と同時に、エネルギーシールドが崩壊した事を知らせる、甲高いアラーム音が響き出す。
その直後、船の後方で大きな爆発が起きた。無数に増えた岩の破片を避けきれず、宇宙魚雷の一発が激突して爆発したのだ。
一瞬、安堵の表情になるササーラ。だがその一瞬すらも、油断は禁物であったのだ。
「もう一発。来てる!近い!」
一発目の爆発を、センサーからの盾にするように、ニ発目の魚雷が回り込んで近付く、自律思考AIを搭載した魚雷であれば、例え話ではなく、事実として盾にしようと考えたのかも知れない。発見が遅れたササーラの声に含まれる、焦りの成分がその証拠だ。
「クソが!!」
モリンがそう言ったきり、歯を食いしばってビーム砲を撃つ。だが魚雷の軌道を追うような照準では当たらない。赤い光の矢は、虚ろな空間を貫くだけだ。
「モリン!」とヤーグマー。
「わァーってる!!」
同じ『ホロゥシュ』の仲間の声に、気を静めたモリンは一旦射撃を止め、一つ息をすると、魚雷が最後の直線軌道に入った瞬間に、再びビームを放った。
その一撃は船の至近で魚雷の頭を捉え、巨大な光球へと変える。
ところがその数秒後、不意に船の電源が一斉に切れてしまった。操縦室の照明も消え、フェアンが「きゃっ!」と声を上げる。暗闇に包まれて全員が戸惑う中で、マーディンは呻くように言った。
「まずい!電磁パルスか!!」
宇宙魚雷の反陽子弾頭は、対消滅爆発の際、副次効果として、電子機器を一時的に麻痺させる、強力な電磁パルスを放出する。
これは船殻をエネルギーシールドが保護している場合は、無効化出来るのだが、不運な事に今のマーディン達の船は、先ほどの岩の破片との衝突で、エネルギーシールドの負荷が限界に達し、喪失していたのだ。そのために電磁パルスをまともに喰らい、電子機器が停止してしまったのである。
停止時間そのものは短く、操縦室ではすぐに照明が点灯し、各電子機器が再起動する。
そこでマーディンは即座に、船の緊急制動レバーを引いた。電子機器に頼らない機械式のそれは、このクラスの小型船の場合、船の移動方向に向けて、内蔵された不燃ガスを高圧で噴射し、ブレーキをかける仕組みとなっている。
マーディンがこの装置を使った理由は、電磁パルスで一時停止した電子機器が、このような再起動の際に、まず自己診断モードに入るため、電源は入ってもエンジンをはじめ、各システムがすぐには使用出来ない事による。
船には慣性がついており、電磁パルスの影響で、未だコントロールが利かない以上、真っ直ぐにしか飛ぶ事は出来ない。そして周囲は、例の樹海のような、準惑星アコリス内部の岩柱が埋め尽くしているのだ。船を停めなければ、いずれかの岩柱に激突するのは、確実だったからである。
船の前面の四箇所から、超特大の消火器の詮を開いたように、白いガスが盛大に噴き出し、制動をかける。マーディンが懸念した通り、視界の正面に太い岩の幹が現れて、あわや突っ込みそうになったが、間一髪で停止した。操縦室に安堵のため息が幾つも重なる。
「状況は?…船は、すぐに動けますか?」
そう尋ねたのはマリーナだった。マーディンが感嘆した通り、その口調は極めて落ち着いていた。
「は。システムの自己診断と復旧は、系列や電磁パルスを浴びる前の、使用状況によって違います。使用していなかったものはすぐに使えますが、あとは早いものでも三分。遅いものでは六、七分かかるでしょう」
マーディンの返答に、マリーナは「分かりました。ありがとう」と柔らかく応え、機関士席のヤーグマーに顔をむける。
「ヤーグマー。重力子ドライブの復旧に、どれくらいかかるか分かりますか?」
細身で吊り目のヤーグマーは、マリーナの問い掛けに、恐縮この上ない様子で告げる。
「も、申し訳ありませんッス。俺にゃあ、さっぱり…どのモニターにも、『診断中』って文字が浮かんでるぐらいしか、報告出来ませんです」
するとモリンが、さっきの仇とばかりに、ヤーグマーを罵倒した。
「あ?なんだてめぇ!さっきは、俺に偉そうに言いやがったクセに、何も分かってねーじゃねーか!マリーナ様に失礼だろうが!」
マリーナの名前を出されては、ヤーグマーも何も言い返せない。機関士席でますます小さくなる。だがモリンもいい気になれたのは、束の間だった。マリーナが、モリンにも報告を求めたのだ。
「ではモリン。火器管制の方は、どうなのでしょうか?」
「いっ!」
鷲鼻で目が大きく、いかり肩のモリンは、その特徴的な目をさらに見開き、肩をビクリとさせた。
「い、いやその、照準モニターが真っ赤で…えと、つまり…俺も……俺も、面目ございませんッス!!」
席を立って直立、マリーナに勢いよく頭を下げるモリン。二人の失態に、『ホロゥシュ』筆頭のマーディンは無表情のまま、こめかみに血管を浮かせた。
それに気付いたヤーグマーとモリンは、彼等若手の教育係でもあるマーディンのそれが、本気で怒っている時だと知っていて、顔を青ざめさせる。これはもう後で説教確定だ。
ただしマリーナ本人は、特に不満を抱いてはなかった。いきなり奪い取った海賊の船であって、操作マニュアルの記憶インプラントもなしに、すぐに機器の使い方を、全てマスター出来るはずもない。
「分かりました。とにかく復旧するまで、待ちましょう」
そう指示を出して、マリーナは腕の中の犬の縫いぐるみを、自分に振り向かせて軽く抱きなおす。悪党面の縫いぐるみの表情は、怒っているようでもあり、嘲笑っているようでもある。
“兄上。ご無事ですよね…”
心の中で、縫いぐるみに語りかけるマリーナ。その時、探知士席のササーラが、重々しい声で告げた。
「残念ですが、待つ時間はないようです」
それはこの準惑星に突入後、速度を落として置いてきぼりになっていた、あの海賊船であった。
接近する海賊船を探知出来たのは、比較的システムが簡単な、センサー波逆探知機がいち早く、一部を復旧したからであった。
ただ相手が放出するセンサー波を、自分達の乗る船に受けた、という反応が検出出来ただけで、相手の位置と距離などは、不明のままである。
「どれくらいでここに来るか、分かるか?」
マーディンが尋ねるが、ササーラはモニターを覗き込み、首を横に振って応えた。
「いや、そこまでは無理だ。推測でよければ、四、五分といったところ…だろうがな」
それを聞いてマーディンは、眉間にシワを作る。
“間に合わん…”
「迎撃は出来ねぇのか?モリン」
切迫した事態に、ヤーグマーも真面目な口調となって、火器管制席につく同僚に尋ねた。
「魚雷なら、電磁パルスを喰らった時に、起動させてなかったんで撃てるが、連装ブラストキヤノンや、CIWS(近接防御火器システム)は無理だ」
モリンの返答に、ヤーグマーは歯を噛み鳴らす。いくら自律思考AIを搭載した宇宙魚雷でも、敵の海賊船の諸元を入力せずに撃ったところで、命中は期待出来ない。
だがヤーグマーがそれを口にしたところ、通信士席のフェアンが何かを思い付いたらしく、まるで授業中の生徒のように、手を挙げて姉のマリーナに告げる。
「姉様!マリーナ姉様!あたしに任せて!」
「イチ?」
「時間が無いんでしょ!?あたしに任せて!」
急かす口調で繰り返すフェアン。マリーナは、妹が根拠も自信もなく、こういった物言いをする性格ではない事は、よく理解していた。
「分かったわ。おやりなさい」
一刻を争う状況で即断するマリーナ。「うん!」と大きく頷いたフェアンは、その大きな瞳を、シンハッド=モリンに向ける。
「モリンくん。魚雷の管制、こっちにちょうだい!」
美少女と人気のフェアンから、『モリンくん』と親しげに呼ばれ、モリンは顔を赤らめて「り、了解です」と応じた。
ただモリンが照れながらコンソールを操作し、「完了です」と再びフェアンに顔を向けても、フェアンはもう振り向きもせず、「ありがとう」とだけ告げて、目にも留まらぬ早さで、キーボードに指を走らせる。
そしてものの一分も経たずに、操作を完了したフェアンは、ボードのenterキーを叩いて声を上げた。
「魚雷!はっしゃあぁーーっ!」
幾分わざとらしい無邪気さの掛け声ともに、フェアン達の乗る宙雷艇の右舷一番発射管から、宇宙魚雷が放たれた。
モリンやヤーグマーが、固唾を飲んで見詰める前で発射されたその魚雷は、ところが急に針路を変え、敵の海賊船が来る方向とは、全く無関係な針路を突き進み始める。
「え?」
魚雷は明後日の方角へ、みるみるうちに遠ざかって行き、操縦室の中では、フェアンだけが満足そうな表情で、あとは誰もが呆気に取られて口を半開きにした。海賊船がここにやって来るまで、もう残り時間はほとんどないはずだ。
「ちょっと、イチ―――」
“なんのつもりなの?”と、問い質そうとマリーナが言いかけた時、窓の外をまばゆい光芒が猛然と横切って行った。その光は今しがた、フェアンがあらぬ方向へ撃った魚雷と、同じ針路を取っていたように見える。どうやらこちらを追尾していた、海賊船らしい。
「え?」
魚雷を撃った直後と、同じ表情でそれを見送る、操縦室の面々。
「えへへ。上手くいったね」
一人、納得の笑みを浮かべて振り向くフェアンに、マリーナは「貴女、何をしたの?」と素直に尋ねた。
「魚雷に、あたし達のこの船のデータを背負わせて、適当に飛んでくようにAIに命じたの」
「データを?」
「うん。だって、こんな岩の柱でゴチャゴチャした空洞の中を、センサーの反応とかだけで、あたし達の後を追ったり出来ないはずでしょ?たぶんなんかのネットワークが繋がってて、それを追っかけてるんじゃないかと思って、この席の通信系ネットワークを全部、あの魚雷のAIにコピペで移植したの」
フェアンにそう言われて、他の者は“あっ!”と気付いた。
星大名の一族とは言え、軍事知識には疎いフェアンだが、海賊船同士がネットワークで、繋がっているのではないかと考えたのは、正鵠を得ていたのだ。いわゆる“戦術情報共有システム”である。
海賊船は全て同型の軍用宙雷艇がベースになっており、大型宇宙艦を襲撃する際の集団戦法に使用する、戦術情報共有システムは標準装備のはずだ。それを追えば、センサーの探知圏外でも、こちらの位置を把握出来る。
そうであれば、海賊船がこの『空洞準惑星アコリス』の中まで追って来た直後、速度を落とした説明もついた。相手は常にこちらの位置を把握出来ているので、無理に危険な速度を出してまで、追い付く必要はなかったのだ。
そして事態は追撃する海賊船の思惑通り、こちらの船が一時、機能を停止する事で追い付く機会を与えてしまったのだが、ここで思わぬ落とし穴があった。電磁パルスを浴びたため、フェアン達の船の戦術情報共有システムまでが、ダウンしたのだ。これにより、図らずも海賊船は手探り状態となった。
この時、半ば偶然ながらフェアンが、擬似ネットワークを組み込んだ魚雷を、適当な針路に発射した事により、本来のシステムが停止したフェアン達を見過ごして、海賊船はその囮を追って行った、というわけである。
マーディンがそう推察を述べ、ようやく話が飲み込めたマリーナは、感心した様子でフェアンを振り向く。
「見事だわ、イチ。それにしても…あんな短時間で、よくダミーデータを組み上げたわね」
「うん。ホントはね、データは少し前から、もう出来てたんだ」
「少し前って?」
「マリーナ姉様の指示で、あたしがエネルギーシールドをアップしたあと…この船にも、旅客船のと同じような救命ポッドがあるのに気がついたから、それの救難信号発信機に、この船のデータを被せてバラ撒けば、追いかけて来る海賊や魚雷の、目くらましに使えるかも、って思って用意したの。で、そのデータをポッドじゃなくて、魚雷に被せて発射したんだー」
事もなげに言い放つフェアンであったが、まだ14才の少女の見せた周到さに、他の仲間は唖然として、目を見開かされるばかりだ。
「それ、貴女が自分で思い付いたの?」
マリーナが驚きと疑念を含んだ声で尋ねると、フェアンは「そうだよー」と軽い声で頷く。
「こないだ、ノヴァルナ兄様と一緒に、ラゴンのプラント衛星で戦った時、戦いには『情報』がすごく重要だって思ったんだ。ちゃんとした『情報』も、ニセの『情報』も、使い方でミサイルとかよりも、武器になるって」
まだあどけなさの残る口調ではあったものの、フェアンの示唆した事は、戦いにおける真理の一端である。フェアンはそれを実体験から学んだという。
話を聞いたマーディン達は、コンピューター操作の技能の高さと相まって、ナグヤ=ウォーダ家のアイドル的存在、フェアン・イチ=ウォーダの奥底に潜むものに、空恐ろしさすら感じた。姉のマリーナの胆力もそうだが、やはり星大名の一族には、常人の及ばぬ部分があるのだと、舌を巻かずにはいられない。
そうするうちに、船のほぼ全てのシステムが、再起動からの自己診断を終え、復旧を果たす。ただ電磁パルスを受ける前に、過負荷で崩壊したエネルギーシールドは、使用不能のままだ。
「ササーラ」とマーディン。
マーディンの言わんとしている事を理解したササーラは、即座に返答した。
「分かっている。戦術情報共有システムは、もう切ってある」
再起動とともに戦術情報共有システムまで復旧すると、せっかく囮の魚雷を追いかけて行った海賊船に、気付かれる事になる。認識を一致させたササーラは、マーディンが指示するより先に、システムを落としたのだった。
「よし」と応じ、マーディンはマリーナを振り向いて告げる。
「では、出発いたします」
「お願いします」
マリーナが静かな口調でゆっくりと頷く。そこへ通信士席のフェアンが、身を乗り出すようにして言葉を投げ掛けて来た。
「ノヴァルナ兄様達を、助けにいくの!?」
期待に目をキラキラとさせていたフェアンだったが、マーディンが心苦しげに「いいえ」と否定すると、見るからに失望した顔になる。
「この船一隻と我々だけでは、成功の可能性は低すぎます。まずは惑星サフローへ向かい、そこからナグヤと連絡を取りましょう」
冷静にそう言っているマーディンだが、内心は暗鬱な気で満ちていた。
ノヴァルナ達がここに来ている事は、キオ・スーやイル・ワークランといった、敵対的なウォーダの宗家には秘密であり、またノヴァルナの本拠地ナグヤですら、ノヴァルナに対し批判的な者が少なからずいる。その彼等に知られるのはまずい。
そしてこのような時に一番頼りとなる、家老のセルシュ=ヒ・ラティオは、定例会議でナグヤにおらず、『ホロゥシュ』も、ヨリューダッカ=ハッチとラン・マリュウ=フォレスタ、さらにノヴァルナ兄妹の影武者として行動中の三人を欠いて、ナグヤに留守居している残り十一人だけである。
全面的に信頼出来る者の少なさで、いかにノヴァルナの立場が、ウォーダ家の中で危ういかを、思い知らされるのだ。
とは言え、他に手立てもなく、マーディンは船を発進させた。一番近くの穴から、準惑星アコリスの表層の外へ出る。
だがその先の宇宙空間に、待ち構えていたものがあった。
『ラーフロンデ2』を護衛していた、例の正体不明の護衛艦隊である。
▶#03につづく
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