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第3話:宗家の陰謀
#00
しおりを挟む夜の帳(とばり)が降りた、キオ・スー城………
幾つもの照明にライトアップされた巨大な城は、平和な世であれば、まるでおとぎの国が具現化したようでさえある。
だがその城に巣くう者達は、到底おとぎの国の住民などという、可愛らしい生き物などではなかった。
キオ・スー=ウォーダ家筆頭家老のダイ・ゼン=サーガイは、城の執務室で超空間通信で届いた、メッセージホログラムを机の上で開いている。
メッセージを送って来た相手は、まるで神話に出て来る、龍のような姿の上半身を立体映像で浮かばせていた。モルンゴール星人と並ぶ戦闘種族のドラルギル星人だ。
ただモルンゴールと違い、ドラルギルは古くからヤヴァルト銀河皇国に参加しており、星大名の家臣の中でも、重要ポストに就いている者が多い。
そして今、ダイ・ゼン=サーガイが見ているドラルギル星人も、そんな重要ポストに就いている人物の一人であった。セッサーラ=タンゲン…イマーガラ家の筆頭家老にして、軍の総参謀長である。
だがイマーガラ家は、ウォーダ家の宿敵のはずだった。それがなぜ、キオ・スー=ウォーダの筆頭家老の元へ、メッセージを送っているのか…
「貴殿の提案を受け、我が主君、ギイゲルト様の仲裁により、カイのタ・クェルダとエティルゴアのウェルズーギは、未だ非公式ながら停戦の合意に至った―――」
ホログラムのタンゲンが、無表情で告げる。
「―――これで貴殿の思惑通り、シナノーラン宙域がタ・クェルダ支配で安定すれば、これと隣接するサイドゥ家のミノネリラも、迂闊に貴殿らオ・ワーリに手は出せまい―――」
そう言ってタンゲンは、念を押すような重い口調で、メッセージを締め括った。
「―――よいな、貴殿…見返りを忘れるなよ。我等とて、これを奇貨にナグヤと手を組み、貴殿らキオ・スーを滅ぼす事も、出来得るのだからな…」
そこでメッセージホログラムが消滅すると、サーガイは一人呟く。
「忘れはせぬよ、タンゲン殿…」
それは以前にサーガイが、キオ・スー宗家当主ディトモス・キオ=ウォーダに密かに告げた、サイドゥ家との和睦を有利に運ぶための、例の腹案の中身であった。
サーガイは口元を禍々しく歪め、続く言葉を胸の内で吐き出す。
“ククク…これでよい。あとはサイドゥ家のノア姫さえ手に入れれば………”
▶#01につづく
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