銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児

潮崎 晶

文字の大きさ
上 下
23 / 422
第3話:宗家の陰謀

#00

しおりを挟む
 







 夜の帳(とばり)が降りた、キオ・スー城………



 幾つもの照明にライトアップされた巨大な城は、平和な世であれば、まるでおとぎの国が具現化したようでさえある。

 だがその城に巣くう者達は、到底おとぎの国の住民などという、可愛らしい生き物などではなかった。




 キオ・スー=ウォーダ家筆頭家老のダイ・ゼン=サーガイは、城の執務室で超空間通信で届いた、メッセージホログラムを机の上で開いている。
 メッセージを送って来た相手は、まるで神話に出て来る、龍のような姿の上半身を立体映像で浮かばせていた。モルンゴール星人と並ぶ戦闘種族のドラルギル星人だ。
 ただモルンゴールと違い、ドラルギルは古くからヤヴァルト銀河皇国に参加しており、星大名の家臣の中でも、重要ポストに就いている者が多い。

 そして今、ダイ・ゼン=サーガイが見ているドラルギル星人も、そんな重要ポストに就いている人物の一人であった。セッサーラ=タンゲン…イマーガラ家の筆頭家老にして、軍の総参謀長である。

 だがイマーガラ家は、ウォーダ家の宿敵のはずだった。それがなぜ、キオ・スー=ウォーダの筆頭家老の元へ、メッセージを送っているのか…



「貴殿の提案を受け、我が主君、ギイゲルト様の仲裁により、カイのタ・クェルダとエティルゴアのウェルズーギは、未だ非公式ながら停戦の合意に至った―――」

 ホログラムのタンゲンが、無表情で告げる。

「―――これで貴殿の思惑通り、シナノーラン宙域がタ・クェルダ支配で安定すれば、これと隣接するサイドゥ家のミノネリラも、迂闊に貴殿らオ・ワーリに手は出せまい―――」

 そう言ってタンゲンは、念を押すような重い口調で、メッセージを締め括った。

「―――よいな、貴殿…見返りを忘れるなよ。我等とて、これを奇貨にナグヤと手を組み、貴殿らキオ・スーを滅ぼす事も、出来得るのだからな…」

 そこでメッセージホログラムが消滅すると、サーガイは一人呟く。

「忘れはせぬよ、タンゲン殿…」

 それは以前にサーガイが、キオ・スー宗家当主ディトモス・キオ=ウォーダに密かに告げた、サイドゥ家との和睦を有利に運ぶための、例の腹案の中身であった。
 サーガイは口元を禍々しく歪め、続く言葉を胸の内で吐き出す。





“ククク…これでよい。あとはサイドゥ家のノア姫さえ手に入れれば………”






 ▶#01につづく
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~

こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。 人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。 それに対抗する術は、今は無い。 平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。 しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。 さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。 普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。 そして、やがて一つの真実に辿り着く。 それは大きな選択を迫られるものだった。 bio defence ※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

処理中です...