銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児

潮崎 晶

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第2話:風雲児と宇宙海賊

#10

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 ノヴァルナは環境制御室の扉をそっと僅かに開けて船倉の様子を探った。流れ込む空気は疑念の通り、ラウンジなどと同じ常温である。

 照明が少なく、薄暗い船倉の前方の壁には、確かに人が屈んで通り抜けられるほどの、丸い穴が開いており、強制連結機の先端が接続されているのが見える。その両側には見張りが二人いた。
 見張りの姿は、『ラーフロンデ2』の各所を制圧して回った、軽装甲宇宙服で統一された兵士とは違い、薄汚れた私服に安物の胸部アーマーを装着し、丸いレンズのゴーグルを掛けたヒト種の男であった。制圧部隊よりは、こちらの二人の方が海賊っぽい。

 見張りは志気も低いようで、片方の男が大あくびをする。そこにバン!と大きな音がして、船倉の片隅の扉が開き、少年が飛び出して来た。キノッサである。キノッサは見張りの二人と顔を合わせると、驚いたそぶりで両腕を広げ、大声で叫ぶ。

「うわぁあ!助けてぇえ!!」

 海賊から命からがら逃げた先に、また海賊がいたという演技で、キノッサはすぐさま扉の中へ引き返した。

「このガキ!待て!!」

 まだ乗客が残っていたかと思った二人の見張りは、相手が少年一人なら自分達だけで充分と、連絡もせずに後を追って、開いたままの扉の中へアサルトライフルを差し入れる。

 だがそこにいたのは、少年一人ではなかった。陰からライフルの銃口を掴み上げられ、カウンターで伸びて来た二つの拳が、見張りの男達の顔面にヒットする。扉の両側で待ち構えていた、『ホロゥシュ』のマーディンとササーラだ。

「うげッ!!!!」

 殴られた見張り達は、なまじゴーグルを掛けていたために、グシャンという鈍い音を伴った、顔面への強打でダメージが増し、後ろへ吹っ飛ぶと同時に意識を失う。
 そして二人をノックアウトしたマーディンとササーラは、すぐさま扉をくぐり抜けて敵のアサルトライフルを拾い上げ、射撃姿勢で周囲を警戒した。

 その間に、ダクトの中に残っていた者達が、環境制御室へ降りて来る。

 船倉の中には、一辺が3メートル程あるほぼ正立方体の、黒いセラミック製コンテナが、1メートル程の等間隔に置かれていた。その数は二十はある。

 辺りには見張りの他は、誰もいないようであった。ただし、『ラーフロンデ2』と接舷している海賊の小型船には、操船スタッフがまだ何人かいるに違いない。
 
 マーディンが手のサインで指示を送ると、まずハッチ、モリン、ヤーグマーの三人が、足音を響かせないように駆けて来て、強制連結機の入口右側で、壁に背中を付けて並ぶ。

 その後をノヴァルナを先頭に、ランを最後尾にして、キノッサとイェルサスにマリーナ、フェアンが小走りで向かう。
 途中、ノヴァルナは船倉に並べられた、コンテナの列に目をやって考えた。

“海賊の狙いは、このコンテナってわけか…”

 実のところ、ノヴァルナは海賊の襲撃を、奇妙に思っていたのだ。

 それは護衛艦の情報隠匿という、当初からの疑念に加え、襲撃を受けた自分達の乗る船が、定期航路の旅客船だったという事も…である。

 宇宙海賊を自称する連中以外にも、海賊行為を働く犯罪集団はいるが、それらが通常狙うのは、希少金属の鉱石などを満載した、大型貨物船であった。そして、よほど高額な身代金を期待出来る人間でも乗っていない限り、旅客船を襲う事はまずない。

 これは旅客船を襲撃して、乗客の金品を奪っても、海賊船の高額な運用コストを考えれば、大した利益も得られないという、冷然たる現実があるからだ。
 それに加え、宝飾品などは闇市場に流しても足がつきやすく、また貨物船を襲うにも、買い手有利の工業製品など狙うよりは、交渉の余地がある鉱石を狙った方が、トータルで高利益になる。
 ちなみに獲物が同じ工業製品でも、軍事用のBSIユニットの、組み立て前パーツとなれば高価だが、ほぼ間違いなく、今回の三隻程度とは桁違いの、かなり強力な護衛艦隊がついており、リスクも桁違いだった。

 これらの理由から、ノヴァルナは自分達の乗る旅客船を海賊が襲った目的が、この船倉にある、コンテナだろうと考えたのである。

 もっとも、高額な身代金を期待出来る人物として、ノヴァルナ自身が当て嵌まるのだが、それならそれで海賊達は、姿の無いノヴァルナをもっと血眼になって捜しているはずで、実際にそのような動きは、感じられない。

“―――とは言え、コンテナの数からして、中身がよっぽどのお宝鉱石じゃねえと、あんだけの数の海賊船を使う分の、割りには合わねえな…何が入ってるのか、見当もつかねえぜ”

 一応理屈には合っているものの、払拭出来ない違和感に、ノヴァルナは内心首を捻りながら『ホロゥシュ』達に合流し、強制連結機近くのコンテナの間に、妹達と身を潜めた。

 ノヴァルナ達を待っていた『ホロゥシュ』は、彼等が合流すると同時に、連結機の両端からマーディンとササーラが中を覗き込む。

 対象の外殻に吸着して穴を空ける、ベアリング型カッター付き接合連結機から、1メートル半ほどの内径を持つ、伸縮式パイプが5メートルほど続き、その奥には、接舷している海賊の宙雷艇の内部が見えていた。
 すると船内環境制御室の前で、気を失って仰向けに転がっている二人の見張りの、片方の男が身につけているボディアーマーの、胸に掛けてあったマイクが、声を発し始める。

「おい、シドル」

 たぶん倒れている男の名前だと思われる呼び掛けに、緊張が走った。

「聞いてるか?連結機にまた空気漏れの警告が出てる。どうせいつものエラーだろうが、一応見てくれ」

 それは、ノヴァルナ達の目の前で『ラーフロンデ2』と接舷している、海賊船からの通信だ。

「おい!聞いてるのか、シドル!?」

 無論、シドルと呼ばれた男は気を失っていて、返事のしようもない。『ホロゥシュ』達は、躊躇っている場合ではなく、ササーラを先頭に、連結機の穴の中へ突入して行った。

「兄様…」

 様子を見るフェアンが、心配顔で兄を呼ぶ。 ノヴァルナはそんな妹を安心させるため、そっと肩に手を置いてやった。
 すると、倒れている見張りの通信機が、海賊船の中の動きを実況し始める。

「どうした、返事しろ、シドっ…なんだ?…えっ!!…なっ!!…なんだてめぇらッ!!」

ガシャン!!…ドン!!…

「この!!…ぐはっ!!」

ドシンッ!!!!

「………………」





 何かを打ち付けるような、重い音がスピーカーから流れ、物音も声もそこで途切れたままとなった。
 静寂の中、黒いコンテナの陰で、イェルサスが緊張した表情で喉を鳴らした直後、連結機からモリンが姿を現し、ノヴァルナに向けて親指を立てて見せる。海賊の小型船を制圧したという合図だ。

 モリンに続いてヤーグマーとハッチも現れ、周囲を見張る。ハッチは海賊から奪い取ったらしい、実弾式の拳銃を構えた。

「よし、マリーナ、フェアン。おまえ達が先だ」

 そう言って、ノヴァルナは二人の妹に、海賊船へ乗り移るよう促す。コンテナから連結機が穴を開けた船倉の壁までは五メートルほどだ。マリーナとフェアンは頷いて駆け出した。
 
「次はイェルサス。行け!」

 しかしイェルサスは遠慮して、順番を譲ろうとする。

「いえ。ノヴァルナ様がお先に」

「いいから、行け!」

「いえ。ここはナグヤの次期当主である、ノヴァルナ様でなくては」

「いいって、早くしろ!」

 二人は譲り合いながら、コンテナの陰から出て来た。すると不意に、後ろにいたキノッサが口を挟む。

「では、ここは間をとって、この私が――」

 そう言いながら背中を丸め、小走りに横をすり抜けて、海賊船へ向かおうとするキノッサ。ノヴァルナはその着衣の襟を背後から掴んで、「なんだ、てめぇは!!」と引き戻した。

「な、なんだと申されましても、私はトゥ・キーツ=キノッサですが…」

「馬鹿、てめぇ!!じゃなくて!なんで俺とイェルサスの間をとったら、てめぇになるんだってー、話だろーが!!」

 無駄なやり取りで時間を喰うノヴァルナ達を、フェアンとマリーナが連結機の口の中から、叱り付ける。

「もう、兄様!!早く!!」

「何をやっているのですか!!」

 案の定、その時間の浪費が災いした。突然の発砲音と共に、イェルサスの体に麻痺ビームの雷光が纏わり付く。

「ひやっ!」

 体を硬直させたイェルサスは、そのまま意識を失って床に倒れ込んだ。

「イェルサス!!」

 さしものノヴァルナも驚いて、銃撃のあった方向を振り向く。
 ビームを撃って来たのは船内環境制御室の反対側、20メートル程先で開いた扉の隙間であった。その扉が大きく動き、海賊達がアサルトライフルを手に侵入して来る。ノヴァルナ達を追って来たA班の符丁を付けた部隊だ。

「全員動くな!!」と先頭の男。

「この!」

 ハッチが反射的に拳銃を構え、敵に連続発砲する。
 タン!タン!タン!と乾いた音が響き、海賊の一人が右胸に弾を一発受けた。だがハッチの撃った銃は小口径だったため、相手を仰向けに転ばせたものの、ボディアーマーは貫けずに跳ね飛ばされて、コンテナの一つに当たり、火花を散らす。

 その間にノヴァルナは、ランとキノッサと共に、気を失ったイェルサスを引きずり、コンテナの陰へと引き返した。

「兄様!!」「兄上!!」

 フェアンとマリーナが、悲痛な声でノヴァルナを呼ぶ。
 すると敵の麻痺ビームが、銃撃で牽制していたハッチを捉えた。ハッチは「うあっ!」という声を上げて、床に転がる。
 
「ラン!時間を稼げ!」

「はっ!!」

 ノヴァルナに命じられ、ランはハッチが落とした拳銃を拾い上げると、海賊達に向かって猛然と駆け出した。

 ランにライフルを撃つ海賊達。だがフォクシア星人のランの俊敏さは、人間の比ではない。素早く、かつ不規則に左右へ向きを変えるランに、海賊達の麻痺ビームは、虚しく船倉の床やコンテナに、小さな稲妻を絡み付かせるだけだ。

 続いてランは拳銃で反撃した。壁や床に火花が弾け、海賊達は左右に散開して、何人かは扉の中へ身を隠す。その隙に、ランはノヴァルナのいる場所より、さらに海賊達に近い位置のコンテナの狭間に、身を滑り込ませた。そうする事で海賊達は迂闊に、ノヴァルナの元へは近付けなくなる。

「今だ!」

 この状況を見ていたキノッサが、連結機の中へ飛び込もうと、勝手に駆け出し掛けた。しかし再びその襟首を、ノヴァルナの手が背後からむんずと掴む。

「馬鹿ヤロウ!」

「ぐえ!!」

 力任せに後ろへ引き戻されるキノッサ。
 その直後、キノッサがいた位置を海賊の銃から放たれた麻痺ビームが通過した。ランが引き付けているとはいえ、コンテナの陰から飛び出せば、扉の奥に潜んだ海賊からは正面のいい的になるだけだ。

 気を失ったイェルサスと、ハッチを連れて脱出する事は、到底不可能だと分かるノヴァルナは、連結機の中から憔悴の表情でこちらを見る、二人の妹に呼び掛けた。

「行け!!」叫ぶノヴァルナ。

「でも兄上!!」とマリーナ。

 躊躇いを見せる妹達を、説得する時間はない。ノヴァルナは妹達の背後にいる、『ホロゥシュ』のモリンとヤーグマーに命じた。

「モリン!ヤーグマー!マーディンに船を出させろ!俺達に構うな!!」

「しかし…」

「おまえらまで四の五の言うな!いいから行け!!命令だ!!」

「り!了解っス!!」

 主君の命令はどんな時も絶対である事は、取り立てられた時に誓った『ホロゥシュ』である。モリンとヤーグマーはマリーナとフェアンの腕を取って、海賊船へと促した。だがフェアンは激しく抵抗して、ノヴァルナに訴える。

「いやっ!兄様っ!!」

 涙声で叫ぶフェアンに、ノヴァルナは大声でキッパリと告げた。

「おまえもウォーダの姫なら、聞き分けろ!!」

「兄様…」

 するとノヴァルナはいつもの、不敵な笑みをフェアンに見せる。

「心配すんな!!任せとけ!!」
 
「………」

 無言でマリーナがフェアンの肩に手を置く。歯を食いしばって頷いたフェアンは、ノヴァルナに気持ちの篭った視線を送ると、連結機の奥へ姿を消した。最後にマリーナも、哀しみに満ちた視線を送る。ノヴァルナは優しい目で、それを受け止めてやった。

 妹達が海賊の小型船に乗り移ると、直後に連結機の太短いパイプが、小型船側でカメラのシャッター状に閉じる。
 その周囲でガスの噴出と、小爆発のリングが発生して、強制分離した連結機を『ラーフロンデ2』の船体に残したまま、小型船は宇宙空間を滑り始めた。





「ラン!もういいぜ!!」

 マーディン達が奪った小型海賊船が、脱出を果たすのを見送ったノヴァルナは、『ラーフロンデ2』の船倉で声を響かせた。

 そう言っておいて、ノヴァルナはコンテナの陰から、両手を挙げて歩き出す。

「ちょ!殿下!いいんスか!?」

 小声で引き止めるキノッサに、ノヴァルナは「いいから、てめぇも来い」と命じた。

 すると拳銃が床に投げ出される。ランが使っていたものだ。そのランは、身を隠したのとは全く違うコンテナの陰から、ノヴァルナと同じように、両手を挙げて姿を現した。

 それを見たキノッサも、渋々両手を挙げて、ノヴァルナの隣に並んだ。

 抵抗を放棄したと判断した海賊達が、アサルトライフルを構えたまま、近付いて来る。

「全員両手を頭の上にして、床に腹這いになれ!」

 そう命じたのは、例の班長であった。その傍らでは、ハッチに撃ち倒された海賊を、仲間が助け起こしている。小口径の銃弾をボディアーマーが跳ね飛ばした反動で、軽く意識を失っていたらしい。

 ところがノヴァルナは、班長の命令に従わず、両手を降ろして腰にあてた。そして喝を入れるように、凛とした声を発する。

「控えろ!海賊ども!!!!!!」

「!!!!!!」

 そのノヴァルナの声には、音叉を打ち鳴らしたような、キーンと身を竦み上がらせる響きがあった。“人に聞かせる”威風と言っていい。

 一瞬たじろいだ海賊達の前で、ノヴァルナは、オリーブグリーンのジャンパーを脱ぎながら後ろを向く。そこに現れた赤いパーカーの背中には、ウォーダの家紋『流星揚羽蝶』―――

「おう、てめぇら!」

 首を振り向かせて、ニヤリと笑ったノヴァルナは言い放った。



「この紋所が目に入らねぇか!!」








▶第3部につづく
 
  
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