銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児

潮崎 晶

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第1話:死のうは一定

#09

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 ノヴァルナが戦っている主戦場では、傭兵の『ライカ』の唯一の生き残り、コムソー・ツーが立て続けにライフルを放っていた。操縦者は魚のような大きな目の、バイシャー星人だ。

「くそっ!くそっ!」

 罵声を口から吐き出しながら、バイシャー星人は引き金を引く。しかし蛇行しながら大きな円軌道を描く『センクウNX』には当たらない。ロックオンしているはずなのだが。

 そしてライフルには弾数に限界がある。ノヴァルナ機に執着するあまり、鳴っていた残弾アラーム音に気付いた時には、銃身内の超電磁コイルが、最後の弾丸を送り出していた。

「た、弾切れ!?」

 その弾も外れ、パイロットは慌ててバックパック下部にある、予備弾倉を取ろうと機体を操作した。その隙を狙って、ノヴァルナは『センクウNX』をほぼ直角に急変針し、一気に敵の『ライカ』に迫る。

「うあ!!」

 予備弾倉を取る動作をオートモードで入力したため、『ライカ』の傭兵はすぐに対処出来ない。廃棄機体に乗る傭兵ならろくに習熟訓練も積んでおらず、特殊な動作はマニュアル操作出来ないはず、と目算したノヴァルナの行動だった。
 だがそのノヴァルナ目掛け、下方から回り込んだ指揮官のBSHO『オロチ』が、巨大な斧のような陽電子パイクを突き上げ、突進して来た。こちらも予めノヴァルナの意図を読んだ、戦闘種族のモルンゴール星人らしい行動だ。ノヴァルナのヘルメット内に、衝突警報のアラーム音が鳴る。

「ひゅう!」

 驚きを隠すためか、あえて軽い口調で口笛に似た言葉を発すると、ノヴァルナは咄嗟に『センクウNX』を回転させた。
 バキン!と響く衝撃がコクピットを包み、体勢を変えた『センクウNX』の右肩のアーマーが、パイクの一撃に割れて砕ける。だがノヴァルナはそのまま『オロチ』をやり過ごし、当初の目標である『ライカ』との距離を詰めた。
 ただ衝撃で機体の軌道がずれ、それを修正している間に、敵の『ライカ』は弾倉交換を諦め、左腰部に懸吊した量子ブレードを作動させようとしている。

 しかしそれすらノヴァルナの素早さの前では遅い。間合いに入った『センクウNX』は、陽電子パイクを薙ぎ払う。
 その一撃は敵のBSIが量子ブレードの柄を握った右手首を斬り離し、コクピットのやや上を深くえぐった。胸部装甲を引き裂かれて起きた小爆発は、コクピットにまで及び、破片が傭兵のヘルメットの、前面透明金属を割る。
 
 コクピットの空気が裂け目から吸い出され、不運にもヘルメットが割れた傭兵は、窒息に激しくもがき苦しむ。

「はががッ!!あがッ!!ふぁがああ…」

 機内が真空になるにつれ、断末魔の絶叫は聞こえなくなり、大きな眼が特徴の魚のようなバイシャー星人の顔は減圧で、引き上げられた深海魚のように目玉が飛び出し、痙攣を起こして絶命した。
 無惨な死に方だが、それも戦場では珍しいものではない。次の瞬間にはそれ以上の死に方が、自分に訪れるかも知れないのだ。
 事実その可能性が、陽電子パイクを傭兵の機体から引き抜いたノヴァルナに、直上から襲い掛かって来た。

「ここまでだ、若君!」

 敵指揮官の操るモルンゴール製BSHOが振り下ろした、巨大な斧のような陽電子パイクに、咄嗟に反応したノヴァルナが『センクウNX』のパイクで受け止め、火花が散る。

「むおおっ!!」

 モルンゴール指揮官は野太い声と共に、力任せに『センクウNX』のパイクを絡めて奪い、弾き飛ばした。その勢いで再び上段から、第二撃をふるう。

「く!!」

 ノヴァルナに、残された武装の量子ブレードを起動する余裕はなかった。ただ素早く『センクウNX』の両腕を突き上げ、敵BSHOの陽電子パイクの柄を掴み取る事には成功する。パイクの巨大な刃は、『センクウNX』の頭部ギリギリの位置で食い止められた。
 陽電子パイクを持ち上げようとする『センクウNX』。だが出力はモルンゴール製BSHOの方が圧倒的だ。押し込まれる『センクウNX』の足元では、無重力の宇宙空間で機体位置を固定させる足場となる、重力子フィールドが砕ける度、魔法陣のような黄色い光のサークルが、二枚、三枚と一瞬現れては粉々になって消える。

「ぐく!」

 コクピットを揺さぶる激しい衝撃に、ノヴァルナは歯を食いしばった。モニター画面は両腕の間接駆動部とダンパーの過負荷が、限界に達している警告を表示している。

「このモルンゴールのBSHO、『オロチ』に力勝負を挑むとは」

 BSHO『オロチ』に乗るモルンゴール指揮官が、口元を歪めて操縦桿をさらに押し込んでいく。そうしながら全域周波数通信でノヴァルナに呼び掛けた。

「聞こえておられるか?ナグヤ=ウォーダの若君。悪いようにはせん、降伏なされよ」

 はじめは命を奪おうと考えていたモルンゴール指揮官だが、ノヴァルナの戦いぶりに感ずるところがあったようだ。
  
 返事を期待しなかった指揮官だが、予想に反し『センクウNX』は通信回線を開いて来た。ただその言い草はぶっきらぼうで、相変わらず星大名の一族らしくはない。

「あ?やなこった!」

「これはまた…捨て身の戦法も結構。だが少しは、命を大事になされよ」

 この状況で敵に説教とは、自分も酔狂なものだ…とモルンゴール指揮官は、自分の命を顧みないノヴァルナの戦い方に、自らが発した言葉を苦笑する。
 それに対しノヴァルナの方も、どこか親しげに語りかけて来た。

「気にすんな。これも『死のうは一定』ってやつだ」

「ほう、“カミヨコトバ”の古い唄の一節ですな…それが若君の人生観だと仰る?」

「おう!そういう事だ!」

 命あるものには人間も含め、全てに必ず死が訪れる…それがこの古い言葉の意味だ。そしてこの唄には続きがあるが、この若君は知って言っているのだろうか。

「ならば話はこれまで。お覚悟を!」

 世間で軽く見られているこの若者の、真なる見識に興味は尽きないが、それこそこれも定めなのだろう…モルンゴール星人指揮官は自ら考えを断ち切って、『オロチ』の重力子ドライブの出力を下方、つまりプラント衛星表面に向けて最大にした。

 これで予想されるノヴァルナ機の結末は三つ。一つ目はこのまま抵抗し、力負けして真っ二つになる。
 二つ目はノヴァルナ機が体勢を変えて受け流し、量子ブレードで反撃。だがこちらもノヴァルナ機の八十六通りの回避パターンを、追尾出来るように対応済みである。その場で旋回しようものなら、即座に構え直した陽電子パイクでひと突きだ。
 そして三つ目。抵抗も回避もせず、一旦そのまま“落下”しながら離脱。距離を置いてから反撃。だがこれもノヴァルナ機が離脱した途端、こちらも陽電子パイクを手放してノヴァルナ機を捕まえ、量子ブレードを使って両断する。

“どう動いても、若君に勝ち目はない”

 モニターに映るノヴァルナの『センクウNX』を、モルンゴール指揮官は、いかにも傭兵的な冷めた眼で見た。
 すると『センクウNX』は不意に、宇宙空間で体を支えていた重力子フィールドを喪失する。一瞬でプラント衛星に向かっての“落下”が始まった。

「三つ目を選んだか」

 とモルンゴール指揮官。一番現実的な選択と言ってよい。向かい合って組んだ二機のBSHOは、ノヴァルナ機の背後方向へ突き進み、プラント衛星外殻の景色が迫って来た。
 
 モルンゴール指揮官はプラント衛星表面との距離を測りながら、ノヴァルナ機の離脱に備え、反転重力子フィールド発生のタイミングを待った。相手が陽電子パイクから手を放した瞬間に、こちらも手を放し、反転重力子場を形成して急減速。離脱しようとするノヴァルナ機を捕らえるのだ。

 ところが『センクウNX』は離脱しない。それどころか、自分からモルンゴールの『オロチ』の腕に掴み掛かり、下方向への重力子ドライブの出力を上げた。落下速度が一気に上がる。

「なにッ!!」

 このままではニ機とも、プラント衛星に墜落だ。反射的に反転重力子フィールドを下方へ展開して、急ブレーキを掛けるモルンゴール指揮官。すると『センクウNX』はその反動を利用して、『オロチ』ごとクルリと回転、上下の位置を入れ替える。反転重力子の放出方向が上になり、さらに上になった『センクウNX』が激突の寸前、『オロチ』を突き飛ばすように、下方へ反転重力子を放出した。

“くっ!!”

 ノヴァルナの意図に気付いたモルンゴール指揮官の脳裏に、悔恨の念が沸き上がる。
 命知らずの若君も追い詰められては流石に、一番生存の可能性が高い戦法を選択したか…と考えたのも束の間、若君が選択したのは予想を超えた捨て身だったのだ。
 その直後、ニ機のBSHOは加速しながらプラント衛星に激突した。爆発は起きない。だが砕けた機体と粉々になったプラント衛星の大量の機材が、銀色の爆炎さながらに真空の宇宙に飛び散った…





 キリリと食いしばった歯を鳴らし、操縦桿を握る両腕で上体を支え、ノヴァルナは前屈みの体を起こして悪態をついた。

「くそっ…たれ」

 コクピット内は全周囲モニターのほとんどが割れ、四、五枚だけが、惑星ラゴンの青い海を映し出している。ヘルメットに響く警告音は種類が多過ぎて、まるで練習不足の下手な交響曲を聞かされている気分だ。
 軽装甲宇宙服に包まれた体は、あちこちが痛みの悲鳴を上げており、口の中に血の味がする。
 プラント衛星に敵の『オロチ』とひと塊になって激突する瞬間、腕を放した『センクウNX』は、下方へ放出していた反転重力子フィールドのブレーキをクッションにして、紙一重で完全な激突から離脱したのだった。
 だがそれでも相当な衝撃を受け、機体はボロボロの状態だ。形状こそ保ってはいるが、いつ空中分解を起こしてもおかしくはない。通常型のBSIなら砕けている。
  
 朦朧となりかける意識を堪え、ノヴァルナは機体の状況を確認した。重力子ドライブは少しなら動ける、といった程度。センサー類は逆探以外ほぼ全滅。残された唯一の武器、量子ブレードは作動不能で丸腰。いずれにせよもう戦えはしない。
 ノヴァルナは機体を操作し、全周囲モニター前面のまだ映る箇所に、プラント衛星表面を入れた。画面がモルンゴール指揮官機の『オロチ』を捉える。

 プラント衛星の精製区画に、仰向けにめり込んだ『オロチ』は手足がもげ、大部分の外殻がフレームから外れ、内部構造がほぼ剥き出しとなっていた。ただ、神話の鬼を思わせる巨大な一本角は健在で、その闘志は尽きていないように見える。

 すると低いノイズが漏れていた『センクウNX』のスピーカーから、あのモルンゴール星人指揮官の声が聞こえて来た。

「…お見事…最後まで捨て身とは…してやられました」

「うん。まだ生きてたか、おっさん…」

 それは互いにとって、驚きを伴う言葉であった。
 ノヴァルナにしてみれば、この状況で生存しているモルンゴール星人の、身体の頑強さは驚きであり、モルンゴール指揮官にとっては、勝ち誇ると思っていたノヴァルナの返事の口調に、真摯さを感じた驚きだ。

「背骨が砕けて…肺も潰れております…もはやそう長くはないでしょう…」

 自分の死期が迫っている事を、他人事のようにモルンゴール指揮官は告げた。

「そうか」

 淡々とした口調で短く応じるノヴァルナ。ただそれを聞いたモルンゴール指揮官は、薄れかけた意識の中で、ノヴァルナの言葉に己の敵に対する冷淡さとは別の、生と死に対する達観のようなものを感じ取った。

「フフフ…なるほど、『死のうは一定』でしたな…」

「そういう事だ」

 面白い若君だ…このような主君の元でなら、傭兵ではなく、銀河皇国に仕えるのも悪くなかったろう。
 意識が次第に闇に飲み込まれていく、傭兵隊長の頭には近年まで養子として育てていた、人間の子供の事が浮かぶ。

“…あやつもこの若君と同年代…もし若君と逢う事があれば…”

 すると不意にノヴァルナの方から、声が掛けられた。しかも初めて聞く、星大名の一族らしい威風が感じられる声だ。

「モルンゴールの傭兵、名を聞こう!」

 その言葉に揺さぶられたモルンゴール指揮官は一瞬、武人としての生気が甦り、カッと目を見開いて恭しく応じる。
 
「サイガンのマゴディに…ござい…ます………」

「うむ。武篇見事!」

 叩き付けるようなノヴァルナの短い言葉であった。しかしそれは涼やかな風が吹いたようで、この若者の真の姿が見いだされる。

「ありがたき…お言葉…………」

 ノヴァルナの言葉に武人の本懐を感じ、モルンゴールの傭兵隊長は、微笑んで息を引き取った。そしてそれを待っていたかのように、『オロチ』の全身をスパークが包み、爆発を起こす。
 傭兵隊長の最期を見届けたノヴァルナは、胸の内で呟いた。

“傭兵惑星サイガンか…”

 サイガンはサイガール星系第三惑星の名称で、かつてのモルンゴール恒星間帝国では主要星系だったが、今はヤヴァルト銀河皇国辺境宙域の一星系に没落している。
 旧モルンゴール帝国の軍人が多く住み、傭兵業での外貨獲得が、重要な収入源となっていると聞く。今のモルンゴール指揮官が告げた『マゴディ』という名は、本名ではなく、傭兵隊長としての商号のようなもので、代々受け継いでいくものらしい。

 そこに突然、各種警告音が騒がしいノヴァルナのヘルメット内の三次元スピーカーから、被照準警報がひときわ大きく響いた。左方向ほぼ水平からだ。
 確認するより先、反射的に操縦桿を引くノヴァルナ。重力子ジェネレーター出力の低下した『センクウNX』は、緊急回避用スラスターも噴射した。宇宙空間を後方へ機体を滑らす『センクウNX』。その回避行動で開いた空間を、高出力ビームが通過する。
 だがその急な回避行動で、機体のダメージはさらに大きくなり、操縦桿も反応しなくなった。

「チッ!」

 その時になって、ノヴァルナは射撃して来た相手を見た。ドッキングベイにいた傭兵の貨物宇宙船だ。待機していたのが、モルンゴール指揮官の戦死とこちらが動けないのを知り、仕掛けて来たのだろう。ただ船は標準タイプの恒星間貨物船で、本来なら武装などはないはずだった。

「ふん、仮装巡航艦か」

 言い捨てながら、ノヴァルナはコクピットのハッチ脇にある、手動開閉レバーに手を掛ける。命知らずの戦い方をするノヴァルナだが、そうであるがゆえにこの局面では機体を放棄してでも、生きる可能性に賭けるのだ。
 だがノヴァルナがハッチを開放する前に、仮装巡航艦は後方下から何者かに駆動部を狙撃されて機能を麻痺する。推力と爆発の威力が相殺し、敵は残った慣性であらぬ方向へ漂い始めた………



▶#10につづく
 
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