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第21話:華麗なる円舞曲
#00
しおりを挟むそれがさらに大きな嵐を呼ぶものになるのか、ささやかな歴史の一片で終わるものになるのかは分からなかった。ただそれがイェルサス=トクルガルにとって、自分の運命を切り開くための次の一歩である事だけは確かだ。
皇国暦1555年12月22日。ミ・ガーワ宙域/オ・ワーリ宙域国境付近、テラベル星系第六惑星公転軌道上―――
艦橋内中央の戦術状況ホログラムが、待っていた敵艦隊の出現を表示していた。テラベル星系を領有する独立管領、ソルジェキ家の恒星間打撃艦隊と星系防衛艦隊の混成部隊。合計六十隻余りの敵艦隊は、自分達トクルガル家遠征艦隊の四十三隻より多い。
“簡単な任務のはずなんだ…”
戦隊ごとに分離し、戦闘行動に移る敵艦隊の様子を見据え、イェルサスは自分に言い聞かせた。ミ・ガーワ宙域内でウォーダ家と通じるソルジェキ家。ウォーダ家中がノヴァルナのナグヤ家当主継承で大きく混乱している今、これを討伐し、再びイマーガラ家の支配下に置く事が、イェルサスがイマーガラ家当主ギィゲルト・ジヴ=イマーガラから与えられた任務…つまりは初陣の内容である。
「ご心配召さるな。ご当主」
とイェルサスの不安を見抜たらしく脇から声を掛けて来たのは、総参謀長でイェルサスのトクルガル家当主継承と合わせて筆頭家老となった、テュガル=サークルツだった。その隣にはテュガルの息子、ターダル・ツェーグ=サークルツが立っている。
「我等は皆、実戦経験も豊富…それが新たなご当主に良い所を見せようと、張り切っております。戦いは我等にお任せ頂き、ご当主におかれましては、まずは戦場の空気に触れて頂きたく存じます」
「あ…うん。宜しく頼む」
そう言ってイェルサスは居心地が悪そうに、司令官席で座り直した。小さくため息をついて内心で呟く。いまだに軍装も似合っていない気がしてしょうがない。
“ノヴァルナ様は初陣から陣頭指揮を執り、BSHOで出撃までしたって話なのに…僕には何も出来ないんだな―――”
だけど…それでも…ただのお飾りでも、イマーガラ家の人質同然の身であっても、今この時だけは司令官らしくあらねばならない。タイミングを見計らってテュガルが耳打ちすると、イェルサスはその通りの言葉を決然とした調子で口から発する。
「全艦、撃ち方はじめ!」
新当主の命令で、トクルガル艦隊の各艦は一斉に火蓋を切った………
▶#01につづく
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