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第15話:風雲児の帰還
#03
しおりを挟む『デラルガート』は工作艦であって、戦闘用ではない。そのため長距離センサーの性能もそれほど高くはなく、ノヴァルナから告げられてようやく回避行動に入る。するとアッシナ軍本陣親衛艦隊に属する戦艦が数隻、砲撃を開始した。標的は『デラルガート』だ。
赤い曳光ビームを含む主砲射撃が幾本も迫り、『デラルガート』は間一髪、それらの回避に成功する。今の『デラルガート』は先の戦闘でエネルギーシールドが張れなくなっており、戦艦の主砲を一発でも喰らえばひとたまりもない状態だ。
そしてノヴァルナとノアには『デラルガート』の救援に向かっている余裕がなかった。ノアの『サイウンCN』にノヴァルナの『センクウNX』が合流したところに、敵艦隊から発進してきたBSI部隊が距離を詰めて来たのである。8機のBSIが、さあっ!と花開くように大きく展開し、ノヴァルナとノアを包囲する。機種はセターク家から供与されたという『ヤヨイ』ではなくアッシナ家オリジナルの『シノノメ』だが、個々に僅かな仕様の違いがあった。
“えらく動きがいい!”
ノヴァルナは仕様の違いより、その動きの良さで瞬時に新手の素性を見抜いて、ノアに警告する。
「ノア、注意しろ。コイツら8機とも親衛隊仕様機だ!」
「了解!」
もし相手が通常の量産型BSIユニット8機であるなら、攻撃艇12機を加えたところで、ノヴァルナとノアのBSHOが2機いれば、不覚を取らない限りは充分に勝利できる数である。
しかしそれが親衛隊仕様機となれば話は別だ。量産型BSIがベースになっていているためスペック的には限界があるものの、意識と接続したNNLのサイバーリンク深度は、搭乗者が固定されている事から、BSHOに近いレベルに達しているのだ。つまり、“8機もの親衛隊仕様機に囲まれ、討ち取られる危機に陥った”と、表現するのが正しい状況となったのであった。
散開してノヴァルナとノアを取り囲んだ8機の親衛隊仕様機『シノノメSS』は、一斉に超電磁ライフルを放って来る。二手に分かれ、その集中する射撃点から脱したノヴァルナとノア。するとそこに、包囲態勢の外から飛び込んで来た12機の宇宙攻撃艇が6機ずつに分かれ、ノヴァルナとノアを同時に襲撃した。斜めに編隊を組んだ攻撃艇が次々に誘導弾を発射し、ビーム砲を撃ちかける。
その攻撃艇部隊に対し、ノヴァルナは機体のバックパック下部に装備された、金属ガス弾投射器を作動させて球体の金属ガス弾を二個射出した。それと同時に、重力子の黄色い光のリングを背後に輝かせて回避行動を取りつつ、航過しようとする攻撃艇の先頭に超電磁ライフルを放つ。
二個の金属ガス弾が破裂し、高熱を帯びた微細な金属片―――『センクウNX』の外殻と同じ成分の金属片が大量に含まれたガスが広がり、誘導弾はそちらに突っ込んで『センクウNX』を見失った。そしてノヴァルナからの反撃を受けた攻撃艇は爆発を起こし、先頭を進んでいたその機体の爆発に巻き込まれ、後続の一機も大破して、慣性であらぬ方向へ飛ばされていく。
だが油断は出来ない。包囲していた『シノノメSS』が4機、急速に間合いを詰めて『センクウNX』に白兵戦を挑んで来た。ノヴァルナは一番接近している敵に、右手に握る超電磁ライフルを放って牽制し、左手でポジトロンパイクを握る。最接近していた一機が銃弾の回避で遅れると、次の一機がパイクを構えて突撃をかけた。
ロックオン警報と近接警戒警報音が騒がしいコクピットで、ノヴァルナは素早く、かつ小刻みに操縦桿とフットペダルを動かす。機体の姿勢制御はNNLで意識と連動し、敵の斬撃をパイク同士で打ち防ぎながら、背後から襲いかかろうとする三機目に向けて、超電磁ライフルを放った。
その三機目が驚いて緊急回避すると、四機目がすでにポジトロンパイクの斬撃を『センクウNX』に仕掛けている。
「チッ!」
ノヴァルナは舌打ちしながら操縦桿を強く引き、二機目の敵とポジトロンパイクを斬り結んだまま旋回、位置を入れ替わって四機目のポジトロンパイクも合わせて、自らのポジトロンパイクで防いだ。次の瞬間、『センクウNX』のバックパックが重力子リングの黄色い光を、一気に三つ重ねて発生させ、力任せに二機の敵をまとめて跳ねのける。
しかし『センクウNX』のコクピットに響く警告音は鳴り止まない。銃撃で牽制した一機目が機体を立て直し、急襲して来たのだ。跳ねのけた二機の敵に超電磁ライフルを向け、トリガーを引こうとしていたノヴァルナは咄嗟に機体を翻し、闘牛士が牛の突進をかわすように、一機目の突撃をやり過ごす。そして航過直後の一機目に向け、超電磁ライフルを放ったが、相手も素早く機体をひねらせてその一撃から逃れた。
▶#04につづく
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