銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児

潮崎 晶

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第15話:風雲児の帰還

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 白い雪が舞う大地、それは一見すると、ノヴァルナとノアが共に過ごした辺境の惑星、アデロンを思い起こさせる………

 だがアデロンには―――特にノヴァルナとノアが暮らしていた北東部には、ほとんど樹木が生えていない。その生えていないはずの樹木が多数、大地を覆うこの地はアデロンではなくノヴァルナの故郷、オ・ワーリ=シーモア星系第四惑星ラゴンだ。

 ただノヴァルナの領地ナグヤが北半球で秋の訪れを迎えているのに対し、南半球にあたるこの地は冬の終わり…おそらく最後の降雪であった。

 その雪を被った森林を抜け、春が近いことを示す緑が芽吹き始めた、草原を流れる川を渡ろうとした兵員輸送車が火柱に巻き込まれて爆発する。
 視線を移すと爆炎はその一つではなく、草原の至る所から立ち上っていた。それと共に破壊された兵員輸送車と、戦車が複数。さらにウォーダ家量産型BSI『シデン』の機体も倒れている。

 それらを攻撃しているBSIも『シデン』…だがこちらは量産型ではなく、個々に多少の仕様の違いが見られる親衛隊仕様の『シデンSC』20機だった。ノヴァルナの親衛隊、『ホロウシュ』である。
 彼等は現在、ノヴァルナの三人のクローン猶子が住むフルンタール城を狙って上陸してきた敵―――同じ一族のキオ・スー=ウォーダ家筆頭家老、ダイ・ゼン=サーガイ率いる地上部隊と交戦していた。指揮を執るのは『ホロウシュ』筆頭のトゥ・シェイ=マーディンである。

「一斉射撃。キオ・スーの者共を近づけさせるな!」

 『ホロウシュ』へ叫ぶマーディンに、上陸部隊を洋上の防空護衛艦から指揮するダイ・ゼンが、通信で怒号を浴びせる。

「貴様ら、宗家の命に反した上のこの暴挙! ただで済むと思っているのか!!」

 ダイ・ゼンの言葉にマーディンは敢然と反論した。

「我等はノヴァルナ殿下と、その庶子をお守りする盾なる『ホロウシュ』! 危害を加えようとする者は、お味方であろうと斬る!」

「我等はラゴン防衛のために参ったと申したはずだぞ!!」とダイ・ゼン。

「寝言は寝て申されよ、ダイ・ゼン殿。即刻、お引き取りなさるがよい!!」

 それを聞いた配下のヤーグマーやモリン達が小声で呟く。

「マーディン様かっけー!」

「まるでノヴァルナ殿下みてーだぜ!」

 その呟きがスピーカーに届き、マーディンはいまだ帰らぬ主君の顔を思い浮かべて、苦く微笑んだ。



▶#01につづく
 
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