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第14話:天下御免のアイラブユー
#00
しおりを挟む皇国暦1555年9月20日―――
ヤヴァルト銀河皇国の心臓部である、ヤヴァルト宙域。シグシーマ銀河系の中心近くでもあるために恒星が密集し、星々の輝きが宇宙を埋め尽くしているようにすら見える。銀河の中心には超巨大ブラックホールが存在しているのだが、無数の星の輝きがその暗黒洞を覆い隠して、ここからは見つけ出せない。
その光に満ちた星の海を臨み、銀河皇国軽巡航艦『オルジェルガ』は、3隻の駆逐艦を率いて国境の警戒任務に当たっていた。領域警備用の無人哨戒プローブ網のチェックと、哨戒網そのものをすり抜けて来る敵対勢力を監視するためである。
「定点観測44856125S、異常なし」
哨戒プローブとデータリンクした『オルジェルガ』の哨戒兵が、読み上げた哨戒プローブの記録データをチェックし、記録係をしている仲間の哨戒兵に告げた。
「了解。448…ああ~、異常なしっと」
復唱を端折る口調も気だるげ…この兵の士気の低さが露呈する。二人とも徴用兵の上に、まだ若かった。そして若いのは兵士だけでなく、彼等が乗る『オルジェルガ』も、就役して二週間も経たない新造艦だ。同じ作業ばかりで飽きて来た若い兵士は、つい無駄口を始めてしまう。
「なぁ。ホントにこんな事ばっか、繰り返さなきゃならないのか?」
「潜宙艦…高々度ステルス艦だっけ? あれがすり抜けた場合、記録はされてても、電子妨害で哨戒情報が送られないケースがあるんだとか、言ってたな」
「いや。だからって、銀河中を人類が飛び回る今の時代に、こんな作業―――」
とその時、データチェックしていた哨戒プローブが何かを探知したらしく、警報情報の送信をいきなり開始した。未熟な二人は慌てふためく。
「な、なんだこれ! どうすりゃいい!?」
「俺が知るかよ!」
そんな二人が乗る『オルジェルガ』の艦橋でも、長距離センサーが非常事態を告げていた。
「探知方位062マイナス12! 反応多数! 艦隊と思われます」
「多数とはどの程度か!?」
これも若いオペレーターの報告に、艦長が強い口調で尋ねる。
「は…八百隻以上!」
「なに!!」
さらに別のオペレーター。
「艦隊の家紋確認! 『銀河に五つ星』…アーワーガ宙域星大名、ナーグ・ヨッグ=ミョルジの軍勢です!!」
それはミョルジ家による星帥皇室への挑戦の始まりであった………
▶#01につづく
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