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第13話:球状星団の戦雲
#00
しおりを挟む皇都惑星キヨウ衛星軌道上、関白府『ジュラーク・デーン』―――
皇国暦1589年のその日、今年で51歳になったヤヴァルト銀河皇国関白ノヴァルナ・ダン=ウォーダは上機嫌であった。宿敵の一つ、大物星大名モーリー家の当主テルモルドゥが臣従を申し出て来たからだ。
銀河皇国の事実上の支配者である象徴、白銀に輝く超巨大宇宙要塞『ジュラーク・デーン』を一望できる、全ての壁が透明金属で出来た天守最上部の執務室、関白ノヴァルナは悠然と椅子に座り、重臣ヘイディン・エッジ=ハンスヴェルの報告を受けていた。
モーリー家が臣従するという事は、西銀河辺境の有力星大名シーマズール家への備えが出来る事を意味する。来るべきタ・クェルダ家、ウェルズーギ家、ホウ・ジェン家の新三国同盟軍との決戦に集中できるというものだ。
「…報告は以上にございます」
ハンスヴェルは少々芝居がかった恭しさで、関白ノヴァルナに頭を下げる。すると関白は「うむ」と応じ、砕けた口調で話を脱線させた。
「で、サル。また一段とハゲて来たか?」
不躾にそう言われたハンスヴェルは急に人懐っこい笑顔を見せ、「いやぁ~…」と頭髪の生え際を手で撫でる。
「モーリー殿を屈させるのに、長年苦労しましたからな。おかげでこの有様で」
「ふん。ミディルツの奴といい勝負になったな。トゥ・キーツ=キノッサを名乗っていた頃は、そんなになるとは思わなかったが」
「まったくの事で」
頭を掻いたハンスヴェルは話題を戻した。
「ですがモーリー殿も抜け目がない。解除キーの仕掛けにいち早く気付くとは」
「ああ。気付いてぬけぬけと臣従して来るところがな。おかげでそれなりの待遇を与えてやらねばならなくなった」
「しかし関白様も相変わらずお人が悪いですな。折角奪った解除キーがとんでもない毒入りだと知っても、全てはあとの祭り…」
「“相変わらず”だけ余計だ」
「新三国同盟はどう出るでしょうな? 解除キーの裏を知っても攻勢に出るでしょうか?…最新シミュレーションでも、決戦場となるのはセティ・ガルヴァ星雲のままですが」
「さてな」
「そう言えばムツルー宙域でも、ダンティス家が解除キーを奪取したようですが…」
「辺境宙域の事はいい。生き残った者を安堵する…それだけだ」
そう言って関白ノヴァルナは、若かりし頃によく見せた不敵な笑みを浮かべた………
▶#01につづく
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