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第15話:風雲児VS星帥皇

#06

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 皇都惑星キヨウを襲って来る略奪集団は、キヨウのあるヤヴァルト宙域や近隣の宙域から侵入して来た、敗残兵と植民星系のならず者、そして宇宙海賊などが入り混じった者達であり、その一部は『アクレイド傭兵団』の、最低階層に登録すらしていると言われている。
 またそれだけでなく、略奪集団の中には現在事実上キヨウを支配している、星大名ミョルジ家の兵士までもが、身なりを略奪集団に似せて参加しているという、噂までも流れていた。

 彼等の使用している武装は、裏ルートや自分達で、戦場跡から回収・修復したものが大半で、船もツギハギだらけの軍用輸送艦や、軽巡航艦、民間の貨物船ばかりである。またアジトは近隣の星系に泊地を作ったり、植民惑星の無人地帯に建設したりしていた。

 キヨウの航路管理局が警報を出した、今回の略奪集団の戦力は、違法改造で武装をアップした貨物船四隻と、BSIユニットを搭載していると思われる軍用輸送艦が三隻と、かなりの規模である。

 素人感丸出しの不細工な梯団を組んだ略奪集団の船隊は、これ見よがしに、外宇宙向けの公用航路を通って、惑星キヨウへ接近していた。
 ミョルジ家が事実上の支配者となって以来、星系防衛艦隊などはヤヴァルト星系に存在せず、治安維持を行うはずのミョルジ家は、ノアが先にこの星系を訪れた時がそうであったように、キヨウの貴族などの有力者から金銭を伴う護衛依頼があった場合のみ、部隊が出動するような状況だからだ。

 そういうわけで今回も当然のように、ミョルジ家の部隊が迎撃に出る事は無い。

 我がもの顔でキヨウの衛星軌道へ侵入して来る略奪集団の船隊に、航路管理局は無許可である事と、ただちに退去するよう通信を入れる。荒廃・退廃した皇都惑星の中で、航路管理局は正しく機能している、数少ない組織の一つだった。しかしそんな管理局の訴えも、略奪集団が聞き入れるはずも無い。停船し、船底の扉を開き始める。BSIユニットを降下させようとしているのだ。

「クソっ! 毎回毎回、好き勝手して!!」

 管制室で状況を見ている管制官の一人が、コントロールパネルを拳で殴りつけて口惜しがる。

「スペースデブリ破壊用のビーム衛星で、攻撃してみるか?」

「やめとけ。また破壊されるだけだ」

「クソッ!」

 その時、管制室中央のオペレーションホログラムが、キヨウへ真っ直ぐ接近して来る、一隻の宇宙船の反応を表示し始めた。

「なんだこの船は?」

「略奪集団の警報を聞いていないのか?」

 ざわめく管制官達。表示された船の名は勿論、『クォルガルード』である。
 
 航路管理局の管制官は、『クォルガルード』の登録データを照会しながら、全周波数帯で呼び掛けた。

「こちらキヨウ航路管理局。接近中の輸送艦?…ん、なんだこの艦種?…戦闘輸送艦?…『クォルガルード』。現在、キヨウ衛星軌道上には、略奪集団の船隊が不法侵入しており、宇宙航路はすべて封鎖中だ。危険につき、引き返すよう要請する。聞こえているか『クォルガルード』―――」

 するとその通信に、叩きつけるような若者の声が応答して来る。声の主は言うまでもなくノヴァルナだ。

「こちら『クォルガルード』。これよりキヨウ衛星軌道上に入り、略奪集団を排除する。奴等の正確な位置を送れ!」

 思いがけない返答に、管制官は眉をひそめた。

「本気か?『クォルガルード』。一隻で戦うのは危険だぞ」

「いいから任せろ。データ送信急げ!」



 『クォルガルード』のBSI格納庫から、航路管理局と通信のやり取りをしていたノヴァルナは、通信ホログラムを消して回線を艦橋へ返すと、後ろに控えていた『ホロウシュ』のハッチに命じる。

「すぐに出るぞ。準備しろ」

 しかしそれに対するハッチの表情は、戸惑いを隠せない。

「すぐに、と申されましても…私の機体は陸戦仕様に変換するのに、時間が必要となりますが」

 ハッチの『シデンSC』は親衛隊仕様のカスタム機ではあるが、量産型機の延長線上にある機体のため、陸上戦闘を行う場合は脚部を中心とした、換装と調整が必要となる。そのためノヴァルナ専用の完全カスタムメイド機、BSHO『センクウNX』のように、簡単な調整で即座に出られるというものではない。だがノヴァルナの返答は、そんな事は百も承知だと言わんばかりの口調だった。

「んなもん、格闘戦をやらなきゃどうって事ねーだろ。おまえは少し離れた位置に降りて、超電磁ライフルの援護射撃に徹しろや」

「は…はぁ…」

 言い出したら聞かない主君の性格を知るハッチは、諦めたような声で了解する。さらにノヴァルナは、大昔のスマートフォンを思わせる小振りな通信ホログラムを立ち上げて、電話するような仕草でササーラに連絡を入れた。

「ササーラ。『ホロウシュ』と艦の保安科員をシャトルで降下させる。武装させて略奪集団の兵との、銃撃戦に備えさせろ」

 通信ホログラムの向こうでササーラが「御意」と応じると、ノヴァルナはホログラムを消し、格納庫にいる整備兵達に大きな声で命じる。

「おおい! 出撃すっから、誰か俺とハッチのパイロットスーツを頼まぁ!!」




▶#07につづく
 
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