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第14話:死線を超える風雲児
#00
しおりを挟むヤヴァルト銀河皇国中央行政府、『ゴーショ・ウルム』内―――
直径10キロはある、超巨大な算盤の玉のような姿をした『ゴーショ・ウルム』の最外縁部にある多くの展望室。その一室に集まる数人の貴族。銀河皇国の貴族階級の中でも最上位に位置する彼等は、皇国の行政を司り、政策を決定し、全銀河皇国のNNL(ニューロネットライン)中枢部に、星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガと共にサイバーリンクする資格を得ていた。
だがその中央行政府の実権は、ナーグ・ヨッグを当主とするミョルジ家に握られた今、彼等は何の権限も持たないに等しい。テルーザがミョルジ家と和解した際について来たので、荘園植民星系からの収入で生活費を賄う事を条件に、存続を許された…そんな程度である。
「陛下は?」
恰幅のいい一人の貴族が尋ねる。それに対し、展望窓の外に広がる海原へ首を向けた、初老の別の貴族が応じる。
「また御自ら、盗賊退治に出かけられた」
「相も変わらず物好きな事よ…」
豪奢な衣装が重そうにも見える痩身の貴族がそう漏らすと、待っていたかのように各々が口を開き始めた。
「だが皇都のこの荒れよう…ミョルジ家の者共め」
「聞けば、主力部隊はヤヴァルト宙域を放置して、アーワーガへ戻った、と言うではないか」
「これでは何のために、皇都へ戻ったのか分からぬ」
「奴等を追い出す手立てを、早ぅ打たねば…」
すると最初にテルーザの居場所を尋ねた恰幅のいい貴族が、我が意を得たりとばかりに、「…実はその事についてだが―――」と切り出した。そして一同が注目する中、重々しい口調で告げる。
「過日、イマーガラ家のギィゲルト殿より返事があった」
「………」
無言で次の言葉を待つ貴族達。
「ギィゲルト・ジヴ=イマーガラ殿におかれては、我等が要請を受諾。国内とミ・ガーワ宙域の状況が落ち着き次第、必ずや軍団を率いて上洛。ミョルジ家を排し、皇都とヤヴァルト宙域に平和と安定を取り戻さんとす…との事だ」
「おお!」
「それはまことか!?」
「あの大々名のイマーガラ家が、キヨウを目指して!」
感嘆の言葉をそれぞれに上げる貴族達。星帥皇室の血統を持ち、トーミ、スルガルムに次いで、今や事実上のミ・ガーワ宙域まで支配するようになった、イマーガラ家の上洛は、皇国再興を目指す彼等の希望の星である。それが動くとなると、感嘆の声を上げても当然だった。
「だが焦ってはいかん。ミ・ガーワ宙域支配の安定…あと二年、三年は、かかるやもしれんぞ」
もたらされた朗報に貴族達は、当然だという顔で大きく頷いた………
▶#01につづく
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