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第2話:混迷は裏切りとともに

#00

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 ノヴァルナ達の住む惑星ラゴンは、ヤヴァルト銀河皇国の皇都惑星キヨウと、自転周期に公転周期、さらに星帥皇の宮城があるゴーショ地方は、季節までほぼ同調していた。

 その宮城―――直径約10キロにも及ぶ巨大な円盤状構造体の、ゴーショ・ウルム内に幾つか設けられた空中庭園の一つ、そこに若き星帥皇テルーザ・シスラウェラ=アスルーガがいる。

 空中庭園は幅が五百メートルはある半円形で、なだらかな凹凸のある芝生と、錦鯉に似た魚が泳ぐ池、そして満開の桜の木が数多く植えられていた。

 うららかな陽気のもと、豪奢な衣装を着て庭園を歩くテルーザの周りには、五人の若い女性が同行する。いずれも息を呑むほどの美女だった。舞い散る桜の花びらの中でテルーザが発した言葉に、五人の美女は軽やかな笑い声を上げている。

 するとテルーザは、自分が向かおうとしていた小高い丘の上に、一人の男が反対側から上って来た事に気付いた。それが誰であるか確認したテルーザは、「済まないが…」と美女達に席を外すように告げる。彼女らが立ち去るとテルーザは男に歩み寄り、その名を呼んだ。

「ナクナゴン卿、皇都に戻ったか?」

 男はゲイラ・ナクナゴン=ヤーシナ。ノヴァルナの父ヒディラスの葬儀や、ノヴァルナとドゥ・ザン=サイドゥの会見の場にもいた、“漫遊貴族”とも呼ばれる、旅好きの皇国貴族である。ゲイラはテルーザに恭しくお辞儀をして応じた。

「昨夜の便で着きましてございます」

「半年ぶりほどであったか?」

「はい」

 そしてゲイラは去っていく美女達の後ろ姿に視線を遣り、少し軽い口調で尋ねる。

「随分とお美しい方々ですな?」

 それに対してテルーザは、苦笑を浮かべて言い放った。

「ああ。ナーグ・ヨッグ=ミョルジが当てがって来たのだ。傀儡は政治に首を突っ込まずに、女と遊んでいろ…という事らしい」

 自分の立場を皮肉を交えて口にした若き星帥皇に、ゲイラも苦笑いになる。

「それで…どうであった、今の星大名達は? やはり近隣で味方として有力なのは、ロッガ家やイマーガラ家辺りか?」

 将来的に再びミョルジ家と敵対する事になった場合を考え、テルーザはゲイラが旅で得た感触を訊きたいらしい。その問いにゲイラはニコリとして告げた。

「それより面白い御仁ごじんがオ・ワーリにおりまして、名をノヴァルナ様と―――」




▶#01につづく
 
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