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第11話:我、其を求めたり
#14
しおりを挟むメイアとマイアはこと戦いに関しては容赦がない。
瞬く間に三機を仲間を失い、“これはもしや、敵を侮っていたのでは…”と、後悔し始めた傭兵の乗る四機に、双子姉妹はさらなる追い討ちを掛ける。まず一機目の量産型『ミツルギ』に、左右両側から上下に交差するようにすれ違い、逃げ場を奪った状態でポジトロンパイクの斬撃を浴びせる。
そこからメイアは機体を翻すや否や、超電磁ライフルを一連射。背後から奇襲をかけようとしていた二機目の量産型『サギリ』を、超電磁ライフルで仕留めた。
マイアの方は一機目を撃破した位置からまるで稲妻のような高速機動を見せ、三機目となる量産型『ミツルギ』に攻撃を仕掛ける。その相手は、咄嗟にポジトロンパイクを構えて、一度は斬撃を受け止めた。しかしこれはマイアの思惑通りの行動だ。そこからスルリスルリと自分の『ライカSS』を回転させて、敵BSIの右脇腹を大きく切り裂いた。
さらに三機目の爆発の閃光を背後に、マイアは逃走を図った四機目に超電磁ライフルを単発で、立て続けに発射する。四機目となる量産型『ミツルギ』は、不規則軌道で銃撃を回避していたが、別方向からメイアの狙撃を受けて爆散した。そして自分達が排除すべき敵を全て撃退した双子姉妹は、三機の親衛隊仕様BSIユニットと戦っている、ノアのもとへ向かったのである。
そのノアは、三機のBSIユニットに纏わりつかれながらも、ノヴァルナの援護に向かっていた。傭兵団の機体は親衛隊仕様の『ミツルギCC』が一機。同じく親衛隊仕様の『サギリMX』が二機。しきりに超電磁ライフルを撃って、ノアの針路を妨害して来る。これに対してノアは、応戦せずに回避に徹していた。瞬く間に飛び去ってしまった、ノヴァルナのあとを追うのを最優先にしていたからだ。
「くそっ!! 当たらんぞ!!」
「掠りもせん!!」
ノアの回避能力の高さに、悪態をつく傭兵団のパイロット達。一機の『サギリMX』が、空になった弾倉を交換する。
「ヤツの正面に出て、撃つしかないぞ」
「無茶言うな。向こうはBSHOだぞ。ついていくので精一杯だ」
「とにかくお前達は撃ち続けろ。俺が接近戦で仕掛ける!」
『ミツルギCC』に乗るパイロットが、そう言ってスロットルを全開にする。こちらの機体は旧式の『サギリMX』より、ジェネレーター出力が幾分高い。
二機の『サギリMX』の牽制射撃の間を縫って、自分に接近して来る『ミツルギCC』を近接警戒センサーで視認したノアは、苛立たしげに「もう…」と呟く。
ノアは『サイウンCN』の加速を続けながら、幾つかの近接戦闘用のサブシステムを立ち上げた。ポジトロンパイクを起動すると、格闘戦自動照準システムも同時に立ち上がる。その間に戦術状況ホログラムが敵機のデータを表示する。
接近して来るBSIユニットは、銀河皇国軍その他で採用・配備されている、量産型『BFBー45ミツルギ』の親衛隊仕様、『BFCー75ミツルギCC』だ。おそらく銀河皇国で一番機体数が多いBSI、『ミツルギ』の親衛隊仕様機。常任パイロットではないノアでも、機体性能は充分に把握出来ている。
“時間は掛けてられない。一撃で仕留めないと…”
ノアは『サイウンCN』のバックパックのウエポンラックに固定した、ポジトロンパイクを掴み取るタイミングを見計らった。二機の『サギリMX』は離れた位置から、しきりに牽制射撃を行って来るが、照準がパターン化しており、正直、下手である。パイロットとしての天賦の才は、ノヴァルナと互角かそれ以上のノアであれば、油断さえしなければ当たりはしない。
そこにようやく距離を詰めて来た『ミツルギCC』が、ポジトロンパイクを構えて斬りかかろうとする。
「いくぞ!」と『ミツルギCC』のパイロット。
だが距離が詰まれば、傭兵側の牽制射撃も止まる。彼等からすれば僅かな時間であったが、タイミングを見計らっていたノアからすれば充分な時間だ。
「ぬあああああ!」
緊張からか無駄に大きな声で叫ぶ敵パイロットが、『ミツルギCC』のポジトロンパイクを上段から振るう。しかしカウンターで放つ『サイウンCN』のポジトロンパイクの方が数段早い。
「邪魔しないでっ!!」
三つの斬撃をひとまとめにしたノアの早業で、傭兵の『ミツルギCC』は、四肢をバラバラに切り離された。戦闘力を失った敵機を放置し、『サイウンCN』は宇宙空間で停止。ノヴァルナの援護を開始するため、武装を超電磁ライフルに切り替える。
そして放置された『ミツルギCC』のパイロットは、命があった分、むしろ幸運な方だった。牽制射撃を行っていた二機の『サギリMX』は、今しがたの戦闘で敵を排除して駆けつけて来た、カレンガミノ姉妹による思わぬ方向からの銃撃によって、粉々に砕け散ったからである。
多少の距離はあるものの、狙撃の諸元を超電磁ライフルに入力したノアは、通信機に向かって強い口調で告げた。
「下がって。ノヴァルナ!」
▶#15につづく
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