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第11話:我、其を求めたり

#02

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 ノヴァルナが高速クルーザーで、バイオノイド:エルヴィスがいるBSD基地へ向かっているその時、自治星系ザーカ・イーの第三惑星ラグードにある、イーマイア造船本社を訪れているキノッサは、自分の発言に内心で冷や汗をかいていた。

 向かい側のソファーに座るイーマイア造船代表取締役のソークンが、キノッサが今しがた口にした言葉を繰り返して確かめる。

「ほう、資金援助…つまりは、献上金を用意せよ、と」

「さようです」

 キノッサは緊張を悟られないよう、落ち着いた口調で言葉を返した。

「ジョシュア陛下が新たな星帥皇に即位され、銀河皇国は立て直しの時代を迎えようとしております。しかしながら正直な話、先立つものが足りぬ状況で、ここは一つ、ザーカ・イーの経済界の重鎮方を頼らせて頂こうと」

 ソークン=イーマイアはイーマイア造船の代表取締役だけでなく、ザーカ・イー行政評議会の会頭をも務めている。つまり一企業…と言ってもイーマイア造船は、シグシーマ銀河系全体に販売網を持つ超巨大企業だが、一企業の会頭が一つの植民星系を運営していた。
 これはザーカ・イー星系の特殊性を表すもので、この星系の行政を司っているのは政治家ではなく、銀河系規模の超巨大企業十五社の長が行政評議会を構成。彼等の協議によって政治が行われているのだが、評議会員の順位は、各々が代表を務める企業の売上高で決定されるのである。そしてイーマイア造船は二十八年連続で、最高額の売上を計上していたのだ。

 ソークンはキノッサの説明に、余裕と苦笑いを混ぜた表情を浮かべて応じる。

「それは些か詭弁が過ぎる、というものではありませんかな? キノッサ様」

「いえいえ。そんな、滅相もない」

 キノッサも努めて平静に言葉を返す。そこにソークンがさらに問い質した。

「ノヴァルナ様はオ・ワーリの統一を果たされ、ミノネリラ宙域も手に入れられたではありませんか。星帥皇室援助の資金など、事欠かないと思いますが?」

 これに対し、キノッサは苦笑して告げる。

「だと有難いのですが、オ・ワーリ宙域の統一すぐに、イマーガラ家の侵攻を受けまして、多額の資金を消費。その後もヴァルキス=ウォーダ様のご謀叛…ミノネリラ宙域進攻と、財政を圧迫する事態が重なりまして。そして今回のジョシュア陛下を奉じての上洛…もはや国庫は空も同然。お恥ずかしい限りにございます」

 キノッサの言いように、ソークンは「それでも、二宙域分の財政があれば…」と言いかけた。それを遮るキノッサ。打って変わっての真顔だ。

「ノヴァルナ様は、民に負担を強いる事を、好んでおられません」
 


▶#03につづく
 
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