銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶

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第5話:ミノネリラ征服

#15

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 ノアの『サイウンCN』と刃をごうした“02”は、回避運動の捻り込みを加えて距離を取ろうとする。間合いが開く事でライフルによる銃撃に備えた、技量の高いパイロットならではの動きだ。
 だが技量から言えば、ノアとカレンガミノ姉妹も相当なものである。敵機が捻り込みを掛けた先に、メイアが回り込んで射撃。マイアはメイアの背後について、援護しようとする別の敵機に銃弾を浴びせ、近寄らせない。メイアの射撃もかろうじて回避した“02”だったが、今度は咄嗟の行動で、動きが直線的になった一瞬を突き、『サイウンCN』が再び放った銃撃で、胸部から上を破壊された。

「押されているだと!?」

 巧妙な機動で瞬く間に、二機の配下を戦闘不能に陥れたノア達に、サキュラスは改めて脅威を感じる。こちらも連携を使っているのだが、ノアと二機の配下の連携が、それを上回っているのだ。あの三機を排除しなければ、“輿入れ艦隊”への対応は難しい。

「全機で連携攻撃を仕掛ける。3‐3‐2だ!」

 サキュラスの指示に『ミツルギCCC』は三機で二組、二機で一組に分かれ、三方向からノアのマーメイド小隊に迫った。サキュラスは配下一人と組む二機チームを組んで、ノアの『サイウンCN』を狙う。まず三機チームでカレンガミノ姉妹の機体を一機ずつ片づけ、そのあとで『サイウンCN』を撃破する作戦だ。サキュラスともう一機の目的は、ノアに僚機を支援させないための牽制である。

 だがこれは判断としては甘かった。いや、カレンガミノ双子姉妹の実力を見誤っていた。

 メイアとマイアの『ライカSS』を、それぞれ三機の『ミツルギCCC』が取り囲んで、分断しようとしたのだが、これが切り離せないのだ。
 二機でピタリと並んだ『ライカSS』は、全く同じ動きで、一つの目標を銃撃したかと思えば前後に機体を翻し、隙を突こうとした別の敵機にトリガーを引く。どの方向から狙っても銃撃して来る姉妹に、敵が戸惑いを見せた直後、メイアとマイアは一転、二手に分かれて猛ダッシュ、敵の真ん中に飛び込んで行った。

「!!!!」

 『ライカSS』の速度に驚いた敵は、咄嗟にライフルを連射する。しかし小刻みなランダムムーブを加えて、間合いを詰めて来る姉妹には当たらない。正対する位置となった『ミツルギCCC』は、ポジトロンパイクを構えて迎え撃つ態勢だ。ところが『ライカSS』は、想定より圧倒的に速かった。『ミツルギCCC』がパイクを振り下ろすより先に、『ライカSS』が間合いに飛び込んで来て、クァンタムブレードを一閃。左腋から胸部を深く切り裂いた。
 
 そして『サイウンCN』。こちらもメイアとマイアとの連携を分断されても、親衛隊仕様機二機で、動きを封じる事ができるような相手ではない。距離を取りつつ牽制射撃を行おうとしたサキュラスとその配下に、自分から先制攻撃を仕掛けた。BSHOの『サイウンCN』その速度は無論、カレンガミノ姉妹の機体以上だ。

 瞬間移動も同然の速さで接近した、クリムゾンレッドの『サイウンCN』はまるで赤い稲妻。「速い!」と言うサキュラス。「遅い!」と言うノア。咄嗟にサキュラスが射撃しようと向けた、超電磁ライフルの銃身をポジトロンパイクで真っ二つにする。切り離された銃身が無重力の虚空を回転して飛んでゆく。

「チィ!」

 舌打ちしたサキュラスは体勢の立て直しを図るため、『ミツルギCCC』で体当たりを喰らわせようとする。しかしノアの『サイウンCN』は、素早く体を入れ替えて回避。そこへ『サイウンCN』の背後に回り込んだ、もう一機の『ミツルギCCC』がクァンタムブレードを両手で握って、切り込んで来た。だがそれを読んでいるノア。

「やめろ。ワナだ!」

 僚機に叫ぶサキュラスだったが間に合わない。機体を半回転させながら突き出した、『サイウンCN』のポジトロンパイクの刃先が、もう一機の敵機の喉元を貫通して、頭部を破壊した。

「おのれ!」

 サキュラスは機体を反転させながら、クァンタムブレードを起動。背後を見せたノアの『サイウンCN』のバックパックを狙い、袈裟懸けに両断しようとする。
 ところが『サイウンCN』は振り返りもせずノールック。短く握り直したポジトロンパイクの刃を、瞬時に背中に回して斬撃を受け止めた。

「なっ!?」

「あなた達に、イチちゃんの邪魔はさせない!」

 驚きの声を上げるサキュラスにノアは強い口調で言い放ち、機体を振り返らせると同時に、パイクを“V”の字に振り抜く。両腕を切断されるサキュラスの機体。

 しかもノアはサキュラスの戦闘力を奪うと、カレンガミノ姉妹と戦闘中の敵機に超電磁ライフルの射撃を加えた。すでに姉妹の素早い機動に翻弄されていた残りの敵機は、思わぬ方向からの射撃に気を取られ、瞬く間に全機がメイアとマイアにより戦闘不能に陥る。
 準ステルス機能を持つ『ミツルギCCC』十機に完勝。しかも敵機はすべて戦闘力を奪われただけで、戦死者は無しという恐るべき技量を見せつけたのである。小さく息をついたノアは、淡々とした口調で告げた。

「状況終了。マーメイド小隊はこのまま、艦隊直掩を続けます」




▶#16につづく
 
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