今日から夫婦です!?

あん蜜

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第24話 ゴーゼルのこれから

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 ダリオス陛下の言葉に三人とも意表を突かれた。
 最も戸惑ったのは兄だった。

「それはどういう意味でしょうか? 私は王家の血を引いておりませんが……」

「王政を廃止すればいいんだよ」

「!! 王政を廃止……」

 兄と同様に、私も驚きや困惑を顔に出さずにはいられなかった。

「キース君がトップに立つべきだと思うよ。きみほど自分の国、人々のために働いている人はいない。きみのおかげで救われた人が数多といる」

「お言葉ですが……私には到底務まるものではないと思います」

「どうしてだい?」

「陛下もご存じの通り、言うなれば私は日陰者。表舞台は似合いません。これまで通り、気配を消して行動し、生きていくのが性に合っております」

「キース君。わたしはね、一番ふさわしいのはきみだと思っているんだよ」

「…………」

「それでもね、本人がどうしてもやりたくないのなら…………」

 陛下は兄の目をじっと見つめる。

「…………やりたくないわけではありませんが…………」

 兄は少しの沈黙の後、再び口を開いた。

「命令とはいえ、今日まで多くの人を秘密裏に気絶させ、捕獲してきました。このような人間が国のトップに立つなど…………」

「正しい・正しくないを判断するのはとても難しいことだけどね、キース君がこれまでしてきたことは正しかったと思うよ。パディラン陛下の悪事に気付いてからは、家族のことを守りながら、家族にも隠れて苦しめられている人々を救ってきた。簡単に真似できることじゃない。キース君だからできたんだ。これほど立派なことはないよ」

「…………」

「誰がトップに立つべきか、苦しんでいる人々を解放し、助けることができるのかは、キース君自身が一番わかっていることじゃないかな?」

「…………それは…………ですが、誰も納得しないのではないでしょうか。命令とはいえパディラン陛下の悪事に力を貸していたことは事実。そのような人物に国を任せたいと思う人など…………」

「そのことについては大丈夫だよ。わたしに任せてほしい」

「…………?」

 言葉の真意は隠されたまま、明日、ゴーゼルで改革を始めることが決まった。
 兄はゴーゼルに戻り、私たちは翌日の朝ゴーゼルへ渡ると、この日を境にゴーゼルに怒涛の日々が訪れた。
 ダリオス陛下によって写真の技術が貸し出され、チュエリー村を始めとするパディラン陛下の悪事がゴーゼルの人々に公開されたのだ。
 大混乱を招いたものの、瞬く間に王政は崩れていった。

 そして、これまで兄が行ってきたパディラン陛下の悪事を防ぐ場面や、隠れて人々を救う場面を写した写真も公表され、国民の関心は一気に兄へと向いた。
 兄は知らぬ間に写真を撮られていたことに大変驚いていた。
 ダリオス陛下の魔法が使われていたらしい。
 それなら兄でも気づかなくて当然だが、裏を返せば魔法を使わなければ兄に気づかれずに写真を撮ることは不可能だということ。
 それだけ兄はすごい人なのだと感じ、なんだか嬉しくなった。

 ダリオス陛下が大丈夫と言った通り、兄は国民に支持され、ゴーゼルのトップに立つことが決まった。
 もちろん、全員が納得したわけではないし、兄が解決していくべき問題は山ほどある。
 今までも大変な日常を過ごしてきたのに、これからも大変な日々を過ごしていくことになるのだ。
 兄ばかりが大変な役回りを担っているような気がして、とても心苦しく感じる。
 そんな心の内を読まれたのか、ホワーズに帰る日の朝、ルイに言葉をかけられた。

「アイラさん、お兄さんは大丈夫ですよ」

「えっ……?」

「大変なことは確かですが、お兄さんは楽しんでおられます。こうしてゴーゼルの人々のために堂々と行動できることを」

「!」

「お兄さんからそういった感情が伝わってきますので。とても生き生きとしておられます。国のために、家族のために、誰かのために頑張ることが、お兄さんの生きがいなのかもしれませんね」

「……うん…………」

 ルイの言葉に少しホッとしたが、それに甘えてはいけないとも感じた。

「積極的に兄と連絡を取って、私にできることはやっていこうと思う」

「はい。僕もそのつもりですよ」

「ルイ……ありがとう……」

 ルイの手が頬に触れる。
 顔を上げる。

「アイラさん、口を少し開けてください」

 言われた通りにすると……

「んっ……!!」

 すぐに唇が重ねられ、それと同時に舌が絡められた。

「っ……~~っ…………」

 い、いきなり……!?
 突然舌を絡められることは今までなかった。
 それに……なんだかいつもより激しいような……。

「はぁ……はぁ……ルイっ……どうしたの……?」

 ルイは優しい眼差しで見つめてくる。
 とろんとしたその表情に、全身がぼわっと熱を上げた。

「もっと……アイラさんが欲しいです……」

「んっ――」

 再び舌が絡められ、唾液が溢れ出る。
 休暇中のあの夜以来、キスやハグ以上の触れ合いができていなかった。
 それのせいなのかはわからないが、胸がむらむらし、ルイを求めているのが自分でわかる。

「はぁぁ……はぁ……はぁ……」

 ぎゅうっと抱きしめ合う。
 ルイの唇が耳に触れる。

「アイラさん……帰ったら、すぐに交わりたいです。アイラさんと、最後までしたいです」

 甘い声で囁かれ、全身に何かがぶわぁっと流れた気がした。

「…………うん…………」
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