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第22話 魔法
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突然ダリオス陛下がすぐそばに現れ、心臓が跳ね上がった。
おそらく瞬間移動だろうが、もう少し離れた場所に現れてほしかった。
腰が抜けるかと思った……。
「ど、どうしてこちらに……!?」
ルイもとても困惑している様子。
「この時間にここに現れたらいいと、未来が教えてくれたんだよ」
未来!?
まさか、ダリオス陛下は未来が見える……!?
「……そういうことだったのですね……」
何やら知っている様子のルイ。
「アイラさん、わたしには未来が見える瞬間があってね、魔法がわたしに見せてくれているんだ」
「魔法が……!」
「見る必要のない未来が見えたことは一度もなくてね。必ず見ておく必要がある未来を見せてくれるんだ。アイラさんに関する未来を初めて見たのは、もう5年以上も前になるねぇ」
そんなにも前に……!
一体、どんな未来が見えたのだろうか。
「まず二人に伝えておこうと思うんだけどね、わたしはゴーゼル王国を吸収するつもりはこれっぽっちもないんだよ」
「えっ……!?」
驚くルイ。
少し申し訳なさそうな顔をする陛下。
「ルイには嘘をつくことになってしまったねぇ……ごめんね……」
「あっ いえっ……。ですが、どうして……」
「ルイからゴーゼル王国を吸収する提案が出た時、わたしがその提案を受け入れたと、ルイに思ってもらう必要があったんだ。そうでなければ、ルイはあの日、アイラさんを助けることができなかったんだよ」
「えっ……!?」
「未来は複雑でねぇ……その未来の通りになるかに関わるターニングポイントがあって、それが一つの場合もあればいくつか存在することもあるんだけど、アイラさんのあの夜の未来を変えるには、あのタイミングでルイに嘘をつく必要があったんだ」
「……そうだったのですか……!」
「じゃあどうしてアイラさんのことが未来で見えたか気になるところだよね。アイラさんの顔にそう書いてあるねぇ」
まさにその通りだったため、少し口元が緩む。
「わたしが司る魔法は、ホワーズ王国のために存在するものなんだ」
「!!」
「アイラさんはルイと結婚してホワーズ王国の民になる運命だったからね、アイラさんの身に起きる災いを防げるように、魔法がわたしに未来を見せてくれたんだと思っているよ」
「……そういうことだったのですね……」
色んな謎が回収されていくようで、頭の中がスッキリしていく。
「本題に戻ろうかねぇ。ゴーゼル王国を吸収する話だけど、アイラさんの意見を聞いてルイはどう思った?」
「……僕は…………この国の人々の立場になって考えられていなかったと、気づかされました……」
「うん。だけどね、ルイの考え方が間違っているとも、わたしの口からは言えないんだよ。何が正しくて何が間違っているかは、結果が出て初めて見えてくることだからね。仮にこの魔法がゴーゼル王国のためにも機能するものだとしたら、わたしはまた違った結論を出していたかもしれない。国を吸収する、という結論には至っていなかったと思うけどね」
「はい……」
「わたしはホワーズ王国の王だからね、自分の国のことを一番に考えているんだ。だからこそ、こちらの発明や技術をほいほいと他国に渡すわけにもいかない。けれども、アイラさんの母国であるゴーゼル王国に住む人々の幸せも、もちろん願っている。だからねアイラさん、わたしにできる協力は喜んでさせてもらうよ」
「!! ……ダリオス陛下…………ありがとうございます……!」
ダリオス陛下は優しく微笑むと、人差し指を上げた。
「一つ、提案があるんだ」
おそらく瞬間移動だろうが、もう少し離れた場所に現れてほしかった。
腰が抜けるかと思った……。
「ど、どうしてこちらに……!?」
ルイもとても困惑している様子。
「この時間にここに現れたらいいと、未来が教えてくれたんだよ」
未来!?
まさか、ダリオス陛下は未来が見える……!?
「……そういうことだったのですね……」
何やら知っている様子のルイ。
「アイラさん、わたしには未来が見える瞬間があってね、魔法がわたしに見せてくれているんだ」
「魔法が……!」
「見る必要のない未来が見えたことは一度もなくてね。必ず見ておく必要がある未来を見せてくれるんだ。アイラさんに関する未来を初めて見たのは、もう5年以上も前になるねぇ」
そんなにも前に……!
一体、どんな未来が見えたのだろうか。
「まず二人に伝えておこうと思うんだけどね、わたしはゴーゼル王国を吸収するつもりはこれっぽっちもないんだよ」
「えっ……!?」
驚くルイ。
少し申し訳なさそうな顔をする陛下。
「ルイには嘘をつくことになってしまったねぇ……ごめんね……」
「あっ いえっ……。ですが、どうして……」
「ルイからゴーゼル王国を吸収する提案が出た時、わたしがその提案を受け入れたと、ルイに思ってもらう必要があったんだ。そうでなければ、ルイはあの日、アイラさんを助けることができなかったんだよ」
「えっ……!?」
「未来は複雑でねぇ……その未来の通りになるかに関わるターニングポイントがあって、それが一つの場合もあればいくつか存在することもあるんだけど、アイラさんのあの夜の未来を変えるには、あのタイミングでルイに嘘をつく必要があったんだ」
「……そうだったのですか……!」
「じゃあどうしてアイラさんのことが未来で見えたか気になるところだよね。アイラさんの顔にそう書いてあるねぇ」
まさにその通りだったため、少し口元が緩む。
「わたしが司る魔法は、ホワーズ王国のために存在するものなんだ」
「!!」
「アイラさんはルイと結婚してホワーズ王国の民になる運命だったからね、アイラさんの身に起きる災いを防げるように、魔法がわたしに未来を見せてくれたんだと思っているよ」
「……そういうことだったのですね……」
色んな謎が回収されていくようで、頭の中がスッキリしていく。
「本題に戻ろうかねぇ。ゴーゼル王国を吸収する話だけど、アイラさんの意見を聞いてルイはどう思った?」
「……僕は…………この国の人々の立場になって考えられていなかったと、気づかされました……」
「うん。だけどね、ルイの考え方が間違っているとも、わたしの口からは言えないんだよ。何が正しくて何が間違っているかは、結果が出て初めて見えてくることだからね。仮にこの魔法がゴーゼル王国のためにも機能するものだとしたら、わたしはまた違った結論を出していたかもしれない。国を吸収する、という結論には至っていなかったと思うけどね」
「はい……」
「わたしはホワーズ王国の王だからね、自分の国のことを一番に考えているんだ。だからこそ、こちらの発明や技術をほいほいと他国に渡すわけにもいかない。けれども、アイラさんの母国であるゴーゼル王国に住む人々の幸せも、もちろん願っている。だからねアイラさん、わたしにできる協力は喜んでさせてもらうよ」
「!! ……ダリオス陛下…………ありがとうございます……!」
ダリオス陛下は優しく微笑むと、人差し指を上げた。
「一つ、提案があるんだ」
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