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第19話 翌朝
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目を覚まし、少しの時間の後、自分があの状態のまま寝てしまったことを理解した。
そっと隣を見ると、ルイが寝ている。
私もルイも裸ではなく、寝間着を身に付けている。
ルイが着せてくれたのだろう。
起こさないように上体を起こし、ベッドから出る。
「っ……!」
歩くと、太もものどこかに、わずかだが筋肉痛のような違和感がある。
毎日鍛錬しているのに……。
使えていなかった筋肉を、昨夜のあの時に使ったのだろうか……。
男女の営み、恐るべし……。
私は着替えを済ませ、台所へ向かった。
ルイに教えてもらったスープを作る。
まだまだ料理は慣れないが、やってみると思いのほか楽しい。
火を使う時はここを押して……。
いい感じに火が入り、味見をしてみる。
……うん……少し味が薄い気もするけど、朝にはちょうどいいかもしれない。
「わぁ……! アイラさんおはようございます。作ってくれたんですか?」
「うん……おはよう。ルイが作るスープには全然及ばないけど、食べられるものはできているから安心してほしい……」
「ありがとうございます! すごく嬉しいです!」
幸せそうな笑顔に、こちらまで温かい気持ちになる。
ルイの髪の毛が少しはねている。
なぜだか胸がきゅんとなる。
まさか寝癖にこんな感情を抱くことがくるとは……。
私はどうかしているのだろうか……。
朝のキスを交わし、テーブルを囲む。
もう、何度も何度もキスを交わしているが、ルイの顔が近づいてくるたび胸がドキドキして恥ずかしくなる。
慣れるにはまだまだ時間がかかりそうな気がする。
「いただきます!」
「いただきます」
ルイがスープを一口食べる。
急に不安になってきた。
何か調味料を足した方がよかったかもしれない……!
今更焦っても仕方ないのだが……。
「あぁ……幸せな味がします……アイラさんの優しさが全身に染み渡っていく…………」
目を閉じ、噛みしめているような顔のルイ。
「とっても美味しいです」
「……本当? ちょっと……味が薄い気がするのだけど……何が足りないのかしら?」
「上品な味付けで僕は大好きですよ。それでも、もう少し味をしっかりさせたいのであれば、塩を少しだけ足すといいと思います。このままでも充分、とっても美味しいですからね!」
「……ありがとう……。次に作る際はもう少し塩を足してみようかしら」
「はぁぁ……」
どこか嬉しそうな顔でため息を吐くルイ。
表情と行動が一致していないのでは……?
「どうかしたの……?」
「アイラさんがまた、僕のために作ってくださるのかと思うと嬉しくて嬉しくて……今ならなんでもできそうな気がします」
「!」
ふふっ、と笑ってしまう。
ルイと出会ってまだ一週間だが、気が緩んでしまっているような気がする。
今日でルイの休暇が終わる。
明日からは、私もルイの仕事で手伝えることは手伝わせてもらうことになっているのだから、気を引き締めないと。
それに、早くパディラン陛下の悪事をこの目で確かめ、ゴーゼルがホワーズに吸収される件をなんとかしなくては……!
「アイラさん、まだ今日一日は休みですよ。大変なことを考えるのは、明日からにしましょう」
「っ……!? 私が何を考えていたかわかったの……!?」
「詳細まではわかりませんが、おそらくパディラン陛下のことや、母国のことではないでしょうか?」
「!!」
「当たりのようですね」
「そっ……そんなことまでわかるの……!? 大まかな感情だけじゃ……」
「そのはずなのですが……夫婦だからでしょうか? それとも僕たちが運命で結ばれているからなのか……。最近のアイラさんからはより鮮明に感情や思考が伝わってきます」
「っ……!!」
それは……恥ずかしすぎるのだけど……!?
ルイの顔を見ていると、ふと昨夜のことがよぎった。
「あ、ねぇ…………昨夜のことだけど……」
「はい……どうかされましたか? まさかっ……体のどこかに痛みが!?」
ルイの顔が一気に深刻さを増す。
「違うわ……! 痛みはないから大丈夫……そういう話ではなくて……私が寝てしまう前に、何か言っていなかったかしら? 後で説明するから待っていてほしいって……」
「……あーー…………そうですねぇ……」
「……?」
「それについては、また、追々説明していきますね」
「えっ!?」
まただ……!
いつも先延ばしにされている気が……。
「ルイはどうしてそうやって後に延ばそうとするの? パディラン陛下の悪事のことだって……」
本当に教える気があるのだろうかと疑いたくなってしまう。
「その件に関しては、すでに話はついております」
「……えっ? どういうこと?」
「三日後、仕事でゴーゼルへ行くので、アイラさんも一緒に行きましょう。アイラさんをお連れし、パディラン陛下の悪事をお見せする許可を、ダリオス陛下からいただいておりますので」
「!!」
「さぁ、今日のうちは嫌な話は置いておいて、休暇を満喫しましょうね」
「……うん……ありがとう…………」
三日後に……わかる…………。
もうすぐこの目で確かめられるとわかった途端、大きな不安と緊張が胸を締め付けた。
そっと隣を見ると、ルイが寝ている。
私もルイも裸ではなく、寝間着を身に付けている。
ルイが着せてくれたのだろう。
起こさないように上体を起こし、ベッドから出る。
「っ……!」
歩くと、太もものどこかに、わずかだが筋肉痛のような違和感がある。
毎日鍛錬しているのに……。
使えていなかった筋肉を、昨夜のあの時に使ったのだろうか……。
男女の営み、恐るべし……。
私は着替えを済ませ、台所へ向かった。
ルイに教えてもらったスープを作る。
まだまだ料理は慣れないが、やってみると思いのほか楽しい。
火を使う時はここを押して……。
いい感じに火が入り、味見をしてみる。
……うん……少し味が薄い気もするけど、朝にはちょうどいいかもしれない。
「わぁ……! アイラさんおはようございます。作ってくれたんですか?」
「うん……おはよう。ルイが作るスープには全然及ばないけど、食べられるものはできているから安心してほしい……」
「ありがとうございます! すごく嬉しいです!」
幸せそうな笑顔に、こちらまで温かい気持ちになる。
ルイの髪の毛が少しはねている。
なぜだか胸がきゅんとなる。
まさか寝癖にこんな感情を抱くことがくるとは……。
私はどうかしているのだろうか……。
朝のキスを交わし、テーブルを囲む。
もう、何度も何度もキスを交わしているが、ルイの顔が近づいてくるたび胸がドキドキして恥ずかしくなる。
慣れるにはまだまだ時間がかかりそうな気がする。
「いただきます!」
「いただきます」
ルイがスープを一口食べる。
急に不安になってきた。
何か調味料を足した方がよかったかもしれない……!
今更焦っても仕方ないのだが……。
「あぁ……幸せな味がします……アイラさんの優しさが全身に染み渡っていく…………」
目を閉じ、噛みしめているような顔のルイ。
「とっても美味しいです」
「……本当? ちょっと……味が薄い気がするのだけど……何が足りないのかしら?」
「上品な味付けで僕は大好きですよ。それでも、もう少し味をしっかりさせたいのであれば、塩を少しだけ足すといいと思います。このままでも充分、とっても美味しいですからね!」
「……ありがとう……。次に作る際はもう少し塩を足してみようかしら」
「はぁぁ……」
どこか嬉しそうな顔でため息を吐くルイ。
表情と行動が一致していないのでは……?
「どうかしたの……?」
「アイラさんがまた、僕のために作ってくださるのかと思うと嬉しくて嬉しくて……今ならなんでもできそうな気がします」
「!」
ふふっ、と笑ってしまう。
ルイと出会ってまだ一週間だが、気が緩んでしまっているような気がする。
今日でルイの休暇が終わる。
明日からは、私もルイの仕事で手伝えることは手伝わせてもらうことになっているのだから、気を引き締めないと。
それに、早くパディラン陛下の悪事をこの目で確かめ、ゴーゼルがホワーズに吸収される件をなんとかしなくては……!
「アイラさん、まだ今日一日は休みですよ。大変なことを考えるのは、明日からにしましょう」
「っ……!? 私が何を考えていたかわかったの……!?」
「詳細まではわかりませんが、おそらくパディラン陛下のことや、母国のことではないでしょうか?」
「!!」
「当たりのようですね」
「そっ……そんなことまでわかるの……!? 大まかな感情だけじゃ……」
「そのはずなのですが……夫婦だからでしょうか? それとも僕たちが運命で結ばれているからなのか……。最近のアイラさんからはより鮮明に感情や思考が伝わってきます」
「っ……!!」
それは……恥ずかしすぎるのだけど……!?
ルイの顔を見ていると、ふと昨夜のことがよぎった。
「あ、ねぇ…………昨夜のことだけど……」
「はい……どうかされましたか? まさかっ……体のどこかに痛みが!?」
ルイの顔が一気に深刻さを増す。
「違うわ……! 痛みはないから大丈夫……そういう話ではなくて……私が寝てしまう前に、何か言っていなかったかしら? 後で説明するから待っていてほしいって……」
「……あーー…………そうですねぇ……」
「……?」
「それについては、また、追々説明していきますね」
「えっ!?」
まただ……!
いつも先延ばしにされている気が……。
「ルイはどうしてそうやって後に延ばそうとするの? パディラン陛下の悪事のことだって……」
本当に教える気があるのだろうかと疑いたくなってしまう。
「その件に関しては、すでに話はついております」
「……えっ? どういうこと?」
「三日後、仕事でゴーゼルへ行くので、アイラさんも一緒に行きましょう。アイラさんをお連れし、パディラン陛下の悪事をお見せする許可を、ダリオス陛下からいただいておりますので」
「!!」
「さぁ、今日のうちは嫌な話は置いておいて、休暇を満喫しましょうね」
「……うん……ありがとう…………」
三日後に……わかる…………。
もうすぐこの目で確かめられるとわかった途端、大きな不安と緊張が胸を締め付けた。
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