今日から夫婦です!?

あん蜜

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第15話 お誕生日おめでとう

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「どうしてジョネズはゴーゼルに着いて、あの舞踏会の会場で私を狙ったのかしら? 他にもいっぱい人がいたのに……」

「狙ったわけではなく、偶然だったそうです」

「偶然?」

「舞踏会という大勢の女性がいる場で、一人でいる女性を見つけ気絶させた相手がアイラさんだった。おそらく一人でいたということが、奴の目に留まった理由ではないかと」

「!」

 そうか……確かにそうだ。
 それも会場のフロアではなく、人気のない場所を一人で歩いていた。
 狙われたのではなく、狙える条件に当てはまってしまったのか……。
 私は隙がない方だったとは思うが、ジョネズにとっては大したことではなかったのだろう。

「僕はアイラさんが任務を終えたところで、アイラさんの前に姿を現す予定だったのですが……。アイラさんの背後に突然奴が現れ、一瞬の内にアイラさんを連れ去りました。僕は血眼になって探し回り……なんとかあのタイミングで奴を捕まえることができた次第です」

「……そうだったのね……」

 偶然に偶然が重なって……。
 ルイが昨夜、私を迎えに来る予定じゃなければ、私は…………。

「ルイ…………昨夜は、助けに来てくれて、私を見つけ出してくれて、本当にありがとう……」

 言いながら、自分が泣きそうになっていることに気づいた。
 がばっと正面から抱きしめられる。

「これからは僕がアイラさんをお守りします。もう、あんな任務に関わる必要もないです」

 あんな任務……。

「……家族やパディラン陛下には、私はどうなったと伝えられているのかしら?」

「アイラさんはゴーゼルへ脱走した罪人を捕まえ、そのお礼にホワーズへ招待している、という形になっています」

「そうなの!?」

 家族はこの状況をどう思っているのだろうか……。
 父と母はそれほど不信に思ってはいないかもしれないが、兄は勘づいているに違いない。
 ルイから話を聞いて、私は兄のことを全然わかっていないのだと実感した。
 10年前に、ホワーズの側近とともにルイたちを助けようとしていた理由も経緯も、訊きたいことが山ほどある。
 
 兄は、今も側近と繋がっているのだろうか。
 そもそも、その側近は誰なのか……この宮殿にいる……?

「アイラさん、日が沈んだらお見せしたい景色がありますので、部屋に戻って夕食の準備に取りかかりましょうか」

「……星空かしら?」

「さぁどうでしょうか。見てのお楽しみです」

「……?」

 夕食を取った後、ルイに連れられバルコニーに出ると、ルイは私をお姫様抱っこした。

「えっ!? ルイ……?」

 真に驚くことが起きたのはこの直後だった。
 視界が一気に上昇したのだ。

「きゃあ!!」

 目を閉じ、ルイにしがみつく。
 浮いている!?
 飛んでいる!?

「驚かせてすみません。飛行魔法を使わせていただきました」

「さっ……」

 先に言ってくれないかしら!?
 どうして後から言うのだろうか、本当に!!

「想像はしていたけど、空を飛ぶ魔法があったのね……」

「はい。ですがいつでも使えるわけではありません。飛行魔法を使用する際は、毎回許可をいただく必要があるのです」

「そうなの……」

「アイラさん、目を開けてみてください」

「…………それは、遠慮しておくわ……」

 高い場所が苦手なわけではないが、地に足が着いていないという状況がなんとも恐ろしい。

「大丈夫です。目を開けた方が怖くないと思いますよ。むしろ開けないと損かもしれません」

「そんなわけ……」

「まだロウソクの灯りしかないゴーゼルでは星が綺麗に見えると思いますが、電気のあるホワーズではまた違った夜景を見ることができます。ちらっとでいいので、目を開けてみてください」

「…………わかったわ……」

 言われた通りにほんの少しだけ開けてみる。

「!?」

 私の目はすぐに大きく見開いた。

「うそ………………」

 街が……光っている……。
 光輝いている……。

「信じられない…………私は何を見ているの……?」


「気に入っていただけましたか? 街灯や家の灯りでこんなにも輝いて見えるんです。満天の星空にはかなわないかもしれませんが、また違った良さがありますよね。温かみがあって僕は大好きなんです」

「……えぇ……私も……すごく、素敵だと思う…………」

「よかった……喜んでいただけて……。アイラさんと一緒に夜景を見ることを、ずっと楽しみにしていたんです。本当に幸せです……」

「…………ありがとう……見せてくれて……それとっルイっ……!」

「……どうしました?」

「あ……その…………お誕生日おめでとう……」

ちゅ……

 おでこに柔らかい感触が伝わる。

「ありがとうございます」

 暗くてはっきりとは見えないが、ルイはとても嬉しそうな顔をしているように見える。

「……なにか……欲しいものはある?」

「プレゼントですか!?」

「えぇ……」

「アイラさんが欲しいです!」

「へっ……?」

「部屋に戻ったらアイラさんと裸で愛し合いたいです」

「ひぇっ!?」

「ふふふ、冗談ですよ。半分は本気ですけどね」

「っ…………」

「アイラさんはまだ、心の準備が整っていないようですので、その時が来るまでちゃんと待ちます」

 ルイが言った”その時”は、この5日後に訪れるのだった。
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