15 / 27
第15話 お誕生日おめでとう
しおりを挟む
「どうしてジョネズはゴーゼルに着いて、あの舞踏会の会場で私を狙ったのかしら? 他にもいっぱい人がいたのに……」
「狙ったわけではなく、偶然だったそうです」
「偶然?」
「舞踏会という大勢の女性がいる場で、一人でいる女性を見つけ気絶させた相手がアイラさんだった。おそらく一人でいたということが、奴の目に留まった理由ではないかと」
「!」
そうか……確かにそうだ。
それも会場のフロアではなく、人気のない場所を一人で歩いていた。
狙われたのではなく、狙える条件に当てはまってしまったのか……。
私は隙がない方だったとは思うが、ジョネズにとっては大したことではなかったのだろう。
「僕はアイラさんが任務を終えたところで、アイラさんの前に姿を現す予定だったのですが……。アイラさんの背後に突然奴が現れ、一瞬の内にアイラさんを連れ去りました。僕は血眼になって探し回り……なんとかあのタイミングで奴を捕まえることができた次第です」
「……そうだったのね……」
偶然に偶然が重なって……。
ルイが昨夜、私を迎えに来る予定じゃなければ、私は…………。
「ルイ…………昨夜は、助けに来てくれて、私を見つけ出してくれて、本当にありがとう……」
言いながら、自分が泣きそうになっていることに気づいた。
がばっと正面から抱きしめられる。
「これからは僕がアイラさんをお守りします。もう、あんな任務に関わる必要もないです」
あんな任務……。
「……家族やパディラン陛下には、私はどうなったと伝えられているのかしら?」
「アイラさんはゴーゼルへ脱走した罪人を捕まえ、そのお礼にホワーズへ招待している、という形になっています」
「そうなの!?」
家族はこの状況をどう思っているのだろうか……。
父と母はそれほど不信に思ってはいないかもしれないが、兄は勘づいているに違いない。
ルイから話を聞いて、私は兄のことを全然わかっていないのだと実感した。
10年前に、ホワーズの側近とともにルイたちを助けようとしていた理由も経緯も、訊きたいことが山ほどある。
兄は、今も側近と繋がっているのだろうか。
そもそも、その側近は誰なのか……この宮殿にいる……?
「アイラさん、日が沈んだらお見せしたい景色がありますので、部屋に戻って夕食の準備に取りかかりましょうか」
「……星空かしら?」
「さぁどうでしょうか。見てのお楽しみです」
「……?」
夕食を取った後、ルイに連れられバルコニーに出ると、ルイは私をお姫様抱っこした。
「えっ!? ルイ……?」
真に驚くことが起きたのはこの直後だった。
視界が一気に上昇したのだ。
「きゃあ!!」
目を閉じ、ルイにしがみつく。
浮いている!?
飛んでいる!?
「驚かせてすみません。飛行魔法を使わせていただきました」
「さっ……」
先に言ってくれないかしら!?
どうして後から言うのだろうか、本当に!!
「想像はしていたけど、空を飛ぶ魔法があったのね……」
「はい。ですがいつでも使えるわけではありません。飛行魔法を使用する際は、毎回許可をいただく必要があるのです」
「そうなの……」
「アイラさん、目を開けてみてください」
「…………それは、遠慮しておくわ……」
高い場所が苦手なわけではないが、地に足が着いていないという状況がなんとも恐ろしい。
「大丈夫です。目を開けた方が怖くないと思いますよ。むしろ開けないと損かもしれません」
「そんなわけ……」
「まだロウソクの灯りしかないゴーゼルでは星が綺麗に見えると思いますが、電気のあるホワーズではまた違った夜景を見ることができます。ちらっとでいいので、目を開けてみてください」
「…………わかったわ……」
言われた通りにほんの少しだけ開けてみる。
「!?」
私の目はすぐに大きく見開いた。
「うそ………………」
街が……光っている……。
光輝いている……。
「信じられない…………私は何を見ているの……?」
「気に入っていただけましたか? 街灯や家の灯りでこんなにも輝いて見えるんです。満天の星空にはかなわないかもしれませんが、また違った良さがありますよね。温かみがあって僕は大好きなんです」
「……えぇ……私も……すごく、素敵だと思う…………」
「よかった……喜んでいただけて……。アイラさんと一緒に夜景を見ることを、ずっと楽しみにしていたんです。本当に幸せです……」
「…………ありがとう……見せてくれて……それとっルイっ……!」
「……どうしました?」
「あ……その…………お誕生日おめでとう……」
ちゅ……
おでこに柔らかい感触が伝わる。
「ありがとうございます」
暗くてはっきりとは見えないが、ルイはとても嬉しそうな顔をしているように見える。
「……なにか……欲しいものはある?」
「プレゼントですか!?」
「えぇ……」
「アイラさんが欲しいです!」
「へっ……?」
「部屋に戻ったらアイラさんと裸で愛し合いたいです」
「ひぇっ!?」
「ふふふ、冗談ですよ。半分は本気ですけどね」
「っ…………」
「アイラさんはまだ、心の準備が整っていないようですので、その時が来るまでちゃんと待ちます」
ルイが言った”その時”は、この5日後に訪れるのだった。
「狙ったわけではなく、偶然だったそうです」
「偶然?」
「舞踏会という大勢の女性がいる場で、一人でいる女性を見つけ気絶させた相手がアイラさんだった。おそらく一人でいたということが、奴の目に留まった理由ではないかと」
「!」
そうか……確かにそうだ。
それも会場のフロアではなく、人気のない場所を一人で歩いていた。
狙われたのではなく、狙える条件に当てはまってしまったのか……。
私は隙がない方だったとは思うが、ジョネズにとっては大したことではなかったのだろう。
「僕はアイラさんが任務を終えたところで、アイラさんの前に姿を現す予定だったのですが……。アイラさんの背後に突然奴が現れ、一瞬の内にアイラさんを連れ去りました。僕は血眼になって探し回り……なんとかあのタイミングで奴を捕まえることができた次第です」
「……そうだったのね……」
偶然に偶然が重なって……。
ルイが昨夜、私を迎えに来る予定じゃなければ、私は…………。
「ルイ…………昨夜は、助けに来てくれて、私を見つけ出してくれて、本当にありがとう……」
言いながら、自分が泣きそうになっていることに気づいた。
がばっと正面から抱きしめられる。
「これからは僕がアイラさんをお守りします。もう、あんな任務に関わる必要もないです」
あんな任務……。
「……家族やパディラン陛下には、私はどうなったと伝えられているのかしら?」
「アイラさんはゴーゼルへ脱走した罪人を捕まえ、そのお礼にホワーズへ招待している、という形になっています」
「そうなの!?」
家族はこの状況をどう思っているのだろうか……。
父と母はそれほど不信に思ってはいないかもしれないが、兄は勘づいているに違いない。
ルイから話を聞いて、私は兄のことを全然わかっていないのだと実感した。
10年前に、ホワーズの側近とともにルイたちを助けようとしていた理由も経緯も、訊きたいことが山ほどある。
兄は、今も側近と繋がっているのだろうか。
そもそも、その側近は誰なのか……この宮殿にいる……?
「アイラさん、日が沈んだらお見せしたい景色がありますので、部屋に戻って夕食の準備に取りかかりましょうか」
「……星空かしら?」
「さぁどうでしょうか。見てのお楽しみです」
「……?」
夕食を取った後、ルイに連れられバルコニーに出ると、ルイは私をお姫様抱っこした。
「えっ!? ルイ……?」
真に驚くことが起きたのはこの直後だった。
視界が一気に上昇したのだ。
「きゃあ!!」
目を閉じ、ルイにしがみつく。
浮いている!?
飛んでいる!?
「驚かせてすみません。飛行魔法を使わせていただきました」
「さっ……」
先に言ってくれないかしら!?
どうして後から言うのだろうか、本当に!!
「想像はしていたけど、空を飛ぶ魔法があったのね……」
「はい。ですがいつでも使えるわけではありません。飛行魔法を使用する際は、毎回許可をいただく必要があるのです」
「そうなの……」
「アイラさん、目を開けてみてください」
「…………それは、遠慮しておくわ……」
高い場所が苦手なわけではないが、地に足が着いていないという状況がなんとも恐ろしい。
「大丈夫です。目を開けた方が怖くないと思いますよ。むしろ開けないと損かもしれません」
「そんなわけ……」
「まだロウソクの灯りしかないゴーゼルでは星が綺麗に見えると思いますが、電気のあるホワーズではまた違った夜景を見ることができます。ちらっとでいいので、目を開けてみてください」
「…………わかったわ……」
言われた通りにほんの少しだけ開けてみる。
「!?」
私の目はすぐに大きく見開いた。
「うそ………………」
街が……光っている……。
光輝いている……。
「信じられない…………私は何を見ているの……?」
「気に入っていただけましたか? 街灯や家の灯りでこんなにも輝いて見えるんです。満天の星空にはかなわないかもしれませんが、また違った良さがありますよね。温かみがあって僕は大好きなんです」
「……えぇ……私も……すごく、素敵だと思う…………」
「よかった……喜んでいただけて……。アイラさんと一緒に夜景を見ることを、ずっと楽しみにしていたんです。本当に幸せです……」
「…………ありがとう……見せてくれて……それとっルイっ……!」
「……どうしました?」
「あ……その…………お誕生日おめでとう……」
ちゅ……
おでこに柔らかい感触が伝わる。
「ありがとうございます」
暗くてはっきりとは見えないが、ルイはとても嬉しそうな顔をしているように見える。
「……なにか……欲しいものはある?」
「プレゼントですか!?」
「えぇ……」
「アイラさんが欲しいです!」
「へっ……?」
「部屋に戻ったらアイラさんと裸で愛し合いたいです」
「ひぇっ!?」
「ふふふ、冗談ですよ。半分は本気ですけどね」
「っ…………」
「アイラさんはまだ、心の準備が整っていないようですので、その時が来るまでちゃんと待ちます」
ルイが言った”その時”は、この5日後に訪れるのだった。
1
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!
奏音 美都
恋愛
まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。
「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」
国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?
国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。
「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」
え……私、貴方の妹になるんですけど?
どこから突っ込んでいいのか分かんない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
人形な美貌の王女様はイケメン騎士団長の花嫁になりたい
青空一夏
恋愛
美貌の王女は騎士団長のハミルトンにずっと恋をしていた。
ところが、父王から60歳を超える皇帝のもとに嫁がされた。
嫁がなければ戦争になると言われたミレはハミルトンに帰ってきたら妻にしてほしいと頼むのだった。
王女がハミルトンのところにもどるためにたてた作戦とは‥‥
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる