旦那様、仕事に集中してください!~如何なる時も表情を変えない侯爵様。独占欲が強いなんて聞いていません!~

あん蜜

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第19話 とことん愛撫

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 地下迷宮『南南西』の探索は無事に終了し、全部隊が無事に帰還した。
 負傷した人数、程度が過去最少な一方、成果は過去最大のものとなった。
 宝石や資源などが大量に発掘されたのだ。
 目新しい魔晶石も手に入れることができ、アーレイからは嬉しそうな雰囲気が漂っているように感じる。
 表情もにこやかになればいいのに、と思ってしまうけれど……。

 昨夜、全隊員が帰宅を完了したため、今朝は私もアーレイも遅めに起床した。
 アーレイの顔は、ここ最近では一番すっきりした顔色のように見えた。
 旦那様のことだから、部隊が地下迷宮にいる間は、寝ている間でさえも隊員のことを思って、気を張っていらっしゃるのかもしれない……。 
 今日一日くらいは、次の仕事のことなど考えず、ゆっくり過ごしてもらいたい。

 食事を済ませ、しばらくソファーでくつろいでいると、隣に座っていたアーレイがおもむろに立ちあがった。
 私を抱き抱え、歩き出す。

「わっ……旦那様っ……!? どちらへ……? お仕事はなさいませんよね……?」

「仕事はしないが……」

 私をベッドの端に降ろすと、アーレイも隣に腰かけた。
 足は床に着いた状態で、ベッドに腰を下ろしているような形。

「せっかくの休みだ。キミをとことん愛撫する」

「……えっ――」

 アーレイの手が首筋に触れる。

「んっ……」

 触れているのか触れていないのか曖昧なほど、わずかに触れながら撫でられていく。

ぞくぞくぞくぅ……!

「っ……~~っ…………~~っ…………んぅ……」

 くすぐったさよりも、ぞくぞくする感覚の方が強く、全身にぞわぞわした感覚が湧き上がる。

ちゅ……

 頬に唇が触れる。

ちゅ……ちゅ……

 おでこや目の横、顎など、唇以外に口づけされていく。

「………………」

 どうして旦那様は唇にキスをしてくださらないの……?

ちゅう

「ぁっ……」

 耳に柔らかい感触が伝わり、目を閉じてしまう。
 舌で舐めることはせず、ひたすら優しく唇だけで愛撫されていく。
 これは……らされているのかしら……。

すり……

 反対の耳に指のぬくもりが伝わる。

「んっ……ふふ…………んぅ……」

ちゅ……さす……さす……

 優しい力加減で撫でられるばかり。
 気持ちいいけれど、一向に唇にキスされる気配が感じられない……。

「……ん…………」

 こ、こんなにもらされるだなんて……!
 初めてかもしれない……。
 どうしてなの……?

さ――す さ――す

「んふ…………んん………………んぁぁ…………んっ」

 キスがほしい……。
 旦那様の……熱い口づけが…………ほしい……っ。


ちゅっ……


 思いが溢れすぎたのか、自分から唇を重ねていた。
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