旦那様、仕事に集中してください!~如何なる時も表情を変えない侯爵様。独占欲が強いなんて聞いていません!~

あん蜜

文字の大きさ
上 下
15 / 26

第14話 ひゃぁぁっ……

しおりを挟む
 地下迷宮『南南西』の探索は順調に進み、予定よりも早い日程で攻略できる見通しが立った。
 何度か未知の魔物と遭遇したが、アーレイが機転を利かせ難なく倒すことに成功し、各部隊の隊長の判断も冴えているためか、体調を崩したりケガを負う隊員が過去最少で済んでいる。
 相変わらず顔には出ていないけれど、旦那様はとてもホッとしているように見える。

「あと二、三日で終えられそうですね」

「そうだな。最下層の宝石を採掘すれば終了だ。早ければ明後日、遅くとも明々後日には部隊を帰還させる」

「かしこまりました」

 夕方、仕事部屋に執事のベン様がいらっしゃった。
 アーレイはちょうど部隊に指示を出しており、手が離せない時だったため、代わりに私が応対する。
 書類を受け取り、説明を聞く。
 それらをアーレイの机にそっと置いた時、きゅっと手首を掴まれた。

「……?」

 その状態のまま数分が経つ。
 どうなさったのかしら……?
 仕事に戻ってはいけないのかしら……。

 部隊への指示出しを終えたアーレイが口を開く。

「つい先ほど、ベンから書類を受け取ったな」

「はい……いけなかったでしょうか?」

「いや、そういうわけではない」

「…………」

 表情に変化は見られないものの、どこか不機嫌なような、怒っているような、そんな空気が伝わって来る。
 私……何か間違ったことをしたのかしら……。

「受け取る際、指が当たっていたように見えたのだが」

「……指……?」

「キミの指がベンの指に触れていたように見えた」

「……へっ!? え……いえ……触れていないと思いますわ」

 指先でも当たったのなら感覚でわかるもの。
 触れていないわ。

「……すまない。それが本当だとしても、キミの体に俺以外の男が触れたかもしれないという疑念を拭うことはできない」

 アーレイが立ち上がり、私をお姫様抱っこする。

「あっ……! 旦那様? お仕事はっ……」

「部隊は休憩に入った。心配ない」

 そのまま足を進め、着いたのは浴室だった。
 私を降ろすと、そのまま服を脱ぎ始める。

「きゃっ!? 旦那様っ!?」

 あっという間に上半身が露わになる。
 ちゃんと見るのは初めてかもしれない……。
 なんて……たくましいお体なの……。

 アーレイが下を脱ぎ始めたところであわてて背を向ける。

「な……なにをなさっているのですか……っ!?」

「服を脱いでいる。キミと入浴するためにな」

「……入浴っ!?」

がばっ

「えっ……あっ……待ってくださっ…………ひゃぁぁ!!」

 アーレイに後ろからドレスを脱がされ、全身に空気が触れるのを感じた。
 直後――

ひょいっ

 お姫様抱っこをされ、アーレイも裸だという事実や、裸を見られているという事実が一気に押し寄せる。

「ひゃぁぁっ…………」

 な、なにが起きているの……!?
 これから旦那様と入浴……!?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】体目的でもいいですか?

ユユ
恋愛
王太子殿下の婚約者候補だったルーナは 冤罪をかけられて断罪された。 顔に火傷を負った狂乱の戦士に 嫁がされることになった。 ルーナは内向的な令嬢だった。 冤罪という声も届かず罪人のように嫁ぎ先へ。 だが、護送中に巨大な熊に襲われ 馬車が暴走。 ルーナは瀕死の重症を負った。 というか一度死んだ。 神の悪戯か、日本で死んだ私がルーナとなって蘇った。 * 作り話です * 完結保証付きです * R18

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました

ユユ
恋愛
婚姻4年。夫が他界した。 夫は婚約前から病弱だった。 王妃様は、愛する息子である第三王子の婚約者に 私を指名した。 本当は私にはお慕いする人がいた。 だけど平凡な子爵家の令嬢の私にとって 彼は高嶺の花。 しかも王家からの打診を断る自由などなかった。 実家に戻ると、高嶺の花の彼の妻にと縁談が…。 * 作り話です。 * 完結保証つき。 * R18

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】妻至上主義

Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。 この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。 本編11話+番外編数話 [作者よりご挨拶] 未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。 現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。 お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。 (╥﹏╥) お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。

処理中です...