10 / 26
第9話 お尻
しおりを挟む
アーレイが総督を務める探索部隊は、明日の朝、地下迷宮「南南西」へ向けて出発することが決まった。
そして明後日の夜、中へ入り込む予定だ。
資料を元に計画を立てたところ、最も難関とされるのは”地下迷宮に入る時”だとわかった。
アーレイは椅子に座り、腕を組み計画表を見つめている。
表情はいつも通りでも、どこか緊張感が漂っている。
私は席から立ち上がり、本棚へと足を進めた。
「どうした?」
「正体が解明されていない魔物に関する資料を、もう一度よく読んでおこうと思いまして」
「そうか」
今回の地下迷宮には入口が一か所しかなく、侵入すると3体の魔物が一斉に襲い掛かってくると記されている。
そのうち2体が魔物リバーグで、残りの1体は正体が謎に包まれた魔物だと推測される。
リバーグを倒すと、中から治癒能力を持つ実を取り出すことができ、その実を食べると体内に治癒魔法が施される仕組みだ。
2体共倒せば全隊員分の実を確保することができるため、侵入したらまずこの2体を倒し実を食べることが、安全に攻略するための鍵となる。
リバーグは切り刻む場所、順番を守りさえすれば手こずる相手ではないけれど、正体不明の魔物がどんな性質を持つかが不明な今、前もってできることはあらゆる魔物の性質を頭に入れておくこと。
想定できる可能性を全て想定しておかないと……。
「えっと……あの魔物が記されてあるのは……」
私が本棚に手を伸ばし、厚めの資料を開いた直後――
さわ……
「ひゃぁ!!」
アーレイの手が、お尻に触れる。
いつの間にこちらへ!?
魔物のことばかり考えていたからか、アーレイが席を立ったことに気づかなかった。
さす……さす……
「っ…………」
布越しとはいえ、今日のドレスも生地が薄く、手の感触がしっかりと伝わってくる。
「旦那様っ……仕事に集中なさってください!」
「集中している。キミは気にせず資料を読むといい」
「さっ……」
触られていると、集中できないのですが……!
すりすり……すりすり……
ぞくぞくぞく……!
アーレイの手が優しく動く。
声は我慢できるものの、背筋が伸びてしまう。
「はっはっはっは」
「!?」
旦那様が、笑った!?
ばっと後ろを振り向くも、目に映ったアーレイの顔はいつものままだ。
「どうかしたのか?」
「今……お声に出して笑ってらっしゃいましたよね!?」
それも豪快に!
信じられない。
旦那様の笑い声なんて……初めて……空耳ではないわよね!?
「まぁそうだな。確かに笑った」
「!!」
「何を驚いている。俺は人間だ。笑うに決まっているだろう」
「で、ですが……これまでは一度も…………」
一体どんなお顔で笑ってらしたの!?
まさかいつもの表情のまま!?
そんなわけないわよね!?
「どうしてです? 何かおかしなことでもございましたでしょうか!?」
アーレイは私のお尻を触り、私は資料を読んでいただけだ。
何も笑うようなことは起きていないはずなのだけれど……。
「おかしなことが起きたわけではない。キミの反応が愛おしくてつい笑ってしまっただけだ」
「へっ!?」
私の反応が愛おしい……!?
「こうして撫でると……」
「っ…………」
「キミのお尻はきゅっと力が入り硬くなるんだ。背伸びするかのように背筋が伸び、感じていない振りをするキミは、とても可愛らしく愛おしい」
「…………」
アーレイの表情に動きはない。
それなのに、声色はどこか優しく、甘くて……。
ぱっ
「あっ!」
手に持っていた本が取り上げられ、正面から抱きしめられる。
「ん……」
「顔がほんのり赤くなっているが、どうかしたのか? 何か恥ずかしいことでもあったのか?」
「っ……いえっ……」
「そうか、それなら……」
アーレイの手が下にさがり、お尻に触れる。
もみ……もみ……
「ひゃんっ……!」
揉……揉……お尻を、揉っ……!!
そして明後日の夜、中へ入り込む予定だ。
資料を元に計画を立てたところ、最も難関とされるのは”地下迷宮に入る時”だとわかった。
アーレイは椅子に座り、腕を組み計画表を見つめている。
表情はいつも通りでも、どこか緊張感が漂っている。
私は席から立ち上がり、本棚へと足を進めた。
「どうした?」
「正体が解明されていない魔物に関する資料を、もう一度よく読んでおこうと思いまして」
「そうか」
今回の地下迷宮には入口が一か所しかなく、侵入すると3体の魔物が一斉に襲い掛かってくると記されている。
そのうち2体が魔物リバーグで、残りの1体は正体が謎に包まれた魔物だと推測される。
リバーグを倒すと、中から治癒能力を持つ実を取り出すことができ、その実を食べると体内に治癒魔法が施される仕組みだ。
2体共倒せば全隊員分の実を確保することができるため、侵入したらまずこの2体を倒し実を食べることが、安全に攻略するための鍵となる。
リバーグは切り刻む場所、順番を守りさえすれば手こずる相手ではないけれど、正体不明の魔物がどんな性質を持つかが不明な今、前もってできることはあらゆる魔物の性質を頭に入れておくこと。
想定できる可能性を全て想定しておかないと……。
「えっと……あの魔物が記されてあるのは……」
私が本棚に手を伸ばし、厚めの資料を開いた直後――
さわ……
「ひゃぁ!!」
アーレイの手が、お尻に触れる。
いつの間にこちらへ!?
魔物のことばかり考えていたからか、アーレイが席を立ったことに気づかなかった。
さす……さす……
「っ…………」
布越しとはいえ、今日のドレスも生地が薄く、手の感触がしっかりと伝わってくる。
「旦那様っ……仕事に集中なさってください!」
「集中している。キミは気にせず資料を読むといい」
「さっ……」
触られていると、集中できないのですが……!
すりすり……すりすり……
ぞくぞくぞく……!
アーレイの手が優しく動く。
声は我慢できるものの、背筋が伸びてしまう。
「はっはっはっは」
「!?」
旦那様が、笑った!?
ばっと後ろを振り向くも、目に映ったアーレイの顔はいつものままだ。
「どうかしたのか?」
「今……お声に出して笑ってらっしゃいましたよね!?」
それも豪快に!
信じられない。
旦那様の笑い声なんて……初めて……空耳ではないわよね!?
「まぁそうだな。確かに笑った」
「!!」
「何を驚いている。俺は人間だ。笑うに決まっているだろう」
「で、ですが……これまでは一度も…………」
一体どんなお顔で笑ってらしたの!?
まさかいつもの表情のまま!?
そんなわけないわよね!?
「どうしてです? 何かおかしなことでもございましたでしょうか!?」
アーレイは私のお尻を触り、私は資料を読んでいただけだ。
何も笑うようなことは起きていないはずなのだけれど……。
「おかしなことが起きたわけではない。キミの反応が愛おしくてつい笑ってしまっただけだ」
「へっ!?」
私の反応が愛おしい……!?
「こうして撫でると……」
「っ…………」
「キミのお尻はきゅっと力が入り硬くなるんだ。背伸びするかのように背筋が伸び、感じていない振りをするキミは、とても可愛らしく愛おしい」
「…………」
アーレイの表情に動きはない。
それなのに、声色はどこか優しく、甘くて……。
ぱっ
「あっ!」
手に持っていた本が取り上げられ、正面から抱きしめられる。
「ん……」
「顔がほんのり赤くなっているが、どうかしたのか? 何か恥ずかしいことでもあったのか?」
「っ……いえっ……」
「そうか、それなら……」
アーレイの手が下にさがり、お尻に触れる。
もみ……もみ……
「ひゃんっ……!」
揉……揉……お尻を、揉っ……!!
101
お気に入りに追加
526
あなたにおすすめの小説

【完結】体目的でもいいですか?
ユユ
恋愛
王太子殿下の婚約者候補だったルーナは
冤罪をかけられて断罪された。
顔に火傷を負った狂乱の戦士に
嫁がされることになった。
ルーナは内向的な令嬢だった。
冤罪という声も届かず罪人のように嫁ぎ先へ。
だが、護送中に巨大な熊に襲われ 馬車が暴走。
ルーナは瀕死の重症を負った。
というか一度死んだ。
神の悪戯か、日本で死んだ私がルーナとなって蘇った。
* 作り話です
* 完結保証付きです
* R18

【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました
ユユ
恋愛
婚姻4年。夫が他界した。
夫は婚約前から病弱だった。
王妃様は、愛する息子である第三王子の婚約者に
私を指名した。
本当は私にはお慕いする人がいた。
だけど平凡な子爵家の令嬢の私にとって
彼は高嶺の花。
しかも王家からの打診を断る自由などなかった。
実家に戻ると、高嶺の花の彼の妻にと縁談が…。
* 作り話です。
* 完結保証つき。
* R18

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

【完結】妻至上主義
Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。
この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。
本編11話+番外編数話
[作者よりご挨拶]
未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。
現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。
お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。
(╥﹏╥)
お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる