92 / 103
そして出会う俺とお前
24
しおりを挟む「少しは落ち着いた?」
「あぁ…ぐずっ…ぐずっ…。」
「泣き過ぎだろ…擦ると腫れるぞ。あー…ほら、タオル。」
「ありがとぅ……。」
声ちっちゃ!興奮して頭に血が上っていたのか、あれから少し喚いてロンバウトは泣き出した。そりゃもう大粒の涙を流して、しゃくり上げて、子供みたいにさ。流石にそうなると心配になってベッドから飛び起きた俺である。
寝室にある一人がけのソファに座らせ、泣き止むまで待つとやっと会話が出来そうなくらいに落ち着いてくれた。一事は貞操の危機だったが、なんとか大丈夫そうである。
目も耳も、鼻だって真っ赤にして号泣したもんだからロンバウトは今までに無いくらい情けない顔をしている。俺が泣かせたわけじゃないなに…罪悪感…。
「あのな?今までの行動でお前が俺の事好いてくれてるのはわかってんだけど、…そこまで執着する理由って、それだけ?」
「………私、まだアルディウスに謝ってないんだ。気持ちが先走って、我慢出来なくて…。」
「あっ、確かに謝られてないわ。」
「あの時は本当にすまなかった。未熟な私は、君の心を手にいれようとするのに必死で、大切な君をとても傷つけた。」
「あれは精神的にかなり辛かったんだからな。誰も味方いないし、家族も頼りにならないし。」
「誰も味方がいなくなれば、アルディウスは私だけを見てくれると思った。それに泣く君があまりに可愛くてつい虐めてしまった。愚かなことだった。本当に、本当に申し訳なかったと思っている…。深く反省したのに、また私は我慢が効かない…迷惑ばかりかけてる…ごめん、なさい……。」
そうロンバウトが言うと深々と頭を下げた。サラリと黒髪が揺れる。手に握りしめられたタオルはクチャクチャになっていた。涙声で肩を震わせるロンバウト。
嘘は言っていないんだろう。俺は直感が働くから、嘘も見抜ける。今のロンバウトは、本当に反省して謝っているのがひしひしと伝わるのだ。
少し前に、タサファンに言われたことを思い出した。好きな子ほど苛めたくなる…あれ。あれが病みすぎて頭のネジ外れまくったのかロンバウト……いや、それはそれで怖い。
「昔と今じゃ全然違うし、お前の好みは可愛い子なら無理して俺に執着するなよ。もう気にしないから。」
「やだ!やだよアルディウス!そんなこと言わないでくれ!見た目じゃないんだ、アルディウスが好きなんだ、ずっと…。頼むから、そんなこと言わないで……私からアルディウスを奪わないで……。」
だからお前のアルディウスじゃないって。とは流石に言えなかった。嗚咽を漏らして縋りつくロンバウトがあまりに小さく見えてしまったのだ。
俺は同情なんてしないし、まだロンバウトのことを完全に許せるほど心が広いわけじゃない。それでも、今のロンバウトを見てしまったら、俺は振り払うことが出来ない。
幼い頃の姿が重なって見えたのは気のせいだろうか。子供のように泣きじゃくる彼を、俺は見つめることしか出来なかった。
16
お気に入りに追加
308
あなたにおすすめの小説

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

悪役令息に転生したので、断罪後の生活のために研究を頑張ったら、旦那様に溺愛されました
犬派だんぜん
BL
【完結】
私は、7歳の時に前世の理系女子として生きた記憶を取り戻した。その時気付いたのだ。ここが姉が好きだったBLゲーム『きみこい』の舞台で、自分が主人公をいじめたと断罪される悪役令息だということに。
話の内容を知らないので、断罪を回避する方法が分からない。ならば、断罪後に平穏な生活が送れるように、追放された時に誰か領地にこっそり住まわせてくれるように、得意分野で領に貢献しよう。
そしてストーリーの通り、卒業パーティーで王子から「婚約を破棄する!」と宣言された。さあ、ここからが勝負だ。
元理系が理屈っぽく頑張ります。ハッピーエンドです。(※全26話。視点が入れ代わります)
他サイトにも掲載。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません
りまり
BL
公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。
自由とは名ばかりの放置子だ。
兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。
色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。
それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。
隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる