実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

文字の大きさ
81 / 103
そして出会う俺とお前

13

しおりを挟む




 俺が今までの生き方を自覚してから、今まで出会ってきた人達の見方かわ変わった。すぐにロンバウト達と会わなきゃいけなくなるけど、前より拒否反応がない。

 なんでだろ?あれかな、気持ちに余裕があるからかな。まぁ、きっと目の前にしたら嫌悪感しかないだろうけど…。話を聞くくらいはするかなぁって。

 最後に見たあの表情も気になる。感情が読み取れない仄暗い闇を感じさせたあの表情の意味はなんだろうか?俺に対する恨みではなかった…もっと、なんかこうドロリとした執念が溶け出したものを隠そうとした感じの、背筋が寒くなるような…。

 ロンバウトがどう考えているのかはわからない。ただ、たった1回出会ったあの時、溶け出した感情からわかったのは俺に向けた欲情なのだけはわかった。

 同じαで、きっと俺のほうが身長は高い。筋肉量は向こうのほうがあった気がするが、それでも俺だってムキムキだし!ちょっと筋肉付きにくい体質なだけだし!

 そんな、ゴリゴリのαの俺を見てあんな興奮するものなのか。頬ずりなんてしたくないよ、俺だったらね。Ωのような可愛らしい要素なんてないはず…ないよね?

 もんもんと考え続ける。場所はまたもやギルドの横にある馴染みの酒場だ。酒を飲みながら耽るにはちょうど良いのである。そんな俺に声をかけてきた男が一人。




 「また難しい顔してんな。」
 「……あぁ、タサファンか。いやさ~、明日になったらあいつらに会わなきゃいけなくてさ~。」
 「あぁ、例のお貴族様方。ギルドマスター喜んでたもんな。あいつらもついに報われる時が来たか。」
 「あれ、タサファンは俺の味方じゃないの?!なんであっちの肩持つのさ!」
 「別にあいつらの肩を持っているつもりはない。純粋に、そう思っただけだ。」
 「なんだよ…。」




 タサファンまでもがロンバウト達と会うことを進めてくる。報われるって何?なんで俺を探し続けていたのか明確な理由も無しにそんなこと言うわけ?

 眉間にシワを寄せて唸るとタサファンは笑いながら何かを思い出すように目を閉じた。



 「6年前のあの姿、今だに脳裏に焼き付いてんだ。お前を探し続けていたのに、いつの間にかまた消えた。期待を一気に絶望へと叩きつけられたような表情……あれは演技じゃなかった。他を恐ろしく思わせるほどの感情だったからな。」
 「タサファンにはどう映った?」
 「あの貴族達か?」
 「そう。」
 「そうだな……狂愛の塊、かな。」
 「きょう、あい……?」
 「お前のことになると、トチ狂うんだ。狂愛以外に何がある。」




 フフッと笑いながら言うタサファンに、こいつ本気で言ってんのか?と、疑念の視線を向ければあっけらかんと言いのけた。



 「お前は確かにあいつらに愛されていたよ。間違いなく、誰よりもな。」
 「信じられない…散々虐められて惨めになって、家では存在しないように過ごしてきたあの環境で愛される要素があるわけない。違うか?」
 「俺が思うに、はイジメたくなる、じゃねーかなって。それが行き過ぎたんだと思ってる。」
 「まさかとは思うけど……その好きな子って、俺?」
 「それ以外ないだろ。よく思い出してみたらどうだ?」




 タサファンに言われて昔を思い出す。まさに美少年であったロンバウトは誰からも好かれた王子様……しかし、俺にだけ冷たくあたる王子様。

 そのきっかけは、なんだったろうか?何故そんなにも冷たくあたるようになったのだろう?……俺は周りの貴族には関われなかった。関わるとロンバウトが制裁をするから。

 ……ん?なんで制裁してたんだ?俺が気に入らないなら俺だけをいたぶればいいんだもんな?……あれ?


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

カミサンオメガは番運がなさすぎる

ミミナガ
BL
 医療の進歩により番関係を解消できるようになってから番解消回数により「噛み1(カミイチ)」「噛み2(カミニ)」と言われるようになった。  「噛み3(カミサン)」の経歴を持つオメガの満(みつる)は人生に疲れていた。  ある日、ふらりと迷い込んだ古びた神社で不思議な体験をすることとなった。 ※オメガバースの基本設定の説明は特に入れていません。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました

彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。 姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

愛しい番に愛されたいオメガなボクの奮闘記

天田れおぽん
BL
 ボク、アイリス・ロックハートは愛しい番であるオズワルドと出会った。  だけどオズワルドには初恋の人がいる。  でもボクは負けない。  ボクは愛しいオズワルドの唯一になるため、番のオメガであることに甘えることなく頑張るんだっ! ※「可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない」のオズワルド君の番の物語です。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

モブらしいので目立たないよう逃げ続けます

餅粉
BL
ある日目覚めると見慣れた天井に違和感を覚えた。そしてどうやら僕ばモブという存存在らしい。多分僕には前世の記憶らしきものがあると思う。 まぁ、モブはモブらしく目立たないようにしよう。 モブというものはあまりわからないがでも目立っていい存在ではないということだけはわかる。そう、目立たぬよう……目立たぬよう………。 「アルウィン、君が好きだ」 「え、お断りします」 「……王子命令だ、私と付き合えアルウィン」 目立たぬように過ごすつもりが何故か第二王子に執着されています。 ざまぁ要素あるかも………しれませんね

処理中です...