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そして出会う俺とお前
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しおりを挟む肌寒い外、俺は朝日が登る景色を眺めていた。昨晩から考え続けた頭はすっかり眠気を忘れたように冴え続けていた。ぐるぐると思考が巡り、何度も自問自答をした。
今のままではいけない。保護者達にこれ以上甘えて過ごすのは良くないが、だからと言って俺を家族と言ってくれた彼らを無下には出来ない。現実であるこの世界で、出会ってからずっと俺を守ってくれた存在だ。それにマーニアム神様がきっかけであれ、いつも側にいてくれたことに間違いなかった。
今更ながらに思う。彼らは本当に俺を大切に育ててくれた。それが20歳からだとしても、この世界で受けることの無かった愛情であるとわかる。
唯一、俺を肯定してくれたと思った。責任感だけではない、彼ら自身がそうしようと決めたことだ、と。
「………なんだ、寝てないのか?大きくなれないぞ?」
「もう十分大きいんだって。コクヨウこそこんな時間にどうしたの?」
「アルが外にいる気配がしたからな。風邪を引いてしまうぞ?」
「馬鹿は風邪引かないから大丈夫……いや、そうだな、家の中にはいるか。」
「なんだ、今日は妙に素直ではないか。そら、ホットミルクでも作ってやるぞ?」
普段はこんな時間には出歩かないのに、こうやって心配して声をかけてくれる。それがハクアでもコハクでも同じだ、彼らは俺の家族だ。
コクヨウに連れられて家の中に入れば、当然のようにハクアとコハクがいて、何故かホッとして涙が出そうになった。こんな安心したのって、いつぶりだろう……無意識に、ずっと気を張っていたのだろうか?
非現実的な世界を、やっと受け入れられた精神はかなり弱っていたのかもしれない。リビングの椅子へ腰掛けると体中の力が抜けて突っ伏してしまった。
「アル様どうしたの~?疲れちゃったのかな~?コハクがよしよししてあげる~。」
「どうやら寝付けんかったようだなぁ。」
「ホットミルク出来たぞ。」
「まだ朝も早い。ここで少し寝るが良いぞ。朝餉が出来たら起こすとしよう。コハクや、面倒を見てやれ。」
「はいは~い。」
手渡されたホットミルクで手元が温まる。ずっと外にいたんだから冷えていてもおかしくないか。ギルドの任務を受けている時だって体が冷える環境にいたこともあるのだから、物珍しいことじゃない。
それでも心配してくれる人がいるだけで俺は現実で受け入れられていると実感するのだ。それを俺は今まで認められず一人で生きていたと勘違いして……いい大人と言われる歳で自覚するなんて、本当に自分は阿呆だなと思うのだった。
「久しぶりに~、コハクがお布団してあげようか~?ユニコーンの毛は肌触りが良くて気持ち良いでしょ~?」
「ならば我とてフワフワな毛並みで寝心地は最高だぞ?どうだ、久しぶりに共に寝るか?アルディウスよ。」
「お前らは騒がしくするから寝られないだろうに。俺が面倒見る。」
「お前では硬くて寝にくいではないか。」
「俺の腹はアル曰く“ウォーターベッド”らしいぞ?ウォーターベッドが何かはわからんがな。寝心地は悪くないと言っていた。そうだろうアル?」
「えっ!?そんなこと言ったのアル様~!コハクが一番だよね~!?コクヨウなんか筋肉ばっかりで硬いじゃん~!」
「あのなぁ!!元の姿になったらコハクのほうが筋肉ばっかりだろうか!雄馬は筋肉しかないたろうが!」
「失礼~っ!図体ばっか大きいくせに~!」
「お前こそ失礼だろ!俺はブラックサーペントエンペラーだ!肉体がデカイのは誇りなんだぞ!」
「こらこら、喧嘩をしていてはアルが煩くて寝れんではないか。」
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