実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

文字の大きさ
上 下
79 / 103
そして出会う俺とお前

11

しおりを挟む




 肌寒い外、俺は朝日が登る景色を眺めていた。昨晩から考え続けた頭はすっかり眠気を忘れたように冴え続けていた。ぐるぐると思考が巡り、何度も自問自答をした。

 今のままではいけない。保護者達にこれ以上甘えて過ごすのは良くないが、だからと言って俺を家族と言ってくれた彼らを無下には出来ない。現実であるこの世界で、出会ってからずっと俺を守ってくれた存在だ。それにマーニアム神様がきっかけであれ、いつも側にいてくれたことに間違いなかった。

 今更ながらに思う。彼らは本当に俺を大切に育ててくれた。それが20歳からだとしても、この世界で受けることの無かった愛情であるとわかる。

 唯一、俺を肯定してくれたと思った。責任感だけではない、彼ら自身がそうしようと決めたことだ、と。




 「………なんだ、寝てないのか?大きくなれないぞ?」
 「もう十分大きいんだって。コクヨウこそこんな時間にどうしたの?」
 「アルが外にいる気配がしたからな。風邪を引いてしまうぞ?」
 「馬鹿は風邪引かないから大丈夫……いや、そうだな、家の中にはいるか。」
 「なんだ、今日は妙に素直ではないか。そら、ホットミルクでも作ってやるぞ?」




 普段はこんな時間には出歩かないのに、こうやって心配して声をかけてくれる。それがハクアでもコハクでも同じだ、彼らは俺の家族だ。

 コクヨウに連れられて家の中に入れば、当然のようにハクアとコハクがいて、何故かホッとして涙が出そうになった。こんな安心したのって、いつぶりだろう……無意識に、ずっと気を張っていたのだろうか?

 非現実的な世界を、やっと受け入れられた精神はかなり弱っていたのかもしれない。リビングの椅子へ腰掛けると体中の力が抜けて突っ伏してしまった。




 「アル様どうしたの~?疲れちゃったのかな~?コハクがよしよししてあげる~。」
 「どうやら寝付けんかったようだなぁ。」
 「ホットミルク出来たぞ。」
 「まだ朝も早い。ここで少し寝るが良いぞ。朝餉が出来たら起こすとしよう。コハクや、面倒を見てやれ。」
 「はいは~い。」




 手渡されたホットミルクで手元が温まる。ずっと外にいたんだから冷えていてもおかしくないか。ギルドの任務を受けている時だって体が冷える環境にいたこともあるのだから、物珍しいことじゃない。

 それでも心配してくれる人がいるだけで俺は現実で受け入れられていると実感するのだ。それを俺は今まで認められず一人で生きていたと勘違いして……いい大人と言われる歳で自覚するなんて、本当に自分は阿呆だなと思うのだった。



 「久しぶりに~、コハクがお布団してあげようか~?ユニコーンの毛は肌触りが良くて気持ち良いでしょ~?」
 「ならば我とてフワフワな毛並みで寝心地は最高だぞ?どうだ、久しぶりに共に寝るか?アルディウスよ。」
 「お前らは騒がしくするから寝られないだろうに。俺が面倒見る。」
 「お前では硬くて寝にくいではないか。」
 「俺の腹はアル曰く“ウォーターベッド”らしいぞ?ウォーターベッドが何かはわからんがな。寝心地は悪くないと言っていた。そうだろうアル?」
 「えっ!?そんなこと言ったのアル様~!コハクが一番だよね~!?コクヨウなんか筋肉ばっかりで硬いじゃん~!」
 「あのなぁ!!元の姿になったらコハクのほうが筋肉ばっかりだろうか!雄馬は筋肉しかないたろうが!」
 「失礼~っ!図体ばっか大きいくせに~!」
 「お前こそ失礼だろ!俺はブラックサーペントエンペラーだ!肉体がデカイのは誇りなんだぞ!」
 「こらこら、喧嘩をしていてはアルが煩くて寝れんではないか。」



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

悪役令息に転生したので、断罪後の生活のために研究を頑張ったら、旦那様に溺愛されました

犬派だんぜん
BL
【完結】  私は、7歳の時に前世の理系女子として生きた記憶を取り戻した。その時気付いたのだ。ここが姉が好きだったBLゲーム『きみこい』の舞台で、自分が主人公をいじめたと断罪される悪役令息だということに。  話の内容を知らないので、断罪を回避する方法が分からない。ならば、断罪後に平穏な生活が送れるように、追放された時に誰か領地にこっそり住まわせてくれるように、得意分野で領に貢献しよう。  そしてストーリーの通り、卒業パーティーで王子から「婚約を破棄する!」と宣言された。さあ、ここからが勝負だ。  元理系が理屈っぽく頑張ります。ハッピーエンドです。(※全26話。視点が入れ代わります)  他サイトにも掲載。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

公爵令息は悪女に誑かされた王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

処理中です...