実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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復帰した俺に不穏な影

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 あららら……俺はマーニアムから受け取った進化した銀の籠手が“アムの神籠手”という立派な装備になっていることを鑑定で知り言葉を失うことになった。

 何かあれば何時でも声をかけてくださいね!なんてルンルンしながらマーニアムは帰っていってしまったので文句も言えない…なんならお礼も言えてない。

 心の中で10回くらいありがとう!って叫んだらなんか心臓バクバクになって死ぬかと思った。なんで……?

 マーニアム的にアルディウスは初めての子であり兄弟であり友である。そんな立ち位置になってしまったことにも気づかず、信仰とは別に純粋なありがとう連打をされマーニアムは大歓喜だった。

 その興奮が俺に伝わったらしく、俺まで興奮したわけだ。美しい装飾のついたアムの神籠手は俺の専用装備にも変わっていて、俺以外は手を通せない仕組みになっていた。

 こんな大層なもの貰ってもお返し出来ないんだけどなぁ…今度お菓子でも作って渡してみるか。プリンくらいなら作れるし。

 あんま考えてなかったけど、この世界のお菓子ってあんま美味しくないよな。甘い砂糖の塊ケーキとか、ガリガリクッキーとか。パンケーキもあるけど、どっちかって言うと甘くないのが主流だし。




 「……なんか、想像してたら食べたくなってきたな。なんか甘い物作れる材料あったっけ?」



 日本食に慣れ親しんだ俺にはこの世界の甘味も物足りないのである。まぁ、前世の独身時代にお菓子も時々作っていたんだ。プリンとか意外と簡単だよね。

 ショートケーキとか食べたいけど、この世界ってまじで食文化進んでないから嫌だよね~。砂糖はあれどグラニュー糖はないし、小麦粉はあれどベーキングパウダーはないし。まぁそれくらいなら代用が効くしな。

 俺が前世にあった豊富な種類のお菓子を思い出していると、あっ!と思いついてしまった。自分が一番食べたいと思っていたお菓子を。



 「そうだ、シュークリームを作ろう。カスタードとホイップがたっぷり入ったやつ。」



 せっかく魔石式の冷蔵庫があるのに、この世界の人間はマジで料理も製菓も興味無い。材料あるなら美味しいもの食べたいって思わないのかな?それとも粉物お菓子以外に発想もないの?アイスは?ゼリーは??チョコレートは???

 なんかそれは残念だよなぁ…この世界で記憶を取り戻して早18年。必死に生活をしている間はそんな気にならなかったけど、いろいろ落ち着いた今は日本で食べた甘い物を思い出すと懐かしくて食べたくなる。



 「そういや薬の一種でカカオに似たのあったな…あれ粉末にしたらココアとかにならないかなぁ。甘い飲み物もないんだもんなぁこの世界…久しぶりに甘~いココア飲みたいなぁ…。」



 俺の頭の中は妄想で膨らんでいく。スタンピートとかそっちのけで思考は甘い甘いお菓子とココアで埋め尽くされ、マーニアムへのお礼の事などすっかり忘れて家を飛び出していた。

 さぁ!お菓子戦争だ!とりあえずカカオと牛乳と卵…あとバター!砂糖を目一杯!!小麦粉と薄力粉はあるからナッツ類をクッキーに混ぜてサクサクなの作ろう!!

 俺は浮かれ気分で街で大量の買い物をし、丸2日をお菓子作りに尽くしただった。ちょっと失敗もあったけど、まぁご愛嬌ということで!


 
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