実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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復帰した俺に不穏な影

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 頭ボサボサでぼんやりしながら目覚めたのは翌日の昼だった。流石に寝すぎた…起こしてくれればいいのに。背伸びをして凝り固まった肩を解しながらベッドから這い出る。リビングには相変わらずの面々がゆったりと過ごしていた。

 昨日は夜ご飯も食べないで寝てしまったから空腹度もマックスである。寝起きなのにゴギュルルル!なんて激しく鳴っていた。

 俺の腹の音に気づいたコクヨウがいそいそとご飯の準備してくれる。その間に歯を磨いて顔を洗うと、やっとパッチリ目が開いた。

 リビングに戻ると温かいスープとベーコンエッグが並べられており、フランスパンに似た硬めのパンをカリカリに焼いたセットが出来上がっていた。

 完全にモーニングセットだ。昼だけど。



 「おはよう?」
 「あぁ、おはよう。どうだ、疲れは取れたか?」
 「うん、ゆっくり寝れたからかなりスッキリした。はぁ~、お腹空いた。」
 「たんと食うが良い。で、西の森はどうであった?」
 「大規模なダンジョンの集合体があって、上位の魔物がうようよしてた。ワイバーンとワームが。」
 「ワイバーンか。煮込みにして食うか。」
 「ワームは焼いてカリカリにしたら燻製みたいになるから美味しいよ~?」
 「君たちは食べ物の話しか出来ないの?」



 この期に及んで食べ物の話である。ここ最近そればっかりじゃないか。普通は上位の魔物を喰おうとは思わないのよ。野性味が強いとかそんな話じゃないのよ。

 ……でもまぁ、俺も食わされてわかったけど魔物の肉は美味い。普通にA5ランクの牛肉みたいなやつとか、大トロみたいなやつもいる。食わねばわからんってやつだね。体に異常も出ないから安心して食える。見た目がエグいだけなのだ。



 「なかなかに規模が大きくなりそうよな。ギルドだけで賄えるのか?」
 「全然むり、何ならヨルダンの騎士団やエンデルクロスの兵を集めても多分蹂躙じゅうりんされると思う。」
 「ダンジョンは~、どんな感じだった~?この前(6年前)にコハクが行ったのと~、どっちが大きい~?」
 「(この前……?)あぁ、3つある内の2つはコハクとハクアが前に行ったのと同じくらいのレベルかな?リーダー格のダンジョンはもっとデカそうだったよ?」
 「え~!コハクまた行きたいな~!ダンジョン面白いから大好き~!」



 白い髪をルンルンに揺らしてコハクがはしゃぐ。この子ったらもう遊びに行く感覚なんだから…あの規模のダンジョンの攻略なんてお出かけ感覚で処理出来ないの、普通はね…。

 さすが長年生きてるだけあって力量は計り知れない。俺もまだ彼らの底を見たことがない。たまにめっちゃ怖いから、おちょくるのも程々に。




 「それくらいの規模ならば久しぶりに肩慣らしに体を動かすのも良さそうだな。」
 「ワイバーンをいくつ落とせるか競うかコクヨウ?」
 「それならばワームをいくつ叩けるかのほうが良い。」
 「(射的とモグラたたき…。)」



 なんでそうゲーム考えてなの?国が必死にどう対策するか考えてるのに…。保護者達からするとその程度なのか…末恐ろしい。まさに縁日へ遊びに行く子供たちである。

 俺は黙々とご飯を食べながら保護者達の話を聞いていれば、実に楽しそうに参加する気満々の彼らだが。果たしてギルドマスターや他の国の責任者さん達は納得するのだろうか?

 あくまで秘密なんだよね、保護者達が神の眷属であることは。非常事態ってことでアントムさんが独断で対応するのかな?



 「コハク早くダンジョン行きたいな~。」
 「時期になるまでは大人しくしててくれ。俺に責任きて怒られるから。」
 「は~い。」


 
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