36 / 103
俺は冒険者として生きている
幼馴染だった王子の嘆き2(王子視点)
しおりを挟む「ここより離れた大型ギルドのある街にて灰色の髪をした齢20歳であろう男の目撃証言がありました。長い前髪の為、瞳の色は確認できませんでした。」
「……大森林ギルドか?」
「えぇ、あそこは多種多様な種族が集まります。灰色の髪も珍しいわけではありませんので、アルディウスと確証が持てる状態ではありませんでした。それに…。」
「さっさと言え。」
「その灰色の髪をした男はαだと思われます。身長が180cmを越える冒険者だと。」
エリンティウスが話す内容に耳を傾ける。今、必要なことは小さな情報でもアルディウスであるという可能性を信じることだ。あの可愛くヒヨコのようだったアルディウスがαだと考えにくいが、絶対などはない。
アルディウスがαであろうと、私の最愛であることには変わりないのだから。
……でも、想像してみる。アルディウスが長身で凛々しくαらしく支配者の力を持ち合わせていたとしたら。鋭い目つきでアルディウスに支配されたら、どれだけ幸せだろうか。ぶるり、体が興奮で震えた。
ぐずりと腹の中が熱くなる。私はαだ、支配する側でありながら、夢見がちな思考回路と従順な体はもしもを想像してαとしての定義がグラグラと傾いたのが分かった。
「……だらしないお顔になっておりますよロンバウト様。」
「うるさい、黙っていろ。」
「大森林ギルドには既に通達をし、アルディウスであろう可能性を考え確認をしに向かいたいとお話しておきます。」
「そうしてくれ。その時は私も向かおう…メンルートにも連絡しておいてくれ。」
私がそう言うとエリンティウスはフンッと小さく鼻を鳴らしてなら一礼し部屋から出て行った。ふてぶてしいあの態度が、俺にだけ向けられていると思うと腹立たしいが、あれは有能だ。
自国の中も、周りも調べ尽くして全くの手がかりなし。隣国のヨルダンはようやく後継者争いが収まり情報交換が出来る環境になりつつある。
もうすぐだ、もうすぐ…きっと次こそはアルディウスに決まっている。そうじゃなければ、また私は絶望するしかない。何回何十回、何百回目も君を求めて探し続けたんだ。
毎日のように、君を思い出しているんだ。最後に見せたあの生き生きとした笑顔が脳裏に焼き付いて離れない…あれは私に対する拒絶だった筈なのに、私の脳みそは都合よく受け入れる。
微笑まれたわけではないのは理解していたのに、あの笑顔は私のものだと無駄に独占欲が強まった。
「月末が終わったら時間が空くな。」
虚しい一人の仕事部屋。考える時間が増えると自然とアルディウスを思い出してしまうのは罪の自覚かただの自愛か……結局、自分の為なのだ。アルディウスを縛って留めて、今度は間違いなく逃さないようにしたいと仄暗い自己満足がぬらりぬらりと、日に日に黒く頭の中をはい回っている。
欲望だけで相手を縛るなんてことをしたいわけじゃない。でも、そうしないといつか自分が壊れてしまうのではないかと恐怖している。
可愛い可愛いアルディウス、潤んだ瞳が甘そうで、大事に大事にに私の宝箱にしまって私だけが愛でたい。
「アルディウス、アルディウス……会いたい……会いたいよアルディウス…
私のアルディウス私のアルディウス私のアルディウス私のアルディウス私だけのアルディウス…。」
3
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。
俺は見事に転生した。天才である俺は前世では魔法を極めた。今世では人間を極める。
朝山みどり
BL
寒さで気づいた。俺、なんでこんなところで・・・・思い出した。俺、転生するぞって張り切って・・・発動させたんだ。そして最後の瞬間に転生って一度死ぬんじゃんと気づいたんだ。
しまった、早まった。ラムに叱られる・・・・俺は未練たっぷりで死んだんだ。そりゃ転生する自信はあったけど・・・・それに転生して自覚持つのがおそかったせいで、こいつを辛い目に合わせた。いや自分でもあるし、心の平和の為にきちんと復讐もするよ。ちゃんとするよ。
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
Restartー僕は異世界で人生をやり直すー
エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。
生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。
それでも唯々諾々と家のために従った。
そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。
父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。
ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。
僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。
不定期更新です。
以前少し投稿したものを設定変更しました。
ジャンルを恋愛からBLに変更しました。
また後で変更とかあるかも。
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
キスから始まる主従契約
毒島らいおん
BL
異世界に召喚された挙げ句に、間違いだったと言われて見捨てられた葵。そんな葵を助けてくれたのは、美貌の公爵ローレルだった。
ローレルの優しげな雰囲気に葵は惹かれる。しかも向こうからキスをしてきて葵は有頂天になるが、それは魔法で主従契約を結ぶためだった。
しかも週に1回キスをしないと死んでしまう、とんでもないもので――。
◯
それでもなんとか彼に好かれようとがんばる葵と、実は腹黒いうえに秘密を抱えているローレルが、過去やら危機やらを乗り越えて、最後には最高の伴侶なるお話。
(全48話・毎日12時に更新)
名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~
沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。
巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。
予想だにしない事態が起きてしまう
巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。
”召喚された美青年リーマン”
”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”
じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”?
名前のない脇役にも居場所はあるのか。
捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。
「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」
ーーーーーー・ーーーーーー
小説家になろう!でも更新中!
早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる