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俺は冒険者として生きている
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しおりを挟む「なんだこれ!」
湖の弁当を食べてから頻繁に料理をする事が増えた俺である。いろんな食材を獲ってきたり買ってきたりするようになった保護者の胃を掴んでしまったのか、奴らは食べたい物を強請るようになった。
自分で作ればいいじゃないか、と前に言ったのだが同じような味にならないらしい。なんでだろう?
あれから料理をする日々だったが、頭の包帯も取れたしそろそろ冒険者として復帰しるかな~、なんて考えていた。久しぶりにギルドカードの情報を見た。
ギルドカードは常に情報が更新されるので、何か新しくお知らせが来ていないか確認することにしたのだが…。
「俺の金がバグっている…!」
ギルドカードにはギルドから支払われる報償金を預けておけるシステムがあるのだが、何故か前の金額が3倍近く増えているのである。おかしい…この前の討伐任務は失敗扱いになっていないとしても、この金額は絶対におかしい…!
俺が養生している間に振り込まれた金額の履歴なんて分かるはずもなく、頭の上には???が飛び交っていた。
「見てしまったか。」
「うわっ!コクヨウ!」
「…………。」
硬い表情でコクヨウは黙り込んでしまったが、妙に不安げな雰囲気を醸し出している。なにをそんな不安げにしているんだろうか?大丈夫か?コクヨウの肩を軽く叩きながら表情を伺うと、眉間のシワが深く刻まれていた。
雰囲気がおかしいコクヨウをリビングのソファに座らせる。こんな時に限って家にはハクアとコハクがいない。困った…。
変な空気になるが、コクヨウがこんな状態になるのは異常だと判断し、とりあえず落ち着く為にお茶を煎れることにした。
「コクヨウ?どうしたんだ?お前らしくないなぁ。」
「……俺、は…アルに謝らなきゃいけなかったのに…。」
「あれ?なんかしたっけ?」
「お前がその、怪我をしたのは…俺が、自身の力を見誤ったからだ…。」
「はえ?」
「俺があの時!冷静さを欠いて魔力を暴走させた!お前はそれに巻き込まれた……。」
「まぁ、理不尽だな~とは思ったけどあれはギルドマスターも悪かったしなー。コクヨウのせいだけじゃないよ?」
「しかし……!」
「その話は終わり!お茶飲んで少し落ち着いて?」
コクヨウの様子がおかしい。そんなことで動揺するような性格じゃあないだろうに…。
「アルが赤子…か弱いと知っていたはずなのに…。」
「いやそれ訂正して!?俺は赤ちゃんじゃないってば!!」
「あの時…アルが死んでしまったのではないかと背筋が凍る思いだった。しかしお前はちゃんと目覚めてくれた…俺には償わねばならぬ罪がある…。」
「怪我なんてして当たり前の冒険者なんだからそんな重大な事のように考えなくて大丈夫だって!今では殆ど回復してるし?」
「それでは俺の気が済まぬ…。だから、どう償えば良いか考えた。」
もちろんお前を守るのは当たり前だから、それ以外の方法として、俺がアルの代わりをしようと思ったのだ。
そう言ってコクヨウは何度もすまない、すまないと繰り返す。俺の代わり…?そこでハッとしてギルドカードを思い出した。つまり、俺の代わりに任務を受けていたってことか!?
納得、この金のバグり方はコクヨウのおかげだったんだな。これ金額だと豪遊がてら旅行も行けちゃうんだけど…。コクヨウに金銭感覚ないのがよくわかったよ。
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