実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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俺は冒険者として生きている

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 ギルドから帰ってきたコクヨウとコハクにハクアが連絡を取って合流し、散歩ついでに弁当を持って湖に向かったわけだが。

 俺には疑問がある。なーんでこいつらはこんな頻繁にギルドに出入りしてるの?ハクアに聞いても笑って話を濁される。気にする必要はないということらしい。

 無理矢理聞き出すことも出来ずにいるが、まぁ自分に不便があるわけでもないので放っているが、やはり気になる…仲間はずれかな?




 「アル様がご飯作ってくれるなんて幸せ~!楽しみだな~!」
 「怪我はしてないな?指を切ってないだろうな?」
 「コクヨウそこ心配するの?お前らが来る前は毎日料理してたっつの!」



 どんだけ心配なんだよ…俺が怪我してから過保護に拍車がかかって大変である。コクヨウに関しては、なんだか責任を感じているのか俺が何かしようとする度に気にしてくれるが、……気にしすぎである。

 今も俺の足元を気にして躓こうものならすぐ抱えようとするから困る。足腰弱っちゃうよ俺…。

 コクヨウと押し問答をしつつ湖に着くと、コハクが辺りを一周してからシートを広げた。辺りに危険がないか確認してきたらしい。こいつら以上に危険な奴なんていないから安心してるよ、問題ない。

 ハクアが早々にお重箱を開けて並べると、テノールの声でキャイキャイはしゃぎながらコハクが弁当を眺めていた。テンション高いなぁ。



 「凄い、キレイ~!これなに~?オムレツとは違うね~!」
 「玉子焼きだな。俺の好みで少し甘めにした。」
 「これは…ライスか?」
 「握って焼いたやつね。俺の故郷ではおにぎりって呼んでた。焼いてあるから焼きおにぎりだな。」
 「東の諸島から仕入れた調味料で作ったものだそうだ。良い香りがするな。」




 待ちきれないようなので早々に食べ始めると、みんなモクモクと食べ続ける。文句がでないので、不味くはないみたい。味噌の焼きおにぎりを頬張りながら様子を伺いつつ、亜空間魔法で保管していた味噌汁(豆腐とワカメ、ヤマト諸島で購入)をよそう。




 「味噌汁飲む?」
 「これなに~?」
 「その味噌の焼きおにぎりで使った味噌を湯に溶いて味を整えたやつ。白いのは豆腐な、ヤマト諸島で買った。材料は醤油や味噌と一緒だぞ?」
 「なに?これもか!見た目も味も違うのに不思議なものよ。」
 「ヤマト諸島は故郷と似た食材がたくさんあって助かるんだよな。次はデザートでも作ろうか?この世界は粉ものデザートばっかで食い飽きた感あるし。」




 あむり、唐揚げを口に放り込みながら言えばコハクが期待の眼差しでこちらを見てくる。甘い物は正義なのだ。

 大きな口でおにぎりを食べているコクヨウは甘い物には興味がないが、醤油の焼きおにぎりを大層気に入ったのかそればかり食べている。……コンビニにあるおにぎりの倍はありそうなのを二口で食うとかどうなってんだ、こいつ…。



 「この唐揚げは至高だのう。」
 「味付けを変えるともっと唐揚げの幅が広がるよ?次は辛いのにしようか。」
 「それは楽しみだ。」
 「焼きおにぎりは食いごたえがあっていいな…腹にどっしりくるのがいい。」
 「コハクはこのお野菜にかかってるソース好き~!これなに~?」
 「あぁ、マヨネーズな。簡単に作れるぞ?今度一緒に作るか?」
 「ほんと~?楽しみ~!」



 
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