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俺は冒険者として生きている
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しおりを挟む「……ツヤツヤだね。」
「いやぁ凄いね、秘薬に使われる材料ってやつはさ…ははは……。 」
「うわっ、もちんもちんだぁ。」
「お陰で毎日なでくり回されて大変なんだ。」
俺が大怪我をしたって話を聞いたマルさんがお見舞に来てくれた。まだ包帯は取れないけど、あの秘薬の材料で作られた黒くて臭い薬…通称ドブ薬(と、俺は勝手に名付けた)を飲まされ続けて1週間もすれば、再生力がばんばん働いて肌質が赤ちゃんみたいになっていた。なんなら髪も綺麗になった。
普通顔の俺ですらなんか俳優になった気持ちにさせられる美肌に戸惑っていると、毎日もにもにと保護者達が触りに来る。
とくに頬の弾力が気持ち良いらしく、数時間おきに揉まれている。俺に逃げ場はないのだ…。
「まぁさ、元気そうで良かったよ。」
「ご心配おかけしましてすいませんでした。」
「しっかし、君いつの間にあんな立派な男達引っ掛けたの?君、αだよね?αより屈強男子捕まえてどうするつもり?」
「いやあれ保護者枠だから…。」
「でも若いよね?傍から見たら保護者なんて隠し事の言い訳にしか聞こえないよ。」
「隠し事なんて誰でも持ってんだから深入りしてくれるな。あいつら暴れると手に負えないんだからな!」
暴れられてこんな怪我しました!なんてマルさんに言えるわけなく俺は複雑な気持ちで口を紡ぐと、空気を読んだマルさんからの質問はそこで切れる。俺は別に特別扱いしてほしいわけでもないから、保護者達の正体がバレたことによって不自由な暮らしになるならきっとこの街から出ていくだろうな。
いざとなれば人里でなくともいいわけで。暮らそうと思えばどこでも良いような気がしてくる。魔法でなんとでもなる。
マルさんに頬をもにもにされながら考えていると、不意に頭上が暗くなったので何事かと視線を向ければ、すぐ近くにコクヨウがいて俺を見下ろしていた。
「うわっ、急に現れるなよ。驚いたわ。」
「昼飯の時間だ。」
「普通に声かけてくれよ。マルさんビックリして固まっちゃったじゃん。」
「危害は加えておらん。」
「はいはい、マルさんお昼ご飯食べていく?今日はハクアが作ったから肉だと思われる。」
「……いや、お嫁さんが待っててくれるから帰る。早く治って仕事出来るといいねアル。」
「もう少しの辛抱だから頑張る。」
ドブ薬さえなけりゃこんな怪我へっちゃらなんだけどね。すっかり怪我をした場所から魔力の名残は消えて、もうほぼただの傷なのである。
魔力が中和されつつあるのに、まだドブ薬飲ませるからこんな俺はプルンプルンなんだな…もちもちは嫌いじゃないけどね。
マルさんと別れの挨拶をし、コクヨウが見送ってくれる。保護者達はすっかり大森林ギルドでは馴染んでいるようでマルさんとも仲良しだ。
俺だけがあの討伐任務から置いてけぼりな気がして寂しいので気合いで早く治さないとなぁ。
「少し動けるようならキッチンに行くと良い。ハクア様が張り切って肉を刻んでおられたからな。」
「また離乳食みたいな噛みごたえないご飯じゃなきゃ良いなぁ…。」
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