実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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俺は冒険者として生きている

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 「で?あれはなんだったのかな?」
 「いやぁ…なんと言うか、すいませんでした…。」
 「アル?私が聞きたいのは謝罪じゃないとわかっているよね?」
 「俺の口からは詳しく言えないんです!だから、すいません!許して、解放してギルドマスター!!」




 俺は一人、椅子にぐるぐる巻にされて拘束されている。目の前には目元が影になって表情の覗えないギルドマスター、アントムさん。隣にはヨルダン騎士団の団長さん。

 ジタバタと暴れて何とか拘束が解けないか必死に藻掻くも、ギルドマスター直々に縛られたので、簡単には抜け出すことができない。特殊なこぶ結びでギチギチに結ばれた縄はびくともしないのであった。

 俺がこうなってしまった理由は言わずもがな、あの自由奔放な三人衆のせいだ。あれからハクアとコハクは宣言通り気配を消してダンジョンへと向かってしまい、朝方になってダンジョンの核とも言えるダンジョン・コアを回収、自慢げに土産だと俺に渡し、コクヨウも宣言通り俺から決して離れず過保護に拍車がかかり近寄るもの全てに威嚇して冒険者達を困らせたのである。

 そんな状況で寝ることなんて出来ずにオロオロと俺は状況を眺めることしか出来ずにいた。そして、予定よりもかなり早い時間で大規模討伐任務は終了。ダンジョンは解体され魔獣は一時的に出現しなくなったのだった。

 困ったことにやはりギルドマスターは俺の周りにいた者達をしっかりと見ており、コクヨウが一旦ハクアとコハクに合流した隙を狙って俺を捕獲したのだった。




 「珍しくアルが人を連れて歩いているなと思っていたが…あれは人ではないね?あれは、なんだい?」
 「俺の、……保護者的な?」
 「保護者?君には肉親がいないと思っていたが、兄か何かなのかい?」
 「みんな血は繋がってない。ちょっといろいろあって勝手に親代わりを名乗られている感じですね。」
 「………んん?意味がわからない。」
 「それは俺もずーーーっと思ってる。」



 この見た目で赤ちゃんだと思われてます、とは流石に言えなかった。恥ずかしいし。アントムさんが言いたいことはよく分かるし、騎士団長さんも困惑しているのも分かる。

 俺だってまだ出会って間もないのに、まさかこんな巨人達に抱え込まれるとは思っていなかったもん。

 そんなことを思っていても解放はしてくれない。さて、なんて言い訳しようか考えていたら、視線の先…ギルドマスターと騎士団長さんの背後が歪む。あっ、と思った時にはそこには見慣れた男達…。




 「我が子に何をしておるか、人間風情が…噛み殺してやろうか?」
 「可愛いアル様に痣なんか出来たら~、コハク許さないからぁ~……滅多打ちにしてあげる~…。」
 「赤子になんてことをしていやがる!許さねぇ、捻り潰してくれるわ!」




 シュッとね。来たよ、過保護達が。俺が縛られているのを見て勘違いしてキレ散らかしてる…!やばい、これはヤバイぞ!!



 「待て、俺は大丈夫だから!キレる前に俺を解放しろ!話はそれからだ!!」
 「待てぬぞ。アルディウスに危害を加える輩は万死である。」
 「やめて!お世話になってる人だから!こっ、これはその人の趣味に付き合ってるだけだから!勘違いするんじゃない!」
 「悪趣味共めぇ!」
 「おい私はそんな趣味などないぞ!」
 「あ~っ!!じゃあやっぱりアル様に痛いことしようとしたんだ~!許さないんだからぁ~!」
 「頼むから先に俺を解放しろーっ!」



 
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