実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

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俺は冒険者として生きている

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 夕方、作戦開始時間になる。魔獣は夜に活発になる種類が多い。それをあえて狙って前線組が奇襲をかける。足の早い魔獣が大体最初にが群れでくる。次にゴブリン、朝方になると昼でも活動するオークなどが動き出す。

 足の早い魔獣の群れを相手するのはとても面倒だ。1匹であれば対処可能な狼型の魔獣も、10匹集まればグンッと討伐レベルが上がる。ベテランの冒険者がパーティを組んで相手をするのが殆どだ。

 基本的に単独で任務を熟す俺は、毎回行われるこの討伐任務ではいつも最前線に配置されている。理由簡単で、人が近くにいると巻き込む可能性が高いからだ。

 神様からのギフトで貰った魔力制御(極)のお陰で魔法に関しては問題なく学び、成長できたが問題は魔力を施した体術のほうだった。

 肉体強化、という自分の肉体に補助魔法をかけるものがある。うまく扱えれば通常の何倍ものパワーを扱えるようになる。普通は持てないような重さのものを持てるようになったりするのだが。

 便利な魔法だが、俺には相性が良すぎてしまった。ギフトの魔法制御(極)が働きすぎているのか肉体に補助魔法をかけると予想の数倍以上の効果が出てしまったのだ。

 俺は人をふっ飛ばし、複雑骨折をさせてしまったことがある前科者なのである。深く反省して以来、俺は単独で行動するようになった。ギルドマスターもそこら辺を配慮してくれて、難しい任務は一人で思い切り動けるようなものを選んでくれている。

 今回も、俺が言わずとも最前線に配置してくれていた。他にも上位冒険者の面々がいるが距離を取ってもらっている。

 いろんなことを考えていると、遠くで鐘が鳴る。どうやら魔獣が動き出したらしい。それを皮切りに前半組である最前線の面々が一斉に武器を構える。




 「戦闘準備!接触まで100m切りました!狼型が多く最大30以上の群れ、後方にはティーンドラコも複数います!」
 「南方面よりゴブリンも複数接近しています!」
 「後方にはホブゴブリンも……杖持ちが見えます!魔法攻撃に備えてください!」



 望遠魔法で魔物の動向を探る魔法使い部隊による指示で一斉に最前線に配置された冒険者達が駆け出す。俺も腕に巻いた籠手を確認し、よし行こうと気合をいれる。

 補助魔法の肉体強化をしっかりかけて一気に駆け出そうとした瞬間であった。グンッと襟首を掴まれぐえっとなる。




 「なんだ、随分と面白い事をしようとしておるなアルディウス?」
 「急に走ると転ぶぞ?足元に気をつけろ。」
 「コハクの背中に乗せてあげようか~?速く走れるよ~?」



 ぶらんっ、と手足が宙に浮く。聞き覚えのある声に顔だけ動かせば案の定、ニマニマと笑うハクアと目があった。その背後にはコクヨウがいて、こいつが俺の襟首を掴んでいる張本人。コハクは楽しそうに鼻歌を歌っている始末…。




 「お前ら邪魔するな!俺は仕事しなきゃいけないの!コクヨウ離せ!」
 「できん。赤子は大人しく寝る時間だ。」
 「赤子じゃねー!!」
 「なに、人間が魔獣を狩るには時間がかかるだろう?我らが手をかしてやろう。」
 「目立つから駄目だ!ギルドマスターに見つかると俺が面倒事に巻き込まれる!」
 「その時は~、コハクがお話して黙らせてあげるよ~?安心して~?」
 「安心できるかアホーっ!!」



 
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