実はαだった俺、逃げることにした。

るるらら

文字の大きさ
上 下
18 / 103
俺は冒険者として生きている

9

しおりを挟む




 クタクタだった俺は風呂上がりにはもうぐっすり寝入っていた。ソファの上で意識が切れた気がするが、朝起きたらベッドの上にいた。

 ただし身動きできず。なんでだと思う?自分よりデカイ図体に挟まれていたら身動きできなくなるに決まってるだろ!



 「こらーっ!狭いベッドに無理矢理入り込むな!」



 足蹴にしようにも体格の良い面々に挟まれているので動かせそうにない。仕方ないので大声で訴えてみても少し唸るだけで起きる気配がない。

 隣では眉間にシワを寄せて俺を抱えて寝ているコクヨウに、逆隣には気持ちよさそうに鼻をプスプスならして寝ているコハクが俺の腹を枕にしていた。

 よくこんな状態で起きなかったな。なんて思いつつも、今日は朝早くから魔獣討伐任務の集会があるのだ。準備をしなくてはいけないのに。

 ぐおおおっ!なんて力任せに引き剥がしにかかるもびくともしない。困った…。




 「ワハハ、朝から元気よなアルディウスよ。」
 「あっ!ハクア!頼むからこいつら引き剥がしてくれ!」
 「随分と可愛がられておるなぁ。」
 「そんなこと言ってないで助けてください!俺、今日は集会あるんだ!準備しないといけないんだ!」



 和やかにこちらを見て笑うハクアに助けを求めてみるが、愉快に笑うだけで助けてくれる様子はない。

 俺が暴れれば暴れるほど寝ているコクヨウの拘束が強まる。いでででで!体が軋むほど抱きかかえられてしまえば悲鳴に近い声が出る。藻掻く俺の揺れに腹を枕にしていたコハクが目を覚ます。

 むぅ~、なんて腹に頭を擦り付けてからゆっくりと体を起こすハクアに、俺は必死に助けを求める。ハクアは頼んでも助けてくれない!



 「コ、コハク助けてくれ!このままじゃ死ぬっ!死ぬぅー!!」
 「むにゃ…アル様ぁ…?」
 「あだだだだっ!歪む!俺の体壊れちゃうって!」
 「にゃにして………はっ!」



 寝ぼけ眼を擦ってからコハクはこっちの様子に気づいたようで、驚いた顔をしてから急いでコクヨウを引き剥がす。しかしながら力はコクヨウが勝っているのか腕を引き剥がそうにもびくともしない。

 怒ったコハクは熟睡しているコクヨウの顔面をバシバシと平手打ちをしまくる。まさに滅多打ちである。コハクの攻撃に少し拘束が緩み、体が痛みが収まる。しかしまだ解放されるにはまだまだ…。



 「おバカ~!か弱いアル様になんてことしてるの~!」
 「頑張れ!頑張れコハク!」
 「待っててねアル様~!僕が助けてあげるんだからね~!えいっ!えいっえいっ!」
 「うぐっ、ブッ…!………おいっ!てめぇ何しやがる!」




 バシンバシバシっ!と激しいビンタを何回かされた後にコクヨウがキレながら起きた。俺はまだ解放されていない。

 ぎゅうぎゅうに押しつぶされて声も出せずに数十分も戦う羽目になった。コクヨウとコハクの言い争いを聞きながら思う。これはいつ終わるのだろう…俺は暫く振り回されるのだった。



 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

悪役令息に転生したので、断罪後の生活のために研究を頑張ったら、旦那様に溺愛されました

犬派だんぜん
BL
【完結】  私は、7歳の時に前世の理系女子として生きた記憶を取り戻した。その時気付いたのだ。ここが姉が好きだったBLゲーム『きみこい』の舞台で、自分が主人公をいじめたと断罪される悪役令息だということに。  話の内容を知らないので、断罪を回避する方法が分からない。ならば、断罪後に平穏な生活が送れるように、追放された時に誰か領地にこっそり住まわせてくれるように、得意分野で領に貢献しよう。  そしてストーリーの通り、卒業パーティーで王子から「婚約を破棄する!」と宣言された。さあ、ここからが勝負だ。  元理系が理屈っぽく頑張ります。ハッピーエンドです。(※全26話。視点が入れ代わります)  他サイトにも掲載。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

公爵令息は悪女に誑かされた王太子に婚約破棄追放される。

克全
BL
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

処理中です...