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俺は冒険者として生きている
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しおりを挟む目的地はやっぱり泉で、そこにいたのは白い馬。角が1本額から伸びている立派な雄馬はこちらに気づいたようで優しそうな瞳でこちらに視線を向けた。
泉には他の魔獣などはいないようで静かな空間が広がっている。ブラックサーペントは大きな巨体をに白馬へと移動させた。どうやら仲良しらしい。
離れた場所から様子を伺っていると、白馬は嘶く。こちらに来いと言わんばかりにブルブルと喉を鳴らしてくる。見たことない角の生えた白馬…近寄って問題ないと信じたい。
そろりそろりと近寄ると、遅いと言わんばかりに鼻先で背中を押される。泉のすぐ側まで押されると、そこには小さな犬がいた。
「………なんだ?怪我してるのか?」
怪我以外にも大分衰弱しているように見える。抱きかかえると冷たい。かなり冷えているな。俺は上着を子犬に巻き付けて温める。
この子犬がなにかは分からないが、どうやらブラックサーペントや白馬の心配事はどうやらこの子犬らしい。銀色の綺麗な毛並みはフワフワで気持ち良い。
ポーションは人間用だから多分効かないよな?回復魔法で良くなるとも思えないし…取り敢えず怪我の手当だけするか。
魔法で自分の周りの空気を温めながら怪我をしている場所に浄化の魔法をかける。止血しながら薬草で作った傷薬を塗りこんで綺麗な包帯を巻く。空間魔法に保管していた保存食の干し肉とライスをとろとろになるまで煮込んでエサの準備をしておく。
「……怪我もそうだけど、これまさか魔力欠乏症か?魔獣ならあるはずの魔力が弱いな。魔力回復の見込みがないとなると分け与えるのが一番手っ取り早い。人間の体内に一度入った魔力じゃ魔獣にはあわないし……さて、どうしたもんかな。」
ほくほくと体がどんどん温まっていく中で、どうしてこんなことになったのか考えを巡らせる。
意識が回復したらなんらかの方法を考えよう。瀕死なわけでもなさそうだしな。覗き込んでくる白馬に、取り敢えず今は命に問題はないと言うと俺の隣に居座るようで巨体を倒した。
ブラックサーペントは俺の真上から覗いてくるので圧力がすごい…見張られているな、これ。
しばらく子犬の体を温めていれば、意識が戻ったのか耳がヒクヒク動いた。取り敢えず飯食わせるかな。上着を捲って顔を出してやれば微かに目を開いてるのが分かる。
「よし、飯食えそうか?」
『クルルル…。』
「ん?食欲ないか?じゃあ水は?ミルクは流石に持ち歩いてないしな…えーと、どうすればいい?」
『カプッ……チュウ、チュウ…。』
「あらら、俺の指を吸うのね。まぁいいけど…。」
満足そうに指をしゃぶる子犬を撫でながら様子を見ていると、なんだか俺の力が抜けていく。
どうやら、指しゃぶりで俺の魔力を啜っているようだ。人間の魔力そんな飲んで大丈夫なのか?
見た限りは問題は無さそうなので暫くこうしているか。本来の目的であるブラックサーペント討伐がまさかの子犬の子守になるとは思わなかったなぁ。
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