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俺が逃げだした理由
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しおりを挟む真っ白な神域で、さらに真っ白な陶器のカップ。中には温かな湯気を出す紅茶。それを目の前に置かれる。目の前に座る神様は笑みを絶やさずジッと俺を見ているのでドキドキが止まらない。
美人さんに見つめられてドキドキしているような感覚で落ち着かないので、早々に話を切り出してもらう。まぁ、きっとバースの話なんだろうけど。
『アルディウス、貴方がいた前世にはバースは存在しませんでした。その影響が出ているのか、どうやらエラーが出てしまったようです。』
「出ちゃったなら仕方ないよね。特に不自由することはないから大丈夫だと思う。」
『もう少しこの世界に魂が馴染めばおのずと結果が現れるはずです。貴方がこの世界で覚醒してまだ2年と5ヶ月…私が少し調整しますので、あと数日もすればバースも判るようになりますよ。』
神様はそう言ってくれる。この世界で第二性のバースというのはとても重要なんだなと再確認させられる。
俺からすると、家出計画を実行するとなった時に正直バース不明は有り難いと思ってしまった。だって身分証明をするには性別と第二性も重要な項目になる。今、この状態で姿を消せば俺を探しにくく出来るはずだ。
そのうちバースが確定してくれれば冒険者登録も出来る。遠くに逃げれば家族や幼馴染の王子とも合わなくて済むようになるのだから。
俺はそれを目標にこの2年頑張ってきたんだ。運が俺に味方してくれているぞ!にんまりと口元が笑みで歪んでしまうのは仕方ない。
『……アルディウス?貴方、どこに向かうつまりです?隣国はやめなさいね、今は後継者争いでピリピリしてますから。』
「あれ?俺が家出するの止めないんだね神様。」
『止める必要などありませんからね。今の貴方ならば自由に過ごすことも容易いでしょう。』
「まーね、転移魔法と空間魔法を覚えられたらこっちの物だ。出稼ぎに俺くらいの子供がウロチョロしてんの珍しくないしな。」
10歳くらいの子供が出稼ぎに街にいるのは珍しいことじゃない。平民の子供は親と一緒に商品を売りに来たり、貴族が雇って仕事させたり。学校に行く子供のほうが少ない社会なのである。
俺は平凡な灰色の髪だし、目元さえ隠せば身バレしないと思う。はじめは住み込みで雇って貰えれば後は成り行きで何とかなるだろうと俺は考えていた。
『海を渡った先の魔獣が多く住む大森林に連合ギルドがあります。そこを拠点にするのをオススメしますよ。』
「流石に海を渡るのは時間かかるし金の無駄遣いは避けたいんだけど。」
『では、折角なので私が神域を利用して転移させましょう。貴方のことですから、もう準備は万端でここまで来たでしょうから。』
「神様は何でも知ってるなぁ。まぁそうなんですけど。」
神様の提案はとても魅力的である。一瞬でそこまで逃げれるなら助かる。きっと神様がオススメするくらいだから仕事も見つけやすいんだろう。
俺は素直に神様の提案に乗り、ゆっくりとお茶をしてから転移されるのであった。紅茶が最高に美味しかったです。
そうして俺は神域を通って転移した。俺はこれから自由に生きるので心配しなくて大丈夫だからな!じゃあな!
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