頭のおかしい彼氏から逃げたい

るるらら

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彼は不倫をしている

1 浮気彼氏

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 もう何度目なのかわからなくなっていた。私を愛すると言って笑う彼氏が浮気をしているのを見るのは。頭が痛い…なんでこんな糞みたいな男と私は付き合っているのかって?単純に顔が良くて、夜のテクニックが素晴らしいからである。そんな彼とはもう4年付き合っていて、去年から頻繁に浮気を繰り返すようになってしまった。

 まさに王子様のような美しい彼と出会ったのは会社の新入社員として出社した初日だった。自分の教育係をしてくれていた上司の弟にあたり、同じ会社で働いている人だった。たまたま挨拶を交わして以来、彼とは頻繁に会話をするようになって、その半年後には交際がはしまった。

 彼の名前は日向 俊樹ひゅうが としき。私は新島 飛鳥にいじま あすか。彼は私の2つ年上でかなりモテる。そりゃ王子様のような甘いルックスをもって紳士ならば誰でも恋をすると思う。私もそうだったし、彼に憧れを抱いた後輩は見るたびにうっとりしていた。そんな彼が、急に浮気をするようになって噂を聞いた女子が群がって、私は嘲笑う対象になって会社ではかなり屈辱的な思いをした。勿論、俊樹とは大喧嘩して別れる別れないの話し合いを何度もした。俊樹は絶対に別れないって言い張って、潤ませた瞳で何度も縋って許してと言っていた。

 始めのうちは反省したのだと思い、許した。これがいけなかったんだと思う。それ以降は同じことの凝り返し。私は何度も浮気するなら別れてよ!と言っていたのに、そのたびに甘くささやいて恋人関係をダラダラと続けてしまっていた。そして、今回の一件で完全に私の堪忍袋の緒が切れた。なんなら粉々になって未練と一緒に消え去ったわ。



 「なんでよりにもよって…後輩ぃ?!私を散々馬鹿にして嘲笑っていたあの後輩ぃ?!私、アンタに相談までしてたのに一緒になって馬鹿にしていたのか俊樹ぃーっ!!!!」


 私の怒号が会社に鳴り響く。目の前の光景に怒りで自分の顔が真っ赤になったのが分かった。ここは会社の女子トイレの個室の前…なんでこんなところに男の俊樹がいるかって?腰を抱かれた後輩までセットなんだから大体の想像はつく。非常識にもほどがあるだろう!!!この場所はオフィスから離れているトイレで社員はあまり使う機会がない。そんな場所を選んだことも、何をしようとしていたのか物語っている。呆れてもう言葉もない。

 震える肩を何とか落ち着かせて、もう憎悪の対象になった2人を睨んだ。何事かと他部署の社員も集まってくる。こんなのもう私にとっても恥さらしじゃないか。ジワリと涙が浮かんだ。視界は歪んでもうはっきりと目の前の2人を見ることはできなかったけど、もうどうでもよかった。

 トイレから飛び出して一目散に自分のデスクに向かう。前々から決めていたことを実行するいい機会かとも思った。乱暴に荷物をまとめ始める私を奇怪な目で見る同僚。慌てた様子で駆け寄ってくる教育係だった俊樹の兄。暫くして追いかけてきたのか激しい足音と俊樹の声がする。だが、もう私は限界である。今までのことを、全部捨ててしまおう!

 最後に鞄の中に入っていた退職届を勢いよく俊樹の兄に叩き付けた。紙なので勢いはすぐになくなってしまい地面に落ちていったが、その文字を見てぎょっとした様子になった。異様な様子に誰も声をかけてこないのは都合がいい。退職金なんていらんわこんな会社!


 「限界です!辞めます!!」
 「飛鳥さん?!えっ、あのどうしたのいきなり。」
 「貴方の弟様に愛想が尽きて、もう会社の女子たちに馬鹿にれるのも限界なんです!浮気を容認するような会社にいたくないんですよ!!」


 言葉の通り、会社…この部署と彼のいる部署の上司は俊樹の浮気を容認している。彼は営業部で成績は常にトップであり部長のお気に入りである。私が相談しても意味がなく、痴話喧嘩だろうとろくに取り合ってもくれなかった。私はそんな環境で我慢し続けてきたのだ。もう、こうなってしまったのならば全てを捨てる覚悟が、私には出来上がってしまっていた。怒りでアドレナリンが出ていて興奮している。ガンガンと頭が痛くなってきた。


 「なっ、また痴話喧嘩かい?」
 「人気のない女子トイレで堂々とやらかしているのが痴話喧嘩の内容だというなら、私は貴方を軽蔑します!もう会社にも来ません!こんな惨めな女子社員なんていらないでしょう?!部が平和になってなによりですね!」
 「待って!詳しく話を…!」
 「結構です!こんな会社の退職金なんていりませんし、誰とも関わりたくない!」


 怒鳴るように言えば、上司は言葉を失ってしまって部署内はシーンとなった。言い切って気持ちが少し楽になったのかやっと涙が溢れてきた。鼻水も出てきた。もう帰って県外に引っ越す準備しよう。


 「飛鳥ちゃん、ごめん!まって!おれ、飛鳥ちゃんがいないと寂しくて死んじゃう!謝るから、もう本当に絶対こんなことしないから!」
 「なら寂しがってるチ〇コを大好きな女にでもしゃぶらせてろ、このヤリ〇ン糞やろう!!くたばれ!!!」


 追いついた俊樹がこの期に及んでまだ縋りついてくる。私は渾身の一撃を顔面に食らわせて唖然とする面々を無視して会社からでていった。ケータイは会社のゴミ箱に捨ててやった。これでもう連絡はとれまい!ざまあみろ!!


 
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