【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら

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オマケの一コマ

オマケ 2

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 「お久しぶりですアメリ嬢。」
 「えぇ、卒業式以来ですわね。」


 アメリとエディカは1週間後、ついに会うことになった。早く早くとエディカがせっついて怒涛の1週間であった。あまり乗り気ではなかったアメリを他所に兄がせっせと準備を進め、キラキラの宝石の付いたネックレスや普段着ないようなドレスまで用意されており、アメリは絶句するしかなかった。

 元々は男である為、ドレスを着ることに抵抗があったが、子供時代は仕方がないとなんとか我慢していた。技術者になると、動きやすい格好をしていても文句を言われなくなった。なので、まさかただの顔合わせでドレスを着ることになるとは思わなかったのだ。

 アメリは抵抗したが、幼い頃よりお世話をしてきたアメリ付のメイドであるチェハに裸に剥かれ風呂に入れられ、マッサージをされ……準備だけでクタクタにされ大人しくドレスを着せられてしまった。

 そうして午後になりエディカが公爵家にやってくると、両親と兄が出迎え中庭に案内された。そうしてアメリとエディカは2人きりされ、今に至る。

 久しぶりにエディカと会ったアメリは、彼が何故こんなに喜んでいるのかさっぱりわからない。そんなにウチの研究室にはいりたいのだろうか?それだけだったら喜んで受け入れられるのだが、万が一、跡継ぎなんかの話になったら困ってしまう。悶々とアメリは悩み続けることになる。


 「早速ですけど、どうです?私、中々の優良物件だと思うんですけど。」
 「いきなりですねぇ…。」
 「これを逃してしまうと、もうチャンスが巡ってこないでしょう?」
 「チャンスとは?」
 「それはアメリ嬢との結婚ですよ!早々に婚約なんかしてしまって、諦めていたのに…まさか破棄されたなんて!こんなチャンスないでしょう!?」
 「そんな大袈裟に言わずとも…。」


 エディカの勢いのある声にアメリは困惑したように顔を顰めた。アメリは男と友人にはなれるが、恋人にはなれない。それこそヒューリックの時のような矯正でなければ尚の事。まだエディカは男臭くなく女顔で体格は研究者らしく筋肉質ではない。まだマシなほうかと思ってしまった。

 エディカは綺麗な顔をしている。女装しても違和感はないだろう。そういう意味を含めて彼自身が言った優良物件は間違いない。しかしエディカはアメリを女性として好意を寄せている。果たしてその好意に耐えられるのと不安になってしまう。

 アメリが悶々と悩んでいる間、エディカはずっと大人しく返事を待っていた。その姿にも好感が持てる。ヒューリックはガミガミといつも文句を言っていたし、父に紹介された男達は無駄に砂糖を吐いてくる。前世は男だったが、男嫌いになりそうだったなとアメリは思い出した。

 真っ直ぐこちらを見据えて返事を待つエディカは悪い人ではない。変人とは言われているが、誠実でもあるだろう。兄が話が合うだろうと言った意味もわかる気がした。



 「私は、人を好きになることがよくわかりません。それでも、良いのですか?」
 「はい、これは私からの一方的な好意ですから。」
 「そうですか。」
 「……少し、気分を変えてお互い好きなことを話しませんか?私、いろいろアメリ嬢と話したいことがたくさんあったんです!」
 「光栄ですね。では、何から話しましょうか?」
 「………アンチエイジングに興味ありませんか?」
 「ん?アンチエイジング?」
 「肌を綺麗にすることですよ。それに、アロマオイルも。」
 「んん??アロマオイル?」
 「そのうち男でもオシャレしたくなる時代がきますよ!練り香水なんてどうです?夏場に人気でそうじゃなりませんか?」


 ウキウキとエディカはさっきの重たい空気を吹き飛ばすように話し始める。突然の話で驚いて固まってしまったが、アメリの頭の中でぐるぐるとエディカに対する違和感が生まれてくる。

 前世でよく聞いた名前がポポンと出てくるとなると、流石のアメリは表情を変えざるおえなかった。まさかとは思ったが、エディカのニマニマとした表情を見るに、彼はどうやらアメリの正体を知っているようだ。


 「申し訳ない、実は不用心な王と父の立ち話を聞いてしまいまして。まぁ、私も見たことがある物を作り出していくのだから確信に変わっただけなんですけども。」
 「まさかエディカ様……貴方、前世持ちですの?」
 「えぇ、そうです。改めて自己紹介しましょうか?私は井ノ原 英子いのはら えいこ。日本に住んでいたアパレル店員です。」
 「日本!?まさかの同郷!?……あれ?女性の方?ですか?」
 「はい、前世は女でした。そういう貴女はどうなんです?」
 「五十嵐 要いがらし かなめだ。日本で機械工学を学んでいた。会社では一応現場監督くらいの立場…男です。」
 「やっぱり。女性にしては凄く違和感ありましたからねぇ。」


 そう言われてしまえば、アメリはなんだか少し恥ずかしくなってしまった。エディカは早々に私の秘密を知っていたのだ。エディカはクスクスと笑っている。実に美しい女性らしい笑みだった。……と、なるとこの結婚はアタリになるのだろうか?

 まぁ、気が楽なのは間違いない。秘密を知る前からエディカのことは元より嫌いではなかったし、変な男を両親に紹介されなくなると考えたら素直に受け入れようかな、とアメリは自己完結した。


 「……なんだか、気が抜けてしまった。」
 「ふふふ、気疲れでもしてました?素でいて大丈夫ですよ?私もそうしますし。不敬にあたります?」
 「いや、むしろリラックスできるからこのままで良い。」
 「じゃあ結婚しましょうよ。リラックス出来るでしょ?私も素の自分で生活したいんだよね。」
 「まぁ、うん。いいかもな。オカマ口調なだけで見た目悪くないしな。」
 「オカマとは失礼な!今はちゃんと男やってますよ。安心してください。」
 「それは安心してしていいのか?」


 
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