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乗り間違い
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【台本概要】
仕事の帰り、出発前の電車に飛び乗った立花。
ラッシュ時間のはずなのに、車内には乗客が四人しかおらず、その電車の行き先は予想外のもので……。
【登場人物】
・立花
・ゆり
・乗客(女)
・乗客(男)
・車内アナウンス
【台本】
SE:電車の発車音から発進音
立花「……っ、はぁはぁ。ま、間に合った」
ゆり「間に合って良かったね、お兄ちゃん」
立花「あ、あぁ。……あれ? 乗客ってこれだけ?」
ゆり「うんっ。今日はお兄ちゃんを入れて四人だけなんだって。良い事だよね」
立花「おかしいな。確かラッシュの時間帯だったと……ん? 俺、腕時計はめてなかったっけ……?」
ゆり「この先必要ない物は、消えちゃうんだよ」
立花「はは、そんな訳ないだろ。それに腕時計は、この先も必要だよ」
ゆり「仕事しなくてよくなれば、必要ないよ?」
立花「そりゃ、仕事しなくてよくなれば夢みたいだけどなぁ。そういえば、君は一人? お母さんは? もしかしてあの人かな?」
乗客(女)「失礼ね。私はまだ独身よ」
立花「あ、すみません……。じゃあ、お父さんと一緒なのか」
乗客(男)「私の娘は、もうとっくに成人している」
立花「そ、そうですか……」
ゆり「あのね、ゆりは一人だよ。パパとママは、まだこの電車に乗れないんだぁ」
立花「乗れない、って……?」
SE:アナウンス音
車内アナウンス「本日は死人列車「あの世線」にご乗車頂き、誠にありがとうございます」
立花「何だって……?」
車内アナウンス「本列車は、三途の川を経由致しまして閻魔様のお部屋を通過後、地獄の針山・火の海方面、天国行きでございます」
立花「ちょ、ちょっと……? 何言ってんだ、このアナウンス?」
車内アナウンス「終点天国には、約一時間で到着致します。なお、二両目に夢枕専用電話を設けておりますので、ご利用下さいませ。次の停車駅は「三途の川」「三途の川」でございます」
SE:アナウンス終了音
立花「な、何だったんだ今のアナウンス? テレビの撮影か? この電車は東京行きだろ?」
乗客(女)「あら、あなた……まさか知らずに乗ったの?」
乗客(男)「そりゃ気の毒に」
立花「どういう事だよ?」
乗客(女)「いるのねぇ、こういう馬鹿が。わざわざ駆け込み乗車して来たのに、ご愁傷様」
乗客(男)「まぁ乗っちまったらもう下りられん。諦めなさい」
立花「いや、だから説明を……」
ゆり「お姉ちゃんもおじさんも、お兄ちゃんをいじめちゃダメだよ」
乗客(女)「別にいじめてるわけじゃないわよ。運の悪い男だと思っただけ」
立花「ゆりちゃん、君も何か知ってるのか……?」
ゆり「お兄ちゃん、心配しないで。ゆりが一緒にいてあげる!」
SE:アナウンス音
車内アナウンス「間もなく「三途の川」に到着致します。停車時間は十分間となっております。ご乗車のお客様は一度下車の上、対岸の駅にて再度ご乗車下さいませ」
SE:アナウンス終了音
ゆり「さぁ、お兄ちゃん。行こっ」
立花「ま、待ってくれ……これ、もしかして渡っちゃいけないやつなんじゃ……」
ゆり「どぉしたの? 早く渡らないと、ちゃんと死ねないよ?」
乗客(女)「観念するのね。ここを渡りきらないと、貴方永遠に「この世」と「あの世」の境目を彷徨うことになるわよ」
乗客(男)「地縛霊になりたいなら、止めはせんが。まぁ、諦めるんだな」
立花「そんな簡単に諦められるか! 俺はただの仕事帰りだ! 死んじゃいないし、死ぬつもりもない!」
ゆり「もう、遅いんだよ。お兄ちゃん。大丈夫。ゆりがずっと一緒だよ」
乗客(女)「大丈夫、痛くなんてないわ」
乗客(男)「さぁ、逝こう」
立花「い、い、いやだぁぁぁぁぁっ!」
SE:電車の停止音と扉の開く音
END
仕事の帰り、出発前の電車に飛び乗った立花。
ラッシュ時間のはずなのに、車内には乗客が四人しかおらず、その電車の行き先は予想外のもので……。
【登場人物】
・立花
・ゆり
・乗客(女)
・乗客(男)
・車内アナウンス
【台本】
SE:電車の発車音から発進音
立花「……っ、はぁはぁ。ま、間に合った」
ゆり「間に合って良かったね、お兄ちゃん」
立花「あ、あぁ。……あれ? 乗客ってこれだけ?」
ゆり「うんっ。今日はお兄ちゃんを入れて四人だけなんだって。良い事だよね」
立花「おかしいな。確かラッシュの時間帯だったと……ん? 俺、腕時計はめてなかったっけ……?」
ゆり「この先必要ない物は、消えちゃうんだよ」
立花「はは、そんな訳ないだろ。それに腕時計は、この先も必要だよ」
ゆり「仕事しなくてよくなれば、必要ないよ?」
立花「そりゃ、仕事しなくてよくなれば夢みたいだけどなぁ。そういえば、君は一人? お母さんは? もしかしてあの人かな?」
乗客(女)「失礼ね。私はまだ独身よ」
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ゆり「あのね、ゆりは一人だよ。パパとママは、まだこの電車に乗れないんだぁ」
立花「乗れない、って……?」
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車内アナウンス「終点天国には、約一時間で到着致します。なお、二両目に夢枕専用電話を設けておりますので、ご利用下さいませ。次の停車駅は「三途の川」「三途の川」でございます」
SE:アナウンス終了音
立花「な、何だったんだ今のアナウンス? テレビの撮影か? この電車は東京行きだろ?」
乗客(女)「あら、あなた……まさか知らずに乗ったの?」
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立花「どういう事だよ?」
乗客(女)「いるのねぇ、こういう馬鹿が。わざわざ駆け込み乗車して来たのに、ご愁傷様」
乗客(男)「まぁ乗っちまったらもう下りられん。諦めなさい」
立花「いや、だから説明を……」
ゆり「お姉ちゃんもおじさんも、お兄ちゃんをいじめちゃダメだよ」
乗客(女)「別にいじめてるわけじゃないわよ。運の悪い男だと思っただけ」
立花「ゆりちゃん、君も何か知ってるのか……?」
ゆり「お兄ちゃん、心配しないで。ゆりが一緒にいてあげる!」
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車内アナウンス「間もなく「三途の川」に到着致します。停車時間は十分間となっております。ご乗車のお客様は一度下車の上、対岸の駅にて再度ご乗車下さいませ」
SE:アナウンス終了音
ゆり「さぁ、お兄ちゃん。行こっ」
立花「ま、待ってくれ……これ、もしかして渡っちゃいけないやつなんじゃ……」
ゆり「どぉしたの? 早く渡らないと、ちゃんと死ねないよ?」
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立花「そんな簡単に諦められるか! 俺はただの仕事帰りだ! 死んじゃいないし、死ぬつもりもない!」
ゆり「もう、遅いんだよ。お兄ちゃん。大丈夫。ゆりがずっと一緒だよ」
乗客(女)「大丈夫、痛くなんてないわ」
乗客(男)「さぁ、逝こう」
立花「い、い、いやだぁぁぁぁぁっ!」
SE:電車の停止音と扉の開く音
END
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